太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2023第3戦・鈴鹿大会は6月17-18日の2日間、三重県鈴鹿市の三重交通Gスポーツの杜 鈴鹿サッカー・ラグビー場で行われた。
ながとが3連覇、ニア・トリバーは昨年樹立した年間トライ記録更新へ
大会には16チームが参加。決勝は今季3大会連続でながとブルーエンジェルスと日体大女子の顔合わせとなり、ながとが21-12で勝利。3大会連続優勝を飾った。

今季三連覇を果たした、ながとブルーエンジェルス
太陽生命シリーズの開幕からの3大会連続優勝は2017年のアルカス熊谷以来だが、そのときは第3戦保土ケ谷大会が大雨のため決勝が中止され、アルカスと日体大が両者優勝。単独チームの開幕からの3戦連続優勝は、総合優勝導入前の大会誕生1年目、アルカスが3大会完全優勝を飾った2014年以来だ。
シリーズチャンピオン争いは、当然ながらながとが独走。3戦を終えて60Pで首位に立ち、2位の日体大に6差をつけている。ながとは花園の最終戦で3位以上(14P以上)になった時点で総合優勝が決まる。
また、2023シリーズのチャレンジチームを除く下位5チームは、8月にエコパで行われる入替戦に出場することになる。太陽生命ウィメンズセブンズシリーズは来季、全4戦を12チームに再縮小することが決まっているだけに、残留争いは熾烈を極めそうだ。
なお、複数チームのシリーズポイントが同点となった場合、①シリーズ総得失点差が大きいチーム、②シリーズ総得失トライ差が大きいチーム、③抽選 の順番で順位を決定することになっている。
以下に、鈴鹿大会の個人スタッツ(トライ&得点ランキング)をお届けする。ますはトライランキングから。
トライランキング
1 ニア・トリバー 東京山九フェニックス 14T
2 ジャネット・オケロ 三重PEARLS 11T
3 堤ほの花 日体大 8T
3 ジラワン・チュトラクン ナナイロ 8T
5 プルーニー・キヴィット ながとブルーエンジェルス 7T
5 ケイトリン・シェイプ 東京山九フェニックス 7T

サクラフィフティーン・大塚朱紗のタックルもものともせずトライ
7 大塚朱紗 RKUグレース 6T
8 大竹風美子 東京山九フェニックス 5T
8 角川穂乃花 TKM 5T
10 新野由里菜 日体大 4T
10 大橋聖香 ながとブルーエンジェルス 4T
10 須田倫代 追手門学院VENUS 4T
10 谷山三菜子 チャレンジ 4T
10 勝島朱夏里 チャレンジ 4T
10 伊藤 睦 自衛隊PTS 4T

日本人選手では堤ほの花が最上位の3位。速さだけでなく、強さ、うまさが加わり、トライを量産。
ニア・トリバーが熊谷(15)、秩父宮(12)に続き3大会連続のトライ王に輝いた。3大会終了時点の今季総トライは41T。昨季樹立した年間最多トライ記録42Tまであと「1」と迫った。

得点ランキング
1 ニア・トリバー 東京山九フェニックス 70=14T
2 ジャネット・オケロ 三重PEARLS 57=11T1C
3 新野由里菜 日体大 44=4T12C
4 プルーニー・キヴィット ながとブルーエンジェルス 41=7T3C
5 堤ほの花 日体大 40=8T
5 ジラワン・チュトラクン ナナイロプリズム福岡 40=8T
5 谷山三菜子 チャレンジ 40=4T10C
8 ケイトリン・シェイプ 東京山九フェニックス 35=7T
9 大塚朱紗 グレース 32=6T1C
10 ナディーン・ルース ながとブルーエンジェルス 31=3T8C

ニアに続く2位のジャネット・オケロ。最終戦で逆転なるか。
爆走クイーン・ニアが過去2大会に続き、トライ王とともに得点王にも輝いた。
昨年は3大会連続でトライ王・得点王を獲得したが、4大会目の弘前では(チームは総合優勝のタイトルを手に入れたが)無冠に終わった。第4戦の花園大会は2年越しの年間4大会個人2冠完全制覇(計8冠!)へのチャレンジになる!

ドリームセブン
本誌恒例、今大会で印象的な活躍をみせた選手を「ドリームセブン」として紹介する。
辻崎由希乃 ながとブルーエンジェルス

準決勝のフェニックス戦ではニア・トリバーと再三にわたってマッチアップ。粘り強いタックルで爆走クイーンを止め続け、勝利に貢献。今季、2大会連続優勝中だったながとだが、過去2戦はフェニックスとは対戦なし。

「助かったなという思いもあったけど、去年は弘前大会で負けて終わっているし、早く戦って倒したかったので、今回勝てて良かったです。タッチラインを味方にして、相手がスピードに乗る前にタックルに入るようにしています」

鈴鹿大会では大会MVPに選ばれた
高橋夏未 日体大女子

エース松田凜日が欠場した中、3大会連続で決勝に進出した日体大女子にあって、司令塔兼突破役としてチームを牽引した。サクラXVの向來桜子とは新潟・中条RSからの同級生。男子15人制の英雄・稲垣啓太に続き、女子ラグビーでも新潟育ちが暴れ回る!
ニア・トリバー 東京山九フェニックス

大会を重ねるごとにマークが厳しくなっていく中、爆走クイーンはキックも交えるなど爆走だけでなく引き出しを増やしてトライ数を増やし続ける。今大会14トライを加え、太陽生命シリーズ通算トライは124に。今季の3大会合計トライは現在41。昨季樹立したシリーズ年間最多トライ記録「42」まであと僅か「1」。花園大会では新記録の報が聞かれそうだ!
大橋聖香 ナナイロプリズム福岡

新昇格チームながら2大会連続の4強入りを果たしたナナイロプリズム福岡を象徴する存在となったハードワーカー。フィジカルの強さを活かしたコンタクトと、倒れてもすぐに起き上がるワークレートの高さでチームに勢いをつけた。トライ数は熊谷大会から2→1→4と増加している。大会ごとの成長ぶりは全16チームNO1か?
大塚朱紗 RKUグレース

過去2大会は連続でプール4位、13位以下戦に回ったグレースを覚醒させたサクラXVの司令塔、セブンズをプレーするのは「大学2年だった2019年以来4年ぶりです」というブランクを感じさせない活躍。過去2年と今季の2戦はサクラXVの日程と重なり出場できなかったが、この鈴鹿大会は「私もグレースに貢献したかったので、日程が決まったときから出場を目指していました。15人制で身につけたスペースを見つけて走り込む感覚はセブンズでも生きました」

須田倫代 追手門学院VENUS

須田倫代
プール戦ではパールズに後半ロスタイムまでリード、ながと戦も残り1分半までリード、終了直前まで同点で戦った追手門。最終順位は11位に終わったが、大会を通じたインパクトは上位チームにも劣らなかった追手門にあって、サクラセブンズで世界と戦って磨き上げた得意のステップ&グースステップで鮮烈なトライを量産した。

谷山三菜子 チャレンジ

谷山三菜子
今季3大会目で初めて8強入りし、7位でフィニッシュしたチャレンジチームをSH兼SOでリード。ゴールキックも13本中10本を成功、77%という高い成功率を残した。チャレンジチームは2021年に2度優勝しているが、それは東京オリンピックに向けたサクラセブンズスコッドで臨んだ大会。高校生で固めたチャレンジチームで8強入りしたのは堤ほの花、清水麻有、ライチェル海遥らを擁した2015年以来8年ぶりだった。秩父宮では大内田葉月、今大会は杉本姫菜乃という2年生がキャプテンを務めたが、高校生年代の進化を証明した2日間の戦いをゲームリーダー&精神的な支柱としてまとめあげた。

![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |