5日(土)、ジャパンラグビーリーグワン、リコーブラックラムズ東京(BR東京)は、花園近鉄ライナーズ(花園L)とのプレシーズンマッチを行った。
BR東京はプレシーズンマッチ3試合目、対する花園Lは初戦。BR東京は、今シーズンからタンバイ・マットソンHCが指揮する新体制となった。昨シーズン、3勝13敗と大きく負け越し入替戦で残留を決めたが選手たちのポテンシャルを出しきれないシーズンだった。新体制となり上位進出へのステップアップを図る。
一方、花園Lは入替戦でD2へ降格。チームとしてはDIへの復帰をかけ立て直しを図っている。サンゴリアスから加入した雲山弘貴や新加入のSOウィル・ハリソン(ワラターズ)、丸山凜太朗(トヨタヴェルブリッツ)、ティモ・スフィア(北海道バーバリアンズ)らが登録メンバーに入り、初のプレシーズンマッチを迎えた。
BR東京は、ニュージーランド遠征で経験を積んできたSO伊藤耕太郎が10番、FBアイザック・ルーカスが先発。中楠一期はリザーブからの出場となった。9月に行われた静岡ブルーレヴズ戦では10番中楠、15番伊藤という布陣だった。
試合は前半9分にLOハリソン・フォックスのトライでBR東京が先制すると、ライナーズも13分、スクラムでペナルティを獲得して敵陣に入り、CTBティモ・スフィアのトライで同点に。互いにトライを取り合い、前半は26-21とBR東京が5点リードして終えた。
後半はBR東京が花園Lをノートライで抑え込み試合終了。終わってみればBR東京が8トライを決めて52-21で快勝した。
試合後、今シーズンからブラックラムズを指揮するタンバイ・マットソンHC、SO中楠一期、SO/FB伊藤耕太郎とFL/LO山本秀の3選手に話を聞いた。
タンバイ・マットソンHC
まずはこうやって戻って来ることができて、すごく嬉しいです。家族も含め日本での生活は本当に素晴らしい思い出がたくさんあります。世田谷に住むというのはまた違う雰囲気ですけどね。日本の文化も好きですし楽しみにしています。
リコーは自分が日本で戦っていたときは関東のすごく有名なチームでしたし、ここに来て自分がリードできるというのはすごく嬉しいです。
――チームの課題や期待できる部分
ゲームをしっかり最後まで戦いきれるというところにフォーカスしています。最後までファイトしてしっかりとボーナスポイントを獲得できるチーム。もう1トライを増やしたり、負けるにしても勝ち点を取れるチームを目指しています。
そのためには一貫性がすごく大事ですし、あとはマインドセットですね。80分間戦うんだというところが基本です。
――昨年の成績は、選手のポテンシャルからすると期待すべきものではなかったと思います。
そうですね。ただ、選手のアティチュードにもそれは反映されていると思います。去年は自分たちのポテンシャルを出しきれなかったのはプレシーズンのアティチュードとしてなぜそうだったのかがわかります。
もっとハードワークしたい。もっと変わりたい、ラグビーをもっといいものにしたいという気持ちが今シーズンは見えています。
――どういった部分からチームを変えていった?
ディフェンスの部分はまず最初に取り組みました。今日もちょっとイージーにトライをさせてしまった部分がありましたが。そこは次の火曜日もフォーカスしないとという感じです。
あとはブレイクダウンです。トップチームを相手にブレイクダウンはとても大事になってきますのでそこを今フォーカスしています。
――いいSOが多いですが、どんな起用法を考えていますか。
今は色々と試しているところです。もちろんトレーニングや練習でのパフォーマンスを見て選んでいこうと思っていますが。チームにとっては近い将来、明るい材料になると思います。二人(伊藤耕太郎・中楠一期)とも今日はすごくいいプレーを見せてくれました。
こういう(雨の)厳しいコンディションの中でも前半、耕太郎はコールやいいプレー選択ができていましたし、一期もキックをうまく使って良かったかなと思います。
――若い二人をSOでミルキー(アイザック・ルーカス)はFBにという起用法をベースに考えていますか。場合によってはミルキーを10番にとか。
そうですね。(ミルキーを10番にというのは)オプションの一つとして考えていますし、彼ともそういう話をしています。来週は10番で、と考えてはいます。
――ニュージーランドとオーストラリアに若い選手たちが留学してきました。彼らはチームに戻ってきて新しいものを持って帰ってきましたか
やっぱり、留学とかどこか離れると人として変わりますね。そういう影響は必ずあると思っています。男としても成長します。
アンコンフォートゾーン(不慣れな場所や環境)でラグビーをやらないといけないですし、オーストラリアもニュージーランドもラグビーのスタイルがちょっと違うタイプなので、新しい視点からゲームを見ることができるので、そういう視点からラグビーを考えることができるようになるという点でプラスだったと思います。
Winning Rugbyはどこでも一緒
――TJペネナラとは会話していますか?
まだあんまり。今のところはいいオールブラックスでいてもらって、こっちに来たらものすごく大きな影響を与えてくれることは間違いないのでそこは楽しみにしています。
――現在はまだ模索されていると思いますが、チームが勝つにはこういう形がいいといったことはみえてきている?
「Winning Rugby(勝つラグビー)」は世界どこでも一緒だと思っています。強いモール、スクラムも安定させる、今は不安定ですがディフェンスを安定させなくちゃいけない。僕はジャパニーズスタイルラグビーというのは昔からすごく好きです。速くてすごくスキルが高くて。そういうスタイルのゲームをやりたいと思っています。
リコーブラックラムズ東京 SO伊藤耕太郎
――留学したことで得られたことは
国のラグビースタイルが自由で、みんながボールをもっている人に反応するというところに戸惑いはありましたけど、すごくラグビーが楽しかったですね。
――今年のリーグワンにかける思いは?
去年の最後だけ参加させてもらっただけなので一概に言えないですけど,今年はすごくコミュニケーションが取れていて、アタックのバリエーションもまだまだ増えていくと思いますし、アタックのところはいいラグビーができていると思っています。
ディフェンスのところはまだまだ改善していかなければいけないところもあると思いますけど。ニュージーランドで経験した、フィジカルの部分はもっとハードにやっていかないとなと思っています。
――その部分は留学での学びもあった
そうですね。やっている全員がもう州の代表だったり、スーパーラグビーに出場していたりするので誰がきてもコンタクトは激しかったですね。
――ミルキーがいて、15番、10番というポジションになっていますが、その環境でプラスになっていることは
僕は今、10番と15番を両方やっていますが、(中楠)一期さんが10番やったりということもあって、二人とも全然タイプが違うので、15番に入るときはしっかり10番とコミュニケーション取りながらやっていますし、10番に入ったらミルキーが15番に入ることが多いんですけど、ミルキーを前に出したりとかいろいろ考えながらプレーしています。
――10番と15番どのくらいの割合で今プレーしている?
ニュージーランドから帰ってきてから合宿中はずっと15番やってます。今週から10番をやってます。
――15番はやっていてどう?
楽しいですね。ラグビーの楽しさをニュージーランドで体現してきたので、15番でも楽しくできていますね。
――FBの経験は
大学1年のときはFB、高校1年のときもやっていました。ちょくちょくかじっていたという感じです。
――タンバイさんにHCが変わりましたが何か変化は
ダンバイさんはどちらかというと人間性の部分というか、基礎の部分からしっかり上げて行きている感じですね。すごくそういうところは徹底されているなという感じです。
――日本代表については気にしている?
気にしています。ニュージーランド(留学)していて少し遅れたかなと。今、試合に出させてもらっている間にしっかりアピールしたいですね。まずは試合に出るというところ、チームを勝たせるということ。
――以前、妹さん(伊藤ちひろ選手)の応援に来られているのを拝見しました。兄弟全員が代表を目指しているという状況はどう感じていますか。
僕自身にもすごくいい影響を弟も妹も与えてくれています。頑張らなくちゃなという気持ちにさせてくれますし、妹は三兄弟の中で一番の頑張り屋なのですごいなと思いますし、尊敬できる部分もあります。妹も僕達を尊敬しているという話を聞いて嬉しいですね。
――チームには中楠一期選手などSOにいい選手がいる環境でプラスアルファになる部分は?
一期さんだと僕に持っていない正確性とかを一緒に練習しながら、いいところは盗んでいます(笑)。僕の成長というところを考えるとSOがいるということはいいことだなと。
――今シーズンの目標は
全試合に出場すること、チームを勝たせること。それができたら日本代表にも選んでもらえると思っています。代表に選ばれるという自分の目指すキャリアをぶらさずにやっていきたいです。
リコーブラックラムズ東京 SO中楠一期
――ニュージーランド留学に行くことは前から決まっていた?
行くかもという話は聞いていたのですが、実際に決まったのは、行く10日前でした。
――海外にいってみて学んだことは、ラグビー的なことと、それ以外の部分でも
10番というポジションでありながら、言葉の通じない環境で試合をやるという難しさ、居心地の悪い中で自分がどういいプレーをしていくかという部分。慣れ親しんだコーチとかいない中で、かつクラブチームってそんなにたくさん練習があるわけじゃなくて、自由な時間が多くて、その中で自分のレベルアップのためにどうするか、何を食べたらいいか、とか全部自分たちで考えて取り組まなければならなかったので、アスリートとしてすごく大事なものをしっかり見つけたんじゃないかなと思います。
――ブラックラムズでも外国人選手多いけど英語は?
ラグビーだけだったら、チーム共通の用語があるのでそれを使えば簡単で、聞き取ることはできるんですけど、よりディテールの部分とか話すのはちょっと。
――試合の中ではどうしても話さないといけない場面もあったのでは
そうですね。そこはなんとか頑張って自分のわかる単語を並べて、身振り、手振りとかで、あとは気持ちっすね(笑)。
――自由時間が多かったといわれてましたが、実際一週間はどんなスケジュールだった?
月曜日と火曜日の午前中は必ずブランビーズの練習があって、火曜日と木曜日の午後がクラブの練習で土曜日に試合という感じでした。月曜日の午後と水曜日・木曜日の午前。日曜日はもう完全に予定がなかった感じです。
――かなり時間がありましたね
そうですね。留学したメンバーでこの時間をどう過ごすかは大事にしようみたいな話をしてましたね。車の1台しかないので、どこか遠くへ行動するときは一緒に動いていたんですけど、ジムとかは歩いていける距離にあったんで。あと個人的にBKは僕一人だったので、FWとかはあまり走りに行くことはなかったんですけど、僕は大事だったんで一人で走りにいったりとかしてましたね。
――今季からHCが代わったことで何か変化はありますか?
そうですね。去年よりすごく細かいところを見られていますね。スタッフからも僕達の能力が数値化されて出されたりとか、しっかり一人ひとりを見てもらっているんだなという感覚があります。そういうところは、自分の成長につながっているなと思っています。
――定量的なデータが出されているんですね。その中でご自身のウィークポイントはどこだと指摘されていますか?
コリジョンの部分ですね。どうしても小さいんで、大きい人が相手になあるとタックルの成功率が数値化されて明らかに足りていないというのは自分でもわかっています。データは六角形で出されていて、一つだけすごく凹んでいるんです。
この部分は僕個人だけじゃなくチームのポジションのトータルでも同様で、コリジョンのところは凹んでいます。なのでみんなが課題として捉えてやっています。個人的にはチームへの貢献度みたいなところは意識しています。若手だから難しいところもあるんですけど、自分のことだけで精一杯なところもありますし。ただもっと上げていけると感じるような数値だったんでそこは若手関係なく頑張っています。
タンバイHCが提案した「ドライバーズミーティング」とは…
――昨シーズン、ピッチで見ていると何か全員が同じディシジョンじゃない部分もあったのかなと感じました。今年はそういった部分、いかがですか。
確かに去年は自分だったらこうするのにみたいな部分はあったりしましたね。何が正解とかはないと思っています。「選んだものを正解」にしていくことが大事だと思うんですけど、そういう考えの違いとか、チーム全体として不一致はあったと思っています。今年は週に1回、ドライバーズミーティングというのをやっています。試合中の大事な局面でディシジョンする人たちが集まって、「◯分、このエリアのペナルティ。。。」みたいにシチュエーションを指定して、それに対してディスカッションしています。今季はプレシーズンの準備としてセイムページを見れるように。誰だったらこういうことを考えているみたいなことも理解しあえる時間になっています。
――ドライバーズミーティングは誰の発案ですか?
タンバイ(・マットソンHC)ですね。一緒に時間を作ってくれています。
――今年のブラックラムズはしっかりと全員が同じ画を見てアタックをすることにこだわっているということですね。
はい。しっかり自分たちのシェイプをやることに対してこだわっています。去年だと、プレシーズンからあんまり厳しく言ってなかったのもあるんですけど、今年はすごくコーチ含めスタッフからも厳しく言われています。追っかげていなかったり、前を見てなかったりしたらしっかりレビューされるようになって、そういう意味では今はいい準備ができていると感じています。
――今年はミルキー(アイザック・ルーカス)、(伊藤)耕太郎選手と、中楠さんと3人でのコンビネーションがチームのキーになってくるように見えます。ご自身としてはこの環境をどう感じていますか?プラスになっていますか?
僕と耕太郎とミルキー、それぞれカラーが違うと思うんですけど、本当に他の二人をリスペクトしています。二人から盗めるものは盗みたいと思ってますし、すごく3人でトークもいっぱいして、お互いいい影響になっていたらすごく嬉しいですし、試合にチョイスされるかどうかというのは、いい選手もたくさんいるので難しい部分もありますが、お互いいい影響を与え合えながら頑張っていけたらと思っています。
リコーブラックラムズ東京 FL山本秀
――留学について教えて下さい。これまで海外のクラブチームへの留学とかの経験はありますか。
各世代の代表だったり、海外でラグビーするということはあったんですけど、2ヶ月半という長い期間、海外のチームプレーするのは初めてでしたね。
――2ヶ月半って長いですね。
いやあ、長かったですね。最初の頃は良かったですけど、だんだん共同生活しているといろいろありますよね・・・(笑)。そこはみんなでお互い協力しあいながらできたのかなと思います。
――留学した先の練習では同じポジションをやっていましたか?
そうですね。6番とLOをやっていました。
――LOのポジションはチームから?
そうですね。僕的には6番が主で、LOもしっかり練習してプレーする幅を増やしていけたらなと思っています。
――大学時代は?
大学のときも、6番とLOでした。
――近大同期でもリーグワンで試合に出場している選手もいましたが、ご自身は今シーズンどういうふうにパフォーマンスを出していきたいですか?
去年はあまり出場機会がなかったんで、しっかりリーグワンで出場回数を増やして自分の強みはFLもできてどこでもできるというところだと思っているんで。出場のチャンスを増やしていきたいですね。
――チームにはファカタヴァ・アマト(日本代表)もいますね。走れるし。
アマトはやばいっすね。ただリーグワンは長いシーズンになるので、自分が怪我しない限り絶対どこかでチャンスが来ると思うんで、その時にしっかりチャンスをものにできるように常にいい準備をするというのも大事かなと思っています。
――今シーズンからタンバイ・マットソンHCに代わりましたが、ご自身への期待もそうですし、練習などでも何か変化はありましたか?
去年はHCがオーストラリアの方で今年からニュージーランドの方になったので、全然ラグビー自体が違いますね。結構細かいところもフォーカスしてやっているというのもありますし、あとは結構個人の意見だったり、個人のプレーを尊重してもらっているような感じもします。
――選手からスタッフへのコミュニケーションもとりやすい?
そうですね。自分はこういうプレーがしたいんだけど、どういうふうにしたらいいか?とかに対してアドバイスしてくれたり、「秀はもっとコミュニケーション取った方がいいよね」とか、「秀にはこういうプレーがもっと必要だよね」ということを教えてもらえます。そういう部分では結構違いますね。
去年はこういうプレーをしよう、こうしろああしろと言われていましたけど、今年もそういう部分はありながらも、もっとこうした方が秀のプレーはいけるんじゃないかみたいな話をしてもらえますね。
――実際にそういったアドバイスを受けて練習に取り組んでみてうまくいった部分はありますか?
ありますね。僕は結構エッジに残るポジションなんですけど、WTBを中に入れて、WTBが走ってきたところを自分がサポート入ったりとか、ブレイクダウンで(ファイトする)という感じだったんですけど、BKコーチから「秀はもっと中に入ってボールタッチの回数を増やして」と言われました。「何で秀がエッジに残っているのかというのを考えた時に、やっぱりBKとのミスマッチを突いて、FWとBKでフィジカルのところで勝負するためなんだから。もっと中に入ってボールタッチの回数を増やすんだ」と言われてからBKともしっかりコミュニケーション取って意識してボールタッチの回数も増えましたし、BKともコミュニケーション取れるようになりましたね。
――今シーズンは「ボールキャリーする山本選手」が多く見られるんですね。
はい。その機会を増やして、チームに貢献したいと思っています。