サクラフィフティーン帰国会見、レスリーHCは退任の意向も、8強入りへ「強豪国との試合増と国内リーグ再編」訴える | ラグビージャパン365

サクラフィフティーン帰国会見、レスリーHCは退任の意向も、8強入りへ「強豪国との試合増と国内リーグ再編」訴える

2025/09/10

文●大友信彦


サクラフィフティーンが10日、羽田着の英国航空機で帰国。空港で帰国総括会見を開いた。

左から有水チームディレクター、長田いろはキャプテン、レスリー・マッケンジーHC

左から有水チームディレクター、長田いろはキャプテン、レスリー・マッケンジーHC


ワールドカップでは2017年の11/12位決定戦以来となる1勝にも手放しで喜ぶことはしなかったが「日本の女子ラグビーとしては2017年大会から3大会連続で出場していて、これは財産。ただ、目標のベスト8進出をクリアするには、こうして経験を積み上げていくだけでなく、次のワールドカップまでの4年間の中で、トップ8以上の上位国とタフな試合をどれだけ対戦できるかがカギになる。個人的には、欧州の6か国対抗や南半球のパック4(NZ、オーストラリア、米国、カナダによる対抗戦)といったレベルのコンペティションに参加できないかということをターゲットにしていきたい」と話した。

有水剛志チームディレクター

有水剛志チームディレクター


冒頭、有水剛志チームディレクターは「トップ8という目標は達成できなかった。ここから、今回のワールドカップの結果をレビューするだけでなく、2019年からのレスリー体制7年間のレビュー、協会から私を含めた体制へのレビューをしたうえで、次のワールドカップへ臨む体制を整えたい」とコメント。

レスリー・マッケンジーHC「このレベルで能力を伸ばせる選手を増やして、代表の選手層を厚くしていくことが必要」

レスリー・マッケンジーHCは、ワールドカップに向けて掲げた8強入りという目標を「野心的な目標だった。プール分けが決まったことで、それはさらに困難なものになった」としたうえで「困難なターゲットを設定したことは、このプログラムを進める上で大きな糧になったことは間違いない。結果は目標を達成できず、残念であり悔しく思うが、選手たちが試合でみせたパフォーマンス、そこに向け準備で取り組んだ姿勢は素晴らしかった」と選手を称賛した。

レスリー・マッケンジーHC

レスリー・マッケンジーHC


自身の今後については「私の口から何かを答えられる段階ではない」としながらも「ワールドカップごとのサイクルという意味ではひとつの区切りになる」と、海外メディアで報じられている退任については明言を避けた。


レスリーHCは2019年に就任。同年11月の欧州遠征ではイタリアと引き分け、スコットランドから勝利。2022年には敵地でオーストラリアを、秩父宮でアイルランドを破るなどサクラフィフティーンに数々の勝利をもたらしたが、ワールドカップでは2022年NZ大会、今回と2大会続けて目標に掲げた8強入りはならなかった。

今後、8強を目指すために必要なことについて同HCは「海外のチームがいかにフルタイムで強化しているかを学ばないといけない。他の上位国と対戦する機会をいかに増やしていくかが大事。あわせて、国内の15人制の試合数を増やし、選手層を厚くする必要がある」と、国内フォーマットを見直す必要性を示唆。


7シーズンにわたった自身の任期内での選手たちの成長ぶりに関する質問には「日本女子のフィジカルな能力、サイズは明らかに向上した。特にコリジョンについては練習の質も時間も増えた。それに伴ってケガも少なくなった。マットルームで過ごした時間は、選手たちにとっては思い出したくもないくらいタフだったと思うが、それはイングランドでのパフォーマンスを支えていた。長期間のキャンプでハードワークを重ねた選手たちの努力と、その合宿を設定してくれたJRFUに感謝したい」としたうえで「今後は、このレベルで能力を伸ばしていける選手の数を増やして、代表の選手層を厚くしていくことが必要」と話した。

長田いろは「最後のスペイン戦は全員で掴んだ勝利として、未来のサクラフィフティーンにつなげたい」

7シーズンにわたった自身の任期内での選手たちの成長ぶりに関する質問には「日本女子のフィジカルな能力、サイズは明らかに向上した。特にコリジョンについては練習の質も時間も増えた。それに伴ってケガも少なくなった。マットルームで過ごした時間は、選手たちにとっては思い出したくもないくらいタフだったと思うが、それはイングランドでのパフォーマンスを支えていた。長期間のキャンプでハードワークを重ねた選手たちの努力と、その合宿を設定してくれたJRFUに感謝したい」としたうえで「今後は、このレベルで能力を伸ばしていける選手の数を増やして、代表の選手層を厚くしていくことが必要」と話した。

選手たちはJAPAN BASEで長期にわたり合宿を行った

選手たちはJAPAN BASEで長期にわたり合宿を行った

長田いろは主将は「準備の段階で自信をもって臨めた大会だったが、目標の8強入りを達成できず悔しい。ただ、格上の相手に対しても準備してきたプレーを出せたので、そこは成長した部分だと思う。最後のスペイン戦は、前回のワールドカップから3年間の成果、このチームにかかわってきた全員で掴んだ勝利として、未来のサクラフィフティーンに繋げたい」

長田いろはキャプテン

長田いろはキャプテン


「ワールドカップという大きな舞台で自分たちの高めてきたスタンダードを見せることができた。日本では考えられないくらいたくさんの人が見ている中でそれを出せたことは未来につながると思う。プレーしていて、日本のラグビーはチームとして着実にステップアップしていると感じた。キャプテンとしてプレッシャーを感じる部分もあったけれど、観客がたくさんいる中でワクワクして試合に臨めたことに感謝したい」とポジティブに総括した。

齊藤聖奈「日本も成長しているけど、海外の成長はすごい」

齊藤聖奈

齊藤聖奈


――3大会連続のワールドカップで今大会も全試合出場。お疲れさまでした。


「まず、現地までたくさん日本の応援がきてくれて、ホームのような雰囲気で戦えたことに感謝します。私が初めて出場した2017年はダブリンの大学の敷地内の会場で試合をしていた。8年たって、女子ラグビーの進化、成長をすごく感じた。収穫の多い大会でした。日本も成長しているけれど、海外の成長はすごい。2022年のNZ大会でも大きな看板が多くてすごいと感じたけど今回はそれ以上でした」

――今大会は出場時間も短かった。3月の膝の怪我の影響はやはり残っていたか。


「なかなかコンディションを上げ切れなくて、難しいところはありました。S&Cチームのサポートもあってプレーできる状態には戻せましたが、膝の痛みがあって、かがむのが難しい、低い姿勢が取れないという状態だった。その分、ンドカ・ジェニファのパフォーマンスが良くて、期待通りやってくれたのは良かった」


――大会前は「区切りをつけるとかは考えていない」と話していました。


「まずは、1か月くらいかな、休憩したいし、膝のリハビリももう少し続けないといけない。そのあとはパールズでも頑張ろうかなと思っています。これで(現役を)辞めるという考えはありません。でも、今は正直、4年後までは考えられない。難しいかもしれないけれど、やれるところまではやりたいです」

佐藤優奈「自分たちよりも大きな相手と当たり前にバチバチやれるようにならないといけない」

佐藤優奈

佐藤優奈


――ラインアウトリーダーとして3試合すべてフルタイム出場。ハードワークを続けました。

「今回のワールドカップは自信を持って臨んだので、目標の8強を達成できなくて悔しい想いが強いです。やはり初戦のアイルランド戦で、自信を持っていたモールで勝負しきれなかったのが悔しい。序盤のラインアウトはボールを取れていたけれど、相手のプレッシャーを受けてギリギリになったりして、強気で行けなくなってしまった。

相手がラインアウトをミスしたときに武器にしてきたラインアウトじゃなく、スクラムを選んでしまったことに悔いが残ります。誰が決めたというより、何となくそうなってしまった。W杯の大舞台に飲まれていたのかもしれない。アイルランド戦は終わってみたら、たくさんオプションを用意したのにほとんど使わないまま終わってしまった。

その反省で、NZ戦は準備したものを全部使おうと決めて、結果は負けたけれど選択の面でも悔いなくやり切れました。それもあって、スペイン戦では前半にうまくいかない時間があっても弱気にならず、前半に出た課題を後半に修正できました」


――次の目標はどう考えていますか。


「前回のワールドカップの時も、その時点でできることはやって臨んだつもりだったけれど、振り返ると薄かった。今回は『これをやれば戦える』というものを準備して行って、それを出せたときは十分に戦えた。その意味では自信になりました。そのうえで感じたのは国際試合、タフな試合の経験不足です。

全部がうまくいかないことなんて当たり前なのに、アイルランド戦ではそこで強気なチョイスを貫けずブレてしまった。体力的にも、プール戦を続けていくうちに体に疲労がたまってしまった。やはり、自分よりも大きい相手と当たり前にバチバチやれるようにならないといけない。まだ全然具体的ではないけれど、次のワールドカップまでの4年間のうちに、海外でチャレンジしたいなという気持ちが強くなっています」

川村雅末「ハードワークしてチームに貢献できた。自分できめていたことはやりきった」

川村雅未

川村雅未


――今大会では3試合とも素晴らしいパフォーマンスでした。


「たくさんの方にパフォーマンスが良かったと言っていただいているのですが、自分的にはそういう感覚はなくて、チームのためにプレーしただけ。特に良いパフォーマンスができたとは思っていません。ただ、セットプレーではチームとして準備したことを出せたし、FLとしての役目をハードワークしてチームに貢献できた。自分で決めていたことはやり切ったと思います」


――FLとしての経験も積んできたことが生きたのでしょうか。


「代表でFLをやるようになったのは前回ワールドカップのあと、2023年からですが、大学時代からチーム(グレース)ではFLをやっていたので、自分の強みを出せるとわかっていました。ただ、チームとしては8強を目指していたので、それを達成できなかったので満足はない。チームとしての経験不足があって、悩んでしまった。もう一度、初戦に戻れるなら戻ってやりたいという気持ちがあります」


――グレースからアルテミ・スターズに移籍して迎えたワールドカップでした。


「昨年、NZでプレーした時にそれまでの会社を辞めたんです。NZから帰ってきて、どこでプレーしようかと考えたときに、関東でやりたいな、FWで激しくやりあえるチームがいいなと思って、アルテミ・スターズを選びました。今は三幸学園のリゾート・スポーツ専門学校で週4日、7時間勤務しています。トレーナー志望の学生のマッサージ実習を受けたりしています(笑)」

弘津悠「悔しい思い、もっとできたんじゃ、もっとレベルアップしたい思いはあります」

弘津悠

弘津悠


――2023年から15人制に転向して迎えた初めてのワールドカップ。全試合に先発して、タフなプレーを続けました。


「ゲームプラン的にも自分のキャリーが多かった。セブンズから15人制に転向して、この3年かけて、狭い幅でも勝負することに慣れてきた気がします。最初の頃は『どこにスペースがあるんだろ?』と迷うときもあったのですが、谷口令子S&Cコーチに個人練習に付き合ってもらって、スペースがなくても足を掻き続けるとか、15人制に慣れてきた」


――お父さん(神戸スティーラーズの弘津英司GM)からのアドバイスは。


「アイルランド戦だけ応援に来てくれたんですが、そのアイルランド戦の前にメッセージをくれたんです。『ブロディ・レタリックは視野広く、フェーズフェーズでやるべきことを判断して、決めたらそれをやり切る。それの繰り返しだ』と。決めたらあとは迷わずそれをやり切る、ひとつひとつに集中して勝ちに行くのが大事だというアドバイスでした。今は12番なので、13番のときよりもそれが大事なんだと思います。80分間を通して大きいことを見るよりも、目の前のひとつひとつに集中しようとしたのが良かったんだと思う」


――初めてのワールドカップ、イングランドのワールドカップを戦った感想は。


「日本では見たことがないくらい女子ラグビーを多くの人がサポートしていて、その数の多さ、女子ラグビーが当たり前のものとして存在していることに感動しました。ありのままのカッコよさ。女子ラグビーをやっていて良かったなと思いました。日本ではよく『女子がなんでラグビーしてんの?』女の子は細くて可愛いのが良いんだよ、筋肉がゴツいのは可笑しい…みたいな風潮があって、中学高校の頃は奇異な目で見られてました。でもイングランドではだれもそんな目で見ない。ありのままが美しい、という空気感が心地よかったです」


――次の目標は何か決まっているのですか?


「この大会にすべてをかけてきたので、今はまだ何も考えていません。次の大会へ、という気持ちにもまだなっていない。ただ、悔しい思い、もっとできたんじゃ…もっとレベルアップしたい…という思いはあります。次に向けて、何かアクションを起こしたいとは考えています」

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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