全国女子選手権準決勝が17日、東西2会場で開催される。
昨年の15人制女子ワールドカップ・イングランド大会では、サクラフィフティーンがプール戦で敗退したものの最終戦でスペインを29-21で破り、日本女子31年ぶりとなるワールドカップのプール戦勝利をあげた。
このワールドカップは決勝で8万1885人という大観衆を集めるなど世界で注目度を増している女子ラグビー。日本も7人制ワールドシリーズ「HSBC SVNS」の今季第1戦・ドバイ大会で史上最高の3位に入るなど躍進を続けているだけに、今回の15人制全国女子選手権もこれまで以上に注目される大会になりそうだ。
今季は関東で、昨季まで全国選手権3連覇中だった東京山九フェニックスが3位に沈んで全国切符を逃し、関西でも昨季2位で全国大会出場を果たした「九州・ながと」が同じ九州地区のライバル日本経済大に敗れ、出場4チームのうち2チームが入れ替わった。必然的に新女王が誕生する大会になる。
では出場4チームの今季の足取りを振り返ってみる。
YOKOHAMA TKM
(今季の成績)
〇77-0 Pieces
〇65-3 GOD
〇26-14 アルカス熊谷
〇36-19 横河武蔵野アルテミ・スターズ
×5-19 日体大
〇19-14東京山九フェニックス

関東大会に優勝を飾ったのはYOKOHAMA TKM。昨季は関東2位で全国選手権に進み、準決勝で関西1位のパールズに24-34で敗れた。今季の関東大会では開幕から4連勝したあと日体大に5-19で敗れ連勝はストップしたが、最終節1月4日の小田原決戦でフェニックスに19-14で競り勝ち関東1位を決めた。
チームの中心は昨年のワールドカップにサクラxvで出場したSOの山本実。日体大からパールズ、イングランドのウースターを経てTKMに加入して2季目、チームにもなじみ、今季は司令塔に定着。関東大会6試合すべてで背番号10を背負い、すべてフルタイム出場でチームを動かした。さらに頼もしいのは元フランス代表のFBヨレイン・イェンゴの存在。太陽生命ウィメンズセブンズシリーズに合わせて昨年加入し、視野の広さと予測力、正確なパス、キック、コミュニケーション力で、従来は試合ごとに波のあったチームのパフォーマンスに一貫性を与えている。

山本実
FWではHOに日体大から加入した根塚智華(三重ヒート聖冴&スピアーズ洸雅の妹)、FLとの兼任でチャレンジ中の永岡萌主将が加わったことで選手起用のオプションが広がった。長い間ケガで苦しんでいたPR藤殊華も今季は全試合に3番で先発とほぼ完全復活。関東学院大~トヨタ自動車で活躍し、2011年ワールドカップに出場した北川俊澄アシスタントコーチが就任3年目を迎えたことに加え、元サントリーの青木佑輔さんも北川ACの依頼でスポット指導に加わりセットプレー、ラインアウトモールの強化が進んだ。経験値の高いLO松永美穂、No8永井彩乃らベテランを要所に配しているところも頼もしい。
サクラセブンズで世界3位の一員となった内海春菜子も関東大会最終節のフェニックス戦では今季初合流でフル出場してチームの勝利に貢献。17日の準決勝ではリザーブに入り、出番に備える。
日本経済大AMATERUS
(今季の成績)
〇79-5 追手門・春日井・寝屋川・兵庫合同
〇61-0 合同A
〇41-12 GYRETS
〇10-7 九州・ながと合同
×6-59 PEARLS
TKMに挑戦する日経大は、関東学院大~コカ・コーラで活躍した淵上宗志さんを初代監督に招いて2020年に創部。全国女子選手権には第8回(2021年度)に九産大・ながとブルーエンジェルスとの合同チームで初出場、単独チームとしては第10回(2023年度)に初出場し、今回は12月14日に行われた九州・ながと合同との一戦を10-7と競り勝ち、単独では2季ぶり2度目の出場を決めた。

町田美陽
チームの柱は昨年のW杯代表にも選ばれたPR町田美陽(みはる=3年)。172cm90㎏と日本女子では最大クラスの大型FWで、佐賀工1年のときからサクラXV候補合宿に招集された大器。サイズだけでなく、キックオフを自ら捕ってそのまま独走するなどバネも魅力だ。CTB垂門奈々(3年)は昨年4月のアメリカ戦でサクラXVデビュー即トライを記録した新星。

長谷部彩音
サクラセブンズでドバイ大会の翌週、ケープタウン大会に出場した長谷部彩音(3年)もWTB14で先発。そして楽しみなのはSO原田紗羽(3年)。昨年の太陽生命セブンズシリーズは負傷で全試合欠場したが、大学1年のシーズンは同シリーズでトップ選手とゲームメークで互角の勝負を繰り広げた司令塔がこの全国大会で復帰。秘密兵器として全国大会に臨む。
TKMと日経大の1戦は17日、リーグワンの横浜イーグルスvs埼玉ワイルドナイツの一戦(12時キックオフ)のあと、14時30分にキックオフされる。TKMのLO4で先発する谷山美典は、ワイルドナイツのNo8兼CTBで活躍する期待の若手・谷山隼大&セブンズで昨季ワールドシリーズトライオブザイヤーを受賞した谷山三菜子(日体大2年)の姉。プレーぶりが注目を集めそうだ。
準決勝もう1試合は神戸ユニバで行われる神戸スティーラーズvsブラックラムズ東京に続いて14時35分にキックオフ予定。第7回大会(2020年度)以来5季ぶりの優勝を目指す関西女王・PEARLSと、第8回大会以来4季ぶりの優勝を目指す横河武蔵野アルテミ・スターズが対戦する。
PEARLS
(今季の成績)
〇107-0 追手門・春日井・寝屋川・兵庫合同
〇48-7 GYRETS
〇22-13 九州・ながと合同
〇97-0 合同A
〇59-6 日本経済大
PEARLSは2020年度、コロナ禍で行われた第7回大会で関東大会優勝のモーニングベアーズ(アルカス熊谷と自衛隊体育学校の合同チーム)を41-0で破り初優勝を飾って以来5季ぶり2度目の優勝を目指す。今季の関西大会では九州・ながと合同には22-13とてこずったが、日経大にはCTBコカコ・ラキ(20)がハットトリックとなる3トライを奪うなど9トライをあげ59-6で圧勝。5戦全勝で優勝を決めた。

サクラフィフティーンでも活躍したPR北野和子
発表された準決勝の登録メンバーでは、今季からイングランドのレスター・タイガース・ウーマンに移籍した北野和子も右PR3番でメンバー入り。これを予想してか、ともにサクラXVで世界と戦ったアルテミ・スターズの加藤幸子は1番に入り、スクラムではトイメン対決が実現する。スクラム戦が勝負のポイントになりそうだ。
他にも日本女子で初めての50キャップに到達、通算最多トライもあげているNo8齊藤聖奈をはじめPR1に永田虹歩、FL6に細川恭子、FB西村蒼空と総勢5人のW杯戦士がメンバー入りしたほか、サクラセブンズの主力でもある大内田夏月が先発CTB、須田倫代がリザーブでメンバー入り。サクラセブンズ候補に名を連ねる庵奥里愛はWTBで先発入りした。昨季まで2年続けて全国女子決勝でフェニックスに敗れたパールズ。悲願の王座奪回に向け、まずは神戸でアルテミ・スターズを迎え撃つ。

大内田夏月
横河武蔵野アルテミ・スターズ
(今季の成績)
〇17-12 アルカス熊谷
〇45-12 GOD
〇38-10 Pieces
×19-36 YOKOHAMA TKM
〇33-29 東京山九フェニックス
〇19-10日体大

アルテミ・スターズを率いる山本和花キャプテン
2017年に創部した横河武蔵野アルテミ・スターズは2019年度の全国選手権で単独チームとして初出場すると、決勝でRKUグレースと7-7で引き分け初優勝。21年度は反対側の準決勝を戦うはずだった2チームにコロナ陽性者・接触者が出て2チームとも辞退したこともあり、準決勝で「日経大・九産大・ながと合同」に勝った時点で2度目の優勝が決まったが、以後の3シーズンは関東の上位2チームに入ることなく全国選手権には進めずじまい。
今回が4年ぶりの出場となる。関東大会では4戦目でTKMに19-36で敗れたが、後がなくなった翌フェニックス戦で終了直前のラストプレーで櫻井綾乃が逆転トライを決めサヨナラ勝ち。日体大との最終戦にも19-10で勝ち、3季ぶりの全国選手権出場をつかんだ。

西舞衣子
今季はW杯帰りのLO桜井綾乃、川村雅未、SH津久井萌、CTB小林花奈子が全試合に先発、PR加藤幸子とHO谷口琴美もそれぞれ1試合を欠場しただけでスクラム、ラインアウトのセットプレーで高い安定感を誇る。W杯3大会を経験しているSH津久井をはじめ経験豊富な選手が並ぶアルテミだが、今季は18歳のNo8辻伶奈、20歳のWTB南奈那と小川愛夢、21歳のCTB片岡詩ら若手も成長。太陽生命セブンズシリーズでもチームを支えたFB西舞衣子が安定したフィールディングとゴールキックをみせているのも頼もしい。4季ぶりの優勝に向け、自信を持って臨む。
大友信彦(おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |

大友信彦