太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2022の第3戦、鈴鹿大会が4-5日、三重交通Gスポーツの杜鈴鹿 サッカー・ラグビー場で行われる。
今季は第2戦の静岡大会とこの鈴鹿大会の2大会は、コア12チームのほかに招待4チームを加えた16チームが出場して行われる。太陽生命シリーズは来季、16チームにフォーマットを変更する案が出ており、そのフォーマットをシミュレートするためのテスト大会という意味合いもありそうだ。
プール戦組分け
まず組み分けを見てみる
プールA ①フェニックス ⑥アルカス ⑫チャレンジ 日本経済大(4)
プールB ②ながとBA ⑦自衛隊PTS ⑩グレース 九州産業大(6)
プールC ③パールズ ⑨追手門 ⑪四国大 神戸ファストジャイロ(5)
プールD ④横浜TKM ⑤日体大 ⑮ディアナ ナナイロプリズム福岡(2)
(丸数字は静岡大会順位。カッコ数字はリージョナル大会順位。左から第1バンド、第2バンド、第3バンド、招待チーム)
大会フォーマットの注目は、静岡大会に続き、決勝トーナメントに進めるのは各プール1位だけだ。通常の大会(4チーム×3組でプール戦→8チームでトーナメント)なら、初日のプール戦で2位はもちろん3位のチームにも決勝トーナメント進出の可能性があったが、このフォーマットでは各組から1チームしか決勝トーナメントに進めない。初日のプール戦はひとつも落とせない。大会の中で調整を図っていては遅いのだ。
同じフォーマットで行われた静岡大会では、DAY1に熊谷大会6位の追手門が、熊谷では初戦で棄権、順位なしに終わった自衛隊PTSに12-22で苦杯。熊谷大会優勝の横浜TKMは初戦で招待チームのブレイブルーヴに残り30秒まで12-10の大苦戦。あとわずかで勝敗も入れ替わるところだった。さらにTKMと日体大は19-19の引き分け。前回優勝のTKMは得失点差で辛くも4強トーナメントに進めた…という展開だったのだ。
そして鈴鹿大会では、リージョナルセブンズの成績に基づいて招待された8チームのうち、西日本寄りの4チームが招待チームとして参加する。リージョナル2位のナナイロプリズム福岡をはじめ、招待チームの活躍もみどころになりそうだ。
ではプール別に注目チーム・注目選手を見ていこう。
【POOL A】前回優勝の東京山九フェニックス、アルカスとの戦いは注目

東京山九フェニックス
前回優勝の東京山九フェニックスのプールには、静岡大会6位のアルカス、12位のチャレンジ、招待チームとしてリージョナル4位の日本経済大が入った。
前回優勝の東京山九フェニックスは、注目されたサクラ15オーストラリア遠征帰りの鈴木実沙紀&佐藤優奈、オーストラリア留学帰りのラベマイまこと&古田真菜はエントリーせず。とはいえ、前回静岡大会を勝ちきった布陣の豪華さは変わらない。静岡大会で16トライ80点をあげトライ王と得点王の2冠に輝いたトリバー・ニア、サクラセブンズのエース原わか花&仕掛け人・大黒田裕芽、大竹風美子とスピード&スキルに溢れる選手が並ぶ。黒川碧の正確なゴールキック、18歳ながらワールドシリーズカナダ大会で大活躍した水谷咲良のフィジカルの強さにも注目だ。

大谷芽生(アルカス熊谷)
そのフェニックスに挑むのがライバルのアルカス熊谷だ。昨年は4大会中3大会で、今季も3大会で2度目の同組。2017年第3戦の保土ケ谷大会以降まる5年も優勝からは遠ざかっているが、今大会には4-5月のサクラ15オーストラリア遠征帰りの黒木理帆、長田いろは、西村蒼空、今釘小町という4人がエントリー。サクラセブンズのカナダ大会帰りも小出深冬、大谷芽生と揃う。DAY1のフェニックス戦はスゴい勝負になりそうだ。

西夏穂(開志国際)
第3バンドのチャレンジチームは、静岡大会に続き高校生で固めた陣容。静岡大会には出場しなかった片岡詩(佐賀工)、西夏穂(開志国際)、原田紗羽(高崎RC)のプレーが楽しみ。
招待チームの日本経済大は淵上宗志監督のもと創部3年目で太陽生命デビュー。SDSも経験したサバナ・ボッドマン、かつて近鉄で活躍したフィリップ・ラヤシ氏を父に持つテマレシ・ラヤシ、日大の爆走王・水間夢翔を兄に持つ水間美夢音など、家族との共通点を探したくなる楽しみな選手も多い。注目チームのひとつだ。
【POOLB】ながとBAはサクラ15磯貝美加紗がメンバー登録

磯貝美加紗(ながとBA)
総合3連覇を目指しながら今季は2大会でまだ優勝なし、静岡大会では惜しくも2位に終わったながとBAは、サクラ15オーストラリア遠征帰りの磯貝美加紗が登録された。ライチェル&アテザのバティヴァカロロ姉妹の息のあったアタックは驚異。サクラセブンズ主将の平野優芽、サクラ候補に招集された辻崎由希乃の粘り強い攻守は注目だ。
ながとに挑むのは自衛隊体育学校PTSとRKUグレース。熊谷大会のポイントなしから静岡大会では7位に躍進した自衛隊PTSには頼もしい顔が復帰した。オーストラリア遠征から帰国したサクラ15のFB平山愛が満を持して登録されたのだ。熊谷では登録9人、静岡では10人で臨んだが、今大会は11人の陣容でさらなる上位を狙う。
そしてグレースは、我孫子高3年でサクラ15候補を経験しながら、流経大に入学した昨季は出場機会のなかった木田まこが待望の太陽生命デビューだ。熊谷&静岡でトライを量産した土井美咲とのダブルエース、仕掛け人の麻田瑞月、高橋優芽花、安井ノエルも含めた2年生クインテットが暴れ回るか?
招待チームの九産大は、リージョナル大会でトライを量産した①森瀬詩乃、④神谷桃子の走りに注目だ。
【POOL C】地元のパールズ悲願の優勝なるか

末結希(三重パールズ)
第1バンドは静岡大会3位の地元・パールズ。オーストラリア遠征から帰国したサクラ15のFB庵奥里愛がメンバー入り。やはりサクラ15常連のFW北野和子も今季3大会目で初の太陽生命シリーズ登場だ。保井沙予&ケニア代表オケロのダブルエースに加え、今大会ではリオ五輪フィジー代表ルイーサ・ティソロが初登場。
そして、男子のセブンズ日本代表最多キャップを誇り、今春現役を引退した坂井克行さんが正式にアシスタントコーチに就任して初の大会だ。過去3度の地元・鈴鹿大会では一度も優勝できていないパールズだが、悲願の本拠地優勝へ体勢は整ったか!
追う前回9位の追手門学院、登録メンバーは静岡大会と同じ12人だが、静岡では登録されながら負傷で出場しなかった室越香南主将の復帰なるかに注目だ。静岡大会ではDAY2のチーム全トライを決めたサクラセブンズ須田倫代の超絶ステップと猛加速に室越の視野の広いプレーとスピードが加われば鬼に金棒。スロースターターを克服できるか。
四国大は熊谷大会では8強入り。静岡では11位に後退したが、司令塔・金島瑠奈のゲームメークは光った。静岡ではトライなしに終わったエース尾崎夏鈴の復調に期待。

神戸ファストジャイロ・岡田恵梨香
招待チームの神戸ファストジャイロは、男子の啓光学園を常勝チームに育て上げ、女子では三重パールズの立ち上げに尽力した記虎敏和氏がスーパーバイザーに就任。岡田恵梨香主将、用貝涼乃の日本代表経験者に加え、リージョナルセブンズでトライを量産した井上那月の走りが楽しみだ。
【POOL D】TKM・日体大、そしてオリンピアンが並ぶナナイロ、激戦の予感

新原響(横浜TKM)
バンド1は熊谷で優勝しながら静岡では4位に後退した横浜TKM。今回は熊谷大会MVPのグレイス・ククタイが登録を外れたが、静岡大会を欠場した新原響の復帰は頼もしい。追手門から新加入したサクラ15候補の堀毛咲良はTKMでの太陽生命デビューとなる。こちらも楽しみ。
そのTKMと静岡大会で引き分けを演じた日体大が今大会も同組になった。太陽生命シリーズ通算トライ記録で歴代首位となった絶好調の堤ほの花に続き、昨年サクラセブンズ入りした吉野舞祐、スピードでは国内女子NO1の中平あみ、スピードスター2人が今回は登録された。

三枝千晃(ディアナ)
第3バンドの北海道ディアナは、静岡大会に続き登録10人での参戦。コロナ下の諸事情で少人数での戦いが続いているが、長縄歩実、安東菜桜ら助っ人プレイヤーとの練習、試合経験を重ねてきたことはプラス材料。静岡では出場しなかったサクラセブンズの三枝千晃の爆発に期待だ。

ナナイロプリズム福岡・中村知春
このプールに招待枠で参加するのが大会最注目チームともいえるナナイロプリズム福岡だ。サクラセブンズのカリスマ主将としてリオ五輪など多くの大会を率いた中村知春が初代GM兼選手として福岡・久留米を拠点に立ち上げたクラブには、リオ五輪代表の横尾千里、東京五輪代表の弘津悠と白子未祐と4人のオリンピアンが並び、東京五輪に向けたオリンピックスコッドだった小笹知美も北海道ディアナから移籍して加入。太陽生命シリーズには初陣ながら、豪華なメンバーで大会に臨む。大会初戦で挑戦する相手が熊谷大会優勝の横浜TKMというのも面白いところだ。

大会は3戦目となり、そろそろ総合優勝争いも絞られてくる段階。
2戦を終えての上位順位とポイントは1位=東京山九フェニックス(38)、2位=ながとBA、横浜TKM(34)、4位=三重パールズ(30)、5位=日体大(24)。東京山九フェニックスはここで連続優勝すれば初の総合優勝に大きく前進する。なお、各組1位しか上には行けないこと、初日の得失点差でDAY2の組み合わせが決まることを考えれば、DAY1のプール戦でしっかり得点をかさねておくことも肝要だ。時間が来たらすぐに蹴り出して終わらせるのではなく、貪欲に点を取りに行く姿勢も大事になるだろう。
過去2戦からさらに進化した、レベルの高い戦いを期待しよう!
![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |