8月17日、静岡・エコパスタジアムでは「太陽生命チャレンジシリーズ2024」ラグビー女子日本代表ことサクラフィフティーン(世界ランキング11位)はアメリカ代表(同9位)とのテストマッチ第2戦に挑んだ。
第1戦は、北九州で戦いジャパンの粘り強いディフェンスが冴え渡り、後半終盤までリードするも試合終了間際にPGを許し17-17と同点におわった。それでも格上のアメリカ相手に1月からユニット毎のトレーニングに時間をかけてきたサクラフィフティーンの成長を大きく感じさせるものだった。
アメリカ代表・国歌斉唱
アメリカ代表は経験したことのない日本の暑さと来日してから4日間という短い準備期間だったこともありミスが多くジャパンは助けられた場面も多かった。第1戦から中6日となった第2戦。サクラフィフティーンは、準備してきたアメリカに対してどんなパフォーマンスを出せるのか注目された。
HIGHLIGHT
サクラフィフティーン試合登録メンバー
1 峰愛美(日体大/6)
2 公家明日香(アルカス熊谷/13)
4 佐藤優奈(東京山九フェニックス/15)
5 吉村乙華(アルカス熊谷/20)
6 川村雅未(RKUグレース/14)
7 長田いろは(アルカス熊谷/32)キャプテン
8 齊藤聖奈(パールズ/43)
9 津久井萌(横河武蔵野アルテミ・スターズ/33)
10 大塚朱紗(アルカス熊谷/26)
11 今釘小町(アルカス熊谷/24)
12 弘津悠(ナナイロプリズム福岡/9)
13 古田真菜(東京山九フェニックス/28)
14 松村美咲(東京山九フェニックス/6)
15 西村蒼空(パールズ/12)
16 小牧日菜多(東京山九フェニックス/6)
17 谷口琴美(横河武蔵野アルテミ・スターズ/16)
18 永田虹歩(パールズ/21)
19 向來桜子(日体大/14)
20 細川恭子(パールズ/11)
21 阿部恵(アルカス熊谷/24)
22 小林花奈子(横河武蔵野アルテミ・スターズ/13)
23 山本実(TKM/30)
第1戦からHO公家明日香がリザーブから先発に。NO8には最多キャップ数をもつ齊藤聖奈。CTB弘津悠が入った。リザーブには、怪我により長期離脱をしていた細川恭子が2年ぶりに復活。リザーブに入った。
ジャパンのキックオフで試合が開始。ジャパンがいきなりピンチを迎える。SO大塚朱紗のキックをSOマッケンジーがチャージ。ボールをターンオーバーすると、NO8フリーダがブレイク。後方からキャプテン長田いろはが追いついてタックル。何とかボールを止める。
大塚にプレッシャーがかかりキックをチャージされる
長田いろはが何とか追いつき止める
アメリカのフェイズに対して、この試合でもサクラフィフティーンの前に出るディフェンスで止めるもジャパンがペナルティ。自陣ゴール前のラインアウトとなってしまう。アメリカがラインアウトでミス。一度キックでエリアを戻すもピンチは続く。
4分、アメリカがジャパン陣内22m内側のラインアウトからモールを押し込みトライ。と思われたが、TMO判定で直前のプレーでスローフォワードがあったためトライがキャンセルされる。
前半7分モールからアメリカが先制トライ
直後のジャパンボールスクラム。アメリカがプレッシャーをかけてペナルティを獲得。7分、再びゴール前ラインアウトからモールを押し込みHOキャサリン・トレダーがトライ。ゴールは決まらず0-5とアメリカが先制。
ジャパンのキックオフ、WTB今釘小町がボールにタッチしジャパンがボールをキープ。アメリカがオフサイドのペナルティ。大塚がボールをタッチに蹴り出し、敵陣22m内側に入る。ゴール前ラインアウトからモールを押し込むジャパン。ゴールまで5mと押し込むがボールを出すことができずモールアンプレヤブル。
峰愛美
西村蒼空
ジャパンは第1戦の課題となったエリアマネジメントの部分でバックスリーが精度の高いキックでこの試合では敵陣へ蹴りこみ改善された。13分にはFB西村蒼空のキックで相手のノックオンを誘うと、SO大塚朱紗も14分、精度高いキックで敵陣ゴール前までキックでチームを前進させた。
15分、ジャパンは、敵陣ゴール前でFL川村雅未が相手ボールをもぎ取りターンオーバー。素早く左サイドへ展開。WTB今釘がインゴールへグラバーキック。CTB古田真菜がチェイスするが、ここはアメリカが何とかおいつきトライならず。
17分、ジャパンは敵陣22m付近の相手ボールスクラムでプレッシャーをかけてボールを奪うとBKに展開するも、大塚のパスが乱れ、アメリカにボールを奪われてしまう。アメリカがハーフウェイを超えたところで1 vs 1の局面でWTB松村がボールをジャッカルしアメリカの前進をとめた。
1v1の局面で松村がしっかりと止める
18分、ハーフウェイ付近の相手ボールラインアウトからボールを奪うと今釘小町が絶妙な位置へキック。敵陣ゴール前10m付近まで押し込む。ジャパンは前に出るディフェンスプレッシャーをかけ、アメリカのフォワードパスのミスを誘う。
今釘小町が裏スペースにショートパント
自らキャッチしてボールをキープ
20分、ジャパンは敵陣ゴール前5mのスクラムからCTBが弘津クラッシュ。FL吉村乙華がキャリーするもノットリリースでチャンスを逸したかと思われたが、直後のアメリカのラインアウトモールから吉村がボールに絡み再びボールを奪いチャンスを迎える。
ゴールに迫る弘津悠
ジャパンはフェイズを重ねるも中々ゲインできなかったが、アメリカがノットロールアウェイのペナルティ。ジャパンはキックでゴール前ラインアウトのチャンス。ラインアウトを確保。フェイズを重ねるも長田いろはがノックオン。
西村が裏にでて古田につながりゴールに迫る.
27分、敵陣22m手前のラインアウトジャパンは大きく右に展開。西村が裏に出て古田につないでゴール前まで前進。ボールをキープするサクラフィフティーン。FWがジリジリとフェイズを重ね、最後は齊藤聖奈がトライ。5-5と同点とする。
29分・NO8齊藤聖奈のトライで同点
直後のキックオフ、自陣からFL吉村乙華がビッグゲイン。味方のサポートをしっかり待って古田につなぐ。古田から大塚、さらに松村。松村から長田へのパスは繋がらなかったが相手にあたってボールがタッチに出て、敵陣22m付近でのマイボールスクラム。一度アメリカにボールを奪われるも齊藤聖奈がジャッカル。津久井がクイックスタート。
吉村乙華のブレイク
先程のトライにつながったアタックのようにゴール前でフェイズを重ねるジャパン。14フェイズ目大塚がキックパス。松村がキャッチしアタックするもレフリーボール。アメリカがオフサイドのペナルティ。ジャパンはショットを選択し大塚がPGをきめ8-5とリード。
直後のキックオフ、大塚のキックで敵陣に蹴り込みカウンターアタックに対してディフェンス。ジャパンのプレッシャーによりノックオンを誘い、ジャパンが敵陣でマイボールスクラム。大塚から内に返すパスで今釘がブレイクし一気に22m内側に入る。39分、敵陣22m付近でPKを獲得したジャパンは迷わずトライを狙ったが、ラインアウトが安定せずそのまま終了。8-5とジャパンが3点リードして前半を終えた。
ラインアウトのプレーを確認する吉村
後半はアメリカのキックオフでスタート。今釘がアウトサイドへ流れるキックで敵陣10mまでエリアを戻す。41分、ジャパンは相手モールに対するサイドエントリーで自陣10mまで攻め込まれる。ラインアウトからフェイズを重ねるアメリカに対して吉村乙華が前にでるディフェンスでボールを奪い、大塚が裏のスペースへ精度高くボールを蹴り込み敵陣22m手前まで前進。
43分、アメリカLOテッサ・ハーンにビッグゲインを許し、攻め込まれたジャパンは自陣22m付近でノットロールアウェイのペナルティ。アメリカはショットを選択。マッケンジーが難なく決めて8-8の同点となる。
同点に追いつかれたジャパンは46分、LO佐藤優奈がジャッカル。敵陣22mまで前進。ラインアウトからボールを細かく繋いで展開するも松村がノックオン。
51分、長田いろはが敵陣22m手前でジャッカル。ジャパンが敵陣深くに入ってチャンスを迎える。後半からピッチに入った谷口琴美がボールをスロー。ジャパンがキープしてモールを組む。両CTBが入って押し込むが早めに津久井が展開。
51分、長田いろはのジャッカル
大塚が裏スペースにグラバーキックを蹴り込むがアメリカがカバー。一度はボールを相手に渡すも、吉村が再び勇気ある整備ングでボールを奪い返す。攻め直すジャパンだったが、大塚から小林のパスが乱れたところ、アメリカFBサライア・イバラがボールを前方にキック。
大塚朱紗がグラバーキック
イバラと松村のボールチェイス。松村がボールを何とかキープするも、ラックの攻防でボールを失いアメリカボールに。それでもジャパンは津久井がボールに絡むペナルティを獲得。激しいボールの攻防もジャパンがしっかり足を動かしアメリカに対して互角のファイトを見せた。
ルーズボールを素早い反応でマイボールにする吉村乙華
大塚のキックはタッチを割らず、アメリカボールに、アメリカもマッケンジーがキックするも今釘がキャッチ。すかさず裏の空いているスペースに今釘が外回転をかけたキックを蹴り込み再び敵陣ゴール前10m。チャンスを迎えるもラインアウトが確保できず。
60分、ジャパンはNO8齊藤聖奈に代わり細川恭子が投入。スタジアムまで応援にかけつけたパールズの選手たちも「おかえり」のパネルを掲げて細川の復帰に声援を送った。
大怪我から復帰した細川に対してパールズの選手たちが声援を送る
2年ぶりにピッチにたった細川恭子
64分、ジャパンは自陣ゴール前の攻防で一度はアメリカのトライかと思われたがTMO判定で逆にジャパンのジャッカルが認められ最大のピンチを凌いだ。
ジャパンはリザーブ陣を投入。ハーフ団は阿部、山本にスイッチ。第1戦、出場機会のなかった山本が見せる。70分、ハーフウェイ付近のマイボールスクラムから山本が相手のギャップをついてブレイク。22m手前まで一気に前進。小林が左サイドへキックパスするもつながらず。互いに苦しい時間帯、勝負の時間帯に入る。
第1戦に続き素晴らしいコンビネーションを見せたハーフ団、大塚と津久井
山本実
向來桜子
永田虹歩
山本実のブレイク
76分、ジャパンは自陣でディフェンスの時間帯。前に出るディフェンスを見せるもノーボールタックルで痛恨のペナルティ。アメリカは第1戦同様に、終盤でPGを決め8-11と逆転に成功する。
小林がカントーナに対してタックル。エクスターでプレー一緒にプレーした。
残り3分、ジャパンは諦めず足を動かしプレッシャーをかける。アメリカがボールを手放しカウンターアタック。松村が再び敵陣までボールをキャリー。アメリカのペナルティでゴール前ラインアウトのラストチャンス。
裏に出かかる松村美咲
細川恭子がつなぐ
谷口から佐藤へスロー。ジャパンがモールを押し込むがオフサイドのペナルティ。万事休すかと思われたが、アメリカが直後のラインアウトからボールをノックオン。再びジャパンにチャンス。ハーフウェイ付近のラインアウトからボールを繋いでフェイズを重ねるとアメリカが再びオフサイド。
山本実
小牧日菜多
ジャパンがさらに敵陣ゴールに迫る。山本の絶妙なキックでゴール前5mに迫る。82分、サクラフィフティーンのラストチャンスを迎えるが、攻めきれずノーサイド。8-11でサクラフィフティーンはギリギリまで攻め込むも勝利できずに本シリーズを終了した。
ラストプレーは惜しくもオブストラクションでノーサイド
勝利に喜ぶアメリカ代表
長田いろはキャプテン
長田いろはキャプテン
この機会に感謝しています。日本の皆さんの前でラグビーができるというのは、サクラフィフティーンのラグビーを見せられるというのは本当に嬉しかったです。試合に関しては、自分たちの規律の乱れから相手に勢いを与えてしまって、そこからの失点もあったんですけど、1試合目と比べてテリトリーは前半もよくコントロールできていたと思うし、後半の場面で攻めあぐねた部分だったり、トライを取りきれないところがあったりしたので、そこを修正していきたいと思います。
レスリー・マッケンジーHC
レスリー・マッケンジーHC
選手たちにとっては、ホームでプレーし、スケールの大きなテストマッチを経験できるチャンスとなりました。彼女たちはそれを感じ、それについて話し、本当にパフォーマンスを出したいと思っていました。
もちろん、勝つことが理想ですが、今日はディフェンス面では期待通りの働きを見せてくれたと思いますし、適切なエリアでプレーしようという点では、先週に比べてプレー内容は改善されています。どこでプレーするか、どれだけポゼッションするかという点で、先週から改善されたと思えることがあります。
自分たちの力を出したいと思っていますが、同時にまた多くのものを手放してしまいました。シックス・ネーションズの強豪チームと対戦するWXVを前にして、このような試合、本当に難しい接戦、そして悔しい結果は私たちにとって本当にいい機会となりました。
相手は本当にフィジカルで、ものすごくダイレクトなプレーをしてこようとした。今回のことからしっかりと学ばなければなりません。この悔しいパフォーマンスを改善するチャンスをつかまなければなりません。
なぜなら、このあとも簡単な相手はいないからです。例えば、アメリカはティア1の出場権を獲得し、今年はイングランド、フランス、ニュージーランド、カナダ、アイルランドと対戦します。それが彼女たちが身を置いている世界です。
そして、私たちがいる大会は、今夜とほとんど同じ、いや、それ以上に強いものです。ひとつの決断、ふたつの決断、もしかしたら今夜も一つ二つの決断が試合の結果を左右するような試合になったと思います。試合のマネージメントも学ぶ必要があります。これは私たちにとって、まさにうってつけの状況です。私たちにとってはチャンスです。
この経験から言えることは、このチームはディフェンスに大きな自信を持ったということです。だから 日本の本当の武器を作り、大きな自信をつけるべきです。それを土台として次の11ヶ月につなげるためには、非常に重要で、私たちは2週続けて週末にアメリカに対して大きなディフェンスの向上をもたらしました。
多くの点で弱点は見えませんでした。スクラムの改善、ラインアウトの改善、すべてを土台にしてゲームを組み立てられれば、プレッシャーから随分解放されるでしょう。私たちは、皆さんが、我々が物事を誤ることを本当に心配していることも理解しています。アタックにおける大きなプレッシャーのひとつは、正しい決断を下して実行することです。
そしてそれは、特に日本選手たちを神経質にさせ、不安にさせ、試合中の一貫性のなさやリズムのなさを助長させるものです。でもまだ若い。バックラインはまだ若いですし、慎重にブレーキをかけて、個々の能力を発揮できるようにしています。私たちは、選手個々が持っている能力を発揮できるように、彼女たちのブレーキを意図的に外してきました。そうすることで、個々人が持っている能力の一部を生かすことができると感じるのです。その試みは批判できません。でも今は、判断の評価方法に関して、本当に熱心に、慎重に取り組んでいます。
だから、私がチームに言ってきたように、そしてこれをチームにもたらすことができるように、私たちが最速で学べば、成功に近づくことができるのです。私たちは学ばなければなりません。もっと早く学ばなければいけない。ですから、このようなプレッシャーのかかる試合では、卒業試験をするようなものです。