RUGBYJAPAN365では、日本協会の公式記録をもとに、太陽生命ウィメンズセブンズ2022静岡大会の個人得点&トライランキングを集計した。集計結果は以下の通りだ。
トライランキング

ニア・トリバーが圧巻の16トライ(東京山九フェニックス)
1 ニア・トリバー(東京山九フェニックス) 16T
2 堤ほの花(日体大) 12T
3 須田倫代(追手門学院VENUS) 10T
4 保井沙予(三重パールズ) 6T
4 高木萌結(横河武蔵野アルテミスターズ) 6T
6 大竹風美子(東京山九フェニックス) 5T
6 ジャネット・オケロ(三重パールズ) 5T
6 小出深冬(アルカス熊谷) 5T
6 笹川 翼(横河武蔵野アルテミスターズ) 5T
6 草野可凜(アザレアセブン) 5T
11 クリスタル・メイズ(ながとブルーエンジェルス) 4T
11 プルーニー・キヴィット(ながとブルーエンジェルス) 4T
11 杉本七海(アルカス熊谷) 4T
11 黒田美織(自衛隊体育学校) 4T
11 土井美咲(RKUグレース) 4T
11 金島瑠奈(四国大) 4T
11 迫田夢乃(アザレアセブン) 4T
トライ王は熊谷大会に続き東京山九フェニックスのニア・トリバー。熊谷大会の6試合11Tを上回る5試合16T。ニアは北海道ディアナに在籍した2019年にも3大会でトライ王を獲得したが、1大会最多は東京大会の13Tだった。さらに、太陽生命シリーズの1大会最多トライ記録は2019年秋田大会でタイシャ・イケナシオ(ながと)が記録した14Tだったから、ニアはこの記録も更新。それも通常のフォーマットよりも少ない5試合での達成だ。
こうなると、興味はニアがあとどれだけ記録をつくれるのかだ。
2019年のニアは他に、4大会合計30Tという太陽生命シリーズ年間最多トライ記録を作った。ニアは現在2大会合計27T。あと3Tでタイ記録、4Tで新記録だ。

トライ王・得点王そしてMVPと3冠を獲得したニア・トリバー
そして、2019年のニアは4大会中3大会でトライ王を獲得。ただし1大会は3人同数で分け合った。3大会で単独トライ王を獲得すれば新記録。その先には4大会トライ王完全獲得という野望が待っているか? あるいは、静岡大会でニアを猛追した堤ほの花、須田倫代(ともにDAY2のトライ数はニアを上回った!)が立ちはだかるか?
得点ランキング

ニア・トリバー
1 ニア・トリバー(東京山九フェニックス) 80=16T
2 堤ほの花(日体大) 60=12T
3 須田倫代(追手門学院VENUS) 50=10T
4 プルーニー・キヴィット(ながとブルーエンジェルス) 48=4T14C
5 高木萌結(横河武蔵野アルテミスターズ) 36=6T3C
6 大内田夏月(日体大) 35=3T10C
7 金島瑠奈(四国大) 34=4T7C
8 松村美咲(チャレンジ) 31=3T8C
9 保井沙予(三重パールズ) 30=6T
10 平野優芽(ながとブルーエンジェルス) 29=3T7C
10 小出深冬(アルカス熊谷) 29=5T2C
12 三谷咲月(三重パールズ) 28=2T9C
12 杉本七海(アルカス熊谷) 28=4T4C
14 村田彩乃(追手門学院VENUS) 27=1T11C
得点ランキングもトップ3はトライランクの上位3人がそのまま占めた。
キッカー系の選手で最上位はながとキヴィットの48=4T14C。コンバージョン数に限るとキヴィットに次ぐのはフェニックス黒川碧の12C、追手門VENUS村田彩乃の11C、4位は日体大・大内田夏月&ゲストチームであるアザレアセブン横山里菜子の10Cだった。

黒川碧
特筆したいのは12C24得点でランク外ながら、アベレージでは14回蹴って12回成功、85.7%というみごとな数字を残した東京山九フェニックス黒川碧だ。初戦のアザレア戦、続くPTS戦はニアのトライのほとんどが左タッチライン際だったが、黒川は難しいコンバージョンを次々と成功させた。最多コンバージョンのながとBAキヴィットさえ19本蹴って14本成功の73.7%。ゴールポスト正面のコンバージョンを外す選手もいまだ多い中、リーグワンのトップキッカー(ダミアン・マッケンジー81.9%、松田力也81.0%)をも上回る黒川のキック力はみごとだ。
ドリームセブン
本誌恒例、大会で印象的な活躍をみせた選手をドリームセブンそしてネクストセブンとして選出した。今大会はリージョナルセブンズの成績と地域性に基づき4チームがゲストチームとして参加し、通常より多い16チームでの開催となり、より多くの才能がピッチをかけた見応えのある大会だった。
本誌が選んだドリームセブンは以下の顔ぶれだ!
ニア・トリバー(東京山九フェニックス)米国ロサンゼルス出身 米国代表-Tokyo Athletic United

ニア・トリバー
1対1でボールを持ったらもう止まらない。2日間5試合であげたトライは2014年に始まった太陽生命シリーズ8シーズンの1大会最多記録となる16。第1戦熊谷大会に続きトライ王と得点王の2冠を獲得した。米国ロサンゼルス出身。ラグビーを始めたのはハイスクールから。「姉がラグビーをしていて、世界各地に行けているのがいいなあと思ったの」。それ以前はバスケットボールをしていたが「ぶつかってファウルばかり取られていたの。私にはこっちが合ってた(笑)」
トレードマークのスカーフは「この髪のままラグビーすると大変なことになっちゃうから」。表彰式後に素顔ならぬ素頭を魅せてくれました!
黒川碧(東京山九フェニックス)石見智翠館-立正大/アルカス熊谷-Tokyo Athletic United

黒川碧
12C24得点は得点ランクではトップ10圏外だったが、コンバージョン成功率では驚異の85.7%を記録!相手チームがニアを回り込ませないように懸命にディフェンスしても、タッチライン際から背番号3が次々とキックを決めてしまい、徐々に戦意は奪われてしまう。石見智翠館~立正大/アルカス熊谷でも正確なキックを披露してきたが、今大会の決めっぷりは出色だった!
堤ほの花(日体大)佐賀工-日体大-(株)ディックソリューションエンジニアリング

堤ほの花
太陽生命シリーズ歴代最多トライゲッターの座を取り戻した熊谷大会に続き、日本最高のトライフィニッシャーぶりを遺憾なく発揮し、大会個人2位タイとなる12Tをスコアした。トライ王ニア・トリバーやパールズ保井沙予がパワーで、フェニックス原わか花がエンジン全開のフルスピードでトライを取るのに比べ、佐賀新幹線ほのか号は絶妙のスピードコントロールで相手DFを動かしながら触れさせずにトライを取ってしまう。「さすが!」と(心で)叫んだ人も多かっただろう。「日体大では、年齢は気にしないでみんなに迎えてもらっています(笑)」
須田倫代(追手門学院VENUS)京都成章-追手門学院大2年

須田倫代
熊谷大会では2日間で3Tと元気がなかったが、このエコパ大会では積極的にボールをもらい10T。横浜イーグルスのアマナキ・レレイ・マフィばりのグースステップ(その場ジャンプ!)からの猛加速、相手を左右に転がして自分はまっすぐ走る鮮烈トライを量産した。9-12位戦に回ったDAY2は、チャレンジチーム、グレースを相手にチームの全7トライをひとりで決める圧巻のパフォーマンス。
「追手門は人数が少ないけれど、男子のラグビー部と一緒にアタック&ディフェンスの練習に参加させてもらって、男子のスピード、アジリティを体感したことを出せたかな」
杉本姫菜乃(チャレンジチーム)ブレイブルーヴジュニア-國學院栃木1年

杉本姫菜乃
2006年11月生まれ、大会最年少の15歳6カ月ながらDAY1は2トライ。DAY2は次第にマークされ、トライこそなかったが再三のビッグゲイン、自分からパスをもらおうと走り込む積極的な動きで味方のアタックをアシストした。ラグビーを始めたのは4歳のとき。小学3年から、山梨の上野原から府中ジュニアラグビースクールへ通い「その頃から憧れていた松田凜日さんに近づきたい」。目指すはオリンピアン。「2028といわず、2024のパリに出たい。目指したいです」
横山里菜子 (アザレアセブン)東海大-横浜TKM

横山里奈子
大会のゲストチームかつホームスタジアムでのホストチームとして参加したアザレアセブンで、大会最年長の34歳ながら全5試合フル出場を果たした。ボールを持ってもむやみに仕掛けず、相手ディフェンスの出方を見極めながらアタックオプションをチョイスして仕掛けるプレー、味方チームメイトを落ち着かせる存在感。若い迫田夢乃や高木沙羅、中堅の草野可凜、ベテラン平野恵里子らの持ち味を生かす引き出しの多さはさすがの領域。太陽生命シリーズは横浜TKMで出場した2019年東京大会以来。健在ぶりを証明した。
伊藤睦 (自衛隊体育学校PTS)名取北高-自衛隊体育学校

伊藤睦
今大会最初のサプライズは、熊谷大会では初戦で負傷者が出てその後の試合を棄権、順位なしに終わった自衛隊体育学校PTSが初戦で熊谷6位の追手門学院VENUSを破った金星。勝利は試合開始の相手キックオフからハンドオフ一発&90mを走りきった伊藤主将の鮮烈な独走先制トライから始まった。大会最初のサプライズ&7位に食い込んだPTS躍進の象徴だった。24歳。宮城・名取北高出身。
ネクストセブン
ドリームセブン候補として今後も活躍が期待される「次点」メンバーのネクストセブンも選出。こちらもドリームセブンに入れたかったメンバーばかりだ。
水谷咲良 (東京山九フェニックス)四日市メリノール学院高-Tokyo Athletic United

水谷咲良
サクラセブンズのカナダ遠征から帰国し、所属チームに散らばって参加した各選手の中でも、さすが18歳の若さ、ブレイクダウン、カバーディフェンス、ラインアウトでの相手へのプレッシャー、体を張って大活躍!
大谷芽生 (アルカス熊谷)石見智翠館-立正大4年

大谷芽生
こちらもサクラセブンズのカナダ遠征帰り。鮮烈だったのはプール戦のパールズ戦、前半3分、トライ濃厚になった相手選手を3連続で止めた猛タックルと驚異のワークレート。サクラセブンズのプライドを最も感じさせた。
鈴木侑晏(三重パールズ)石見智翠館高-九鬼産業(株)

鈴木侑晏
身長155cmと小柄ながらフィジカルの強さとワークレートでポジションを越えた働き。スクラムを組み、ブレイクしたらSOの位置で軽快にパスをさばいたと思えばパワフルにボールキャリー。石見智翠館3年時、全国U18セブンズでMVPを獲得した才能がシニアでも開花した!
金島瑠奈(四国大)石見智翠館高-四国大2年

金島瑠奈
ボールを持ったときのオプションの多さが相手DFを幻惑する魅惑の司令塔。細身の体ながらコンタクトしても体はぶれず、スペースに走り込み、相手DFの届かないゾーンをスルリと抜けてしまうランニングスキルは素晴らしい!
高木萌結(横河武蔵野アルテミスターズ)横浜RS-法政二高(ラガールセブン、東京フェニックス、千葉ペガサス)-青学大4年

高木萌結
プール戦ではながとに敗れたが四国大とディアナにともに完封勝ちし、ゲストチーム最高位となる2位で5-8位トーナメントに進んだアルテミの司令塔兼フィニッシャー。2日間で6T3C、36得点はすべてチーム最多。
「前回出場した2019年は大学1年生で、周りの先輩についていくだけでしたが今回は自分から引っ張れたのが良かったかな」
土井美咲(RKUグレース)麗澤高校-順天堂大4年

土井美咲
6Tをあげた熊谷大会に続き、この静岡大会でもチーム最多の4Tをスコア。DAY2追手門との9/10位決定戦後半6分、自陣からのアタックでタッチに詰まったところからキック&チェイス、ドリブルを重ね、相手DFと競り合ってあげたトライは本誌選出大会ベストトライ!
鬼多見友里愛(国際武道大)神奈川・中央農高-国際武道大4年

ゲストチームとして太陽生命シリーズ初出場を果たした国際武道大を主将として率いた。チームは劣勢の戦いを強いられたが、隙あらば自陣からでもスペースへアタックする積極性で、最後のディアナ戦ではチームの初得点となるトライ、初コンバージョン、さらに初の2トライ目も記録。熊谷大会にはチャレンジチームで参加し「太陽生命シリーズのレベルの差をみんなに伝えてここに来ました。すごくいい経験になりました」
![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |