太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2021第4戦・鈴鹿大会が6月26-27日の2日間、三重交通Gスポーツの杜鈴鹿サッカー・ラグビー場で開催された。東京山九フェニックスが2015年以来の優勝。今シーズンのすべての日程を終了した。総合優勝はながとブルーエンジェルスで、2020年大会中止を挟んで、2019年と連覇を果たした。
今大会で強いインパクトを残した選手による、本誌恒例のドリームセブンを選出。さらにドリームセブン候補として今後も活躍が期待されるネクストセブンもあわせて発表。また公式記録をもとに集計した得点・トライランキングも紹介する。
2021/06/30
文●大友信彦

鹿尾みなみ
東京山九フェニックスを主将として2015年東京大会以来6年ぶりの優勝に導いた。
大会6試合で8トライ40得点をあげトライ王、得点王の2冠を獲得。
昨季までは筑波大の学生、同じ茨城県の流経大を本拠とするグレースに参加していたが、都内のクボタに就職したのを機にフェニックスに移籍。
「対戦している間は『やかましいチームだなあ』と思ってたんです(笑)。でも入ってみると、ただやかましいわけじゃなくチームを鼓舞する、ポジティブなコミュニケーションだったんだなと知りました。ゲームを楽しもうねという気持ちがあるのがフェニックスの魅力です」
ファタシンプキンズ・カタリナ ながとブルーエンジェルス ビクトリア大(NZ)-ながとスポーツ財団 31歳

ファタシンプキンズ・カタリナ
熊谷大会のMVPは今回の鈴鹿大会でも縦横無尽。ディフェンスで相手アタックにプレッシャーをかけてボールを奪い、スペースに仕掛け、長い手足でDFを幻惑してはラインブレイク。鮮やかなステップと加速でトライを量産。今大会5T5Cの35得点は全体2位。
コロリアフェイスハコ・ヘイブレム アルカス熊谷 テプケ高(NZ)-NPO法人アルカス熊谷 22歳

コロリアフェイスハコ・ヘイブレム
今大会での得点はカップ準々決勝TKM戦の2Tのみだが、貢献度はアタックよりむしろディフェンス。鋭い予測能力で相手のアタックコースに入り込みフィジカルの強さを活かしてジャッカル、ターンオーバーを狙い、PKを獲得すればクイックでアタック開始。重量感のあるプレーでBKの高速ランナーの持ち味を引き出した。
畑田桜子 チャレンジ 筑紫高3年(太宰府RS-福岡レディース)18歳

畑田桜子
オール高校生のチャレンジチームをキャプテンとして牽引。ジャイアントキリングを達成したカップ準々決勝のパールズ戦ではリードされるたびに反撃のトライを決めて逆転勝ちへの流れをセットアップした。SHからWTBまでどの位置に入っても走りきるオールラウンドプレーヤーだ。
高橋夏未 チャレンジ 国学院栃木高3年(中条RS)18歳

高橋夏未
今大会にセンセーションを巻き起こしたオール高校生のチャレンジチームで最多の4トライ。主にベンチスタートだったが、短い出場時間にトライを取りまくるスコアリングレートの高さは圧巻。ビッグキリングを達成したカップ準々決勝のパールズ戦ではみごとな逆転サヨナラトライ! スペースが見えたときには体が反応している動き出しの速さ、前傾姿勢で加速する鋭さ。将来が楽しみな素材だ。
庵奥里愛 パールズ 神戸甲北高-日体大-住友電装 24歳

庵奥里愛
地元開催のやりがいとプレッシャーを背負って戦ったパールズにあって、地元の応援団を最も沸かせた一人。最終戦となった5/6位決定戦の日体大戦ではチャンスへの鋭い反応と躊躇なくトップスピードで走り込む積極性で2トライ。スタンドから大きな拍手を浴びた。
木村あや 北海道ディアナ 札幌山の手-北海道文教大 21歳

木村あや
今シリーズ4戦目でようやく初参戦となった北海道バーバリアンズディアナで、ラグビーができることの喜びを最も発散していた選手のひとり。スペースがあれば突き進み、タックルを振り払って相手インゴールへ。全敗を免れたチャレンジトロフィーの四国大戦ロスタイムのトライは見事だった。太陽生命シリーズデビューは2015年横浜大会、高1だった!
鈴鹿大会ネクストセブン
本誌恒例「ドリームセブン」選出は楽しい作業である半面、辛い作業でもある、大会出場12チーム、144人から7人を選ぶ作業は毎回頭を悩ます。どうしてもトライ、得点の多い、目立つ選手や上位チームの選手をメインに選んでしまいがちだ。今大会は2日間の大会を取材できたので、ドリームセブンに選びきれなかったけれど、ピカリと輝いた選手たち7人を「ネクストセブン」として紹介する。
岡元涼葉 東京山九フェニックス(京都成章-東京学芸大1年)

岡元涼葉
東京山九フェニックス優勝に貢献した大学1年生クインテットの一人。エース鹿尾みなみ、大型ランナー芳山彩未ら外にいいランナーを擁するフェニックスにあって、真ん中のスペースに果敢に挑んでいくアタック。3トライというスタッツ以上に優勝に貢献した。
辻崎由希乃 ながとブルーエンジェルス- 北陸学院大-ヤマネ鉄工 26歳

辻崎由希乃
2日間5試合でピッチを退いたのはプール初戦の自衛隊体育学校PTS戦の後半ラストワンプレーのみ。ディフェンスでもアタックでも常に最前線に体を運び、相手にプレッシャーをかけ、ボール争奪に体を張り、スペースにボールを運ぶ。大学まではバスケットボール選手。ラグビー歴はまだ3年ながらブルーエンジェルズを象徴するプレーヤーだ。
佐藤優 北海道ディアナ 我孫子高-立正大/アルカス熊谷-メディカルシステムネットワーク 24歳

佐藤優
緊急事態宣言が繰り返し発令され、医療機関の逼迫状況もあって過去3大会は欠場、ようやく今季初登場を果たしたディアナは勝利こそ上げられなかったが、敗れた4試合のうち3試合は7点差以内の接戦。どの試合も接戦に持ち込んだ立役者は実はこの人。佐藤優は大会2日間5試合でゴールキックを10度蹴って9本成功。成功率.900は全チームのキッカーで最高だった!
中平あみ 日体大1年 (長野市少年少女RS-国学院栃木高)18歳

中平あみ
ダイナミックなストライド。陸上競技で鍛えた100m12秒台のスピード。外のスペースでボールをもらったら誰も追いつけない――高校シーンで繰り返された光景は太陽生命シリーズでも再現された。シニアデビューとなった鈴鹿大会、四国大戦で大学初トライをあげると、DAY2の追手門戦では3トライのハットトリック。大学入学から3ヶ月間ハムの強化に取り組み、体重も3キロ増。一回りサイズアップした体でCTBにも挑戦。
小林詩波 追手門学院VENUS (石見智翠館-追手門学院大4年)21歳

小林詩波
1年生の須田倫代が突破し、2年生の村田彩乃が広い視野でチャンスを広げる追手門VENUSのワイド&スピーディーな攻撃に、重量感ある縦突進で楔を打ち込む。「下級生が頑張っているし、私たち上級生も負けたくない、もっとやらなきゃと思ってます」という思いが、スケール大きなプレーにつながった。
濱辺梨帆 横浜TKM(福岡レディース/須恵高-福岡大-横浜TKM)27歳

濱辺梨帆
大会6トライはフェニックス鹿尾に続く2位タイ。SH、SO、CTBと自在のポジショニングからスペースを切り裂く。特にDAY2はながとから1T、パールズから2Tと強敵相手に鮮やかなトライを重ねた。2014年、太陽生命シリーズが産声をあげた最初の龍ケ崎大会では福岡大学3年でチャレンジチームに参加していた。
芳山彩未 東京山九フェニックス 浪花闘球娘-石見智翠館高-法大1年 18歳

芳山彩未
昨年11月にはサクラフィフティーン候補入りし、熊谷のチャレンジマッチに出場。とはいえそのときはシニア選手の中で遠慮しているように見えたものだが、大学生になりフェニックス入り、太陽生命シリーズでは第2戦静岡大会でデビュー。今大会では得点こそ日体大戦の1Tのみだったが、スケールの大きなリンクプレーで何度もチャンスを作った。
鈴鹿大会トライランキング

須田倫代
1 鹿尾みなみ 東京山九フェニックス 8T
2 須田倫代 追手門学院VENUS 6T
2 濱辺梨帆 横浜TKM 6T
4 ファタシンプキンズ・カタリナ ながとブルーエンジェルス 5T
4 三枝千晃 北海道ディアナ 5T
6 ジョージア・ダールズ 三重パールズ 4T
6 畑田桜子 チャレンジ 4T
6 高橋夏未 チャレンジ 4T
6 中平あみ 日体大 4T
6 山本久代 自衛隊体育学校PTS 4T
6 木村あや 北海道ディアナ 4T
鈴鹿大会得点ランキング

西村蒼空
1 鹿尾みなみ 東京山九フェニックス 40=8T
2 ファタシンプキンズ・カタリナ ながとブルーエンジェルス 35=5T5C
3 須田倫代 追手門学院VENUS 30=6T
3 濱辺梨帆 横浜TKM 30=6T
5 三枝千晃 北海道ディアナ 25=5T
6 村田彩乃 追手門学院VENUS 24=2T7C
7 阿部 恵 アルカス熊谷 22=2T6C
7 山本久代 自衛隊体育学校PTS 22=4T1C
9 西村蒼空 アルカス熊谷 21=3T3C
10 ジョージア・ダールズ 三重パールズ 20=4T
10 畑田桜子 チャレンジ 20=4T
10 高橋夏未 チャレンジ 20=4T
10 中平あみ 日体大 20=4T
10 木村あや 北海道ディアナ 20=4T
10 黒川 碧 アルカス熊谷 20=10C
![]() (おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |