5月27日(日)、快晴に恵まれた秩父宮ラグビー場で「セブンズフェスティバル2012」が開催された。
出場したのは、男子が12、女子が3チーム。男子の部に出場したのは、昨季のトップリーグ(15人制)上位から8チーム(サントリー、パナソニック、東芝、NEC、神戸製鋼、リコー、ヤマハ発動機、NTTコム)と、三地域協会推薦の3チーム(キヤノン、NTTドコモ、サニックス)、そして日本協会の東日本大震災復興支援特別招待枠で釜石シーウェイブス。
「セブンズでは何が起こるか分からない」という格言があるように、この日は予想外の結果が連続するスリリングなトーナメントとなった。
セブンズならではの波乱で幕開け!
午前10時からの開幕戦で、いきなりNTTドコモがパナソニックを19-15で破る波乱の幕開け。これを皮切りに、1回戦はサニックスがNECを、リコーが神戸製鋼を、NTTコムがサントリーを、そして釜石が東芝を撃破! 1回戦最後の第6試合でヤマハがキヤノンを破るまでは、昨年の順位で下位のチームが勝利する結果が続いた。
2回戦以降は、出場チームが12のため変則的な組み合わせで進行。2回戦では、サニックスがNTTドコモとの熱戦を22-19で、リコーは33-12でNTTコムを撃破。準決勝は、2回戦を不戦勝の2チームが有利かとおもいきや、サニックスが36-5で釜石を、リコーは40-0でヤマハを、ともに一方的に蹴散らした。サニックスはエースのカーン・ヘスケスが、リコーは元7人制日本代表の横山健一&伸一のツインズが絶好調でトライを量産した。
決勝-絶好調のリコーを引き離したのはヘスケスの突破だった!
そして迎えた決勝。
開始直後は一進一退の攻防が続いたが、やはりここでも流れを作ったのはヘスケスだ。2分、ヘスケスが自陣ゴール前に攻め込まれた場面からボールを動かし、ヘスケスがダイナミックなステップでリコーDFを次々とかわし、あれよあれよという間に90mを独走する鮮烈な先制トライ。
直後の4分にもヘスケスの突破からオフロードパスが通ってタファイ・イオアサがトライ。6分にはサニックスのジェイク・パリンガタイがペナルティの笛の後でボールを放り投げてシンビン処分を受け、1人足りない状況になりながら、ヘスケスが相手パスをインターセプト&強烈ハンドオフで相手ゴール前へ進み、再びサポートのイオアサに返して19-0。さらに10分、相手スクラムをターンオーバーしてヘスケスが独走トライ。サニックスが前半だけで26-0と一方的にリードした。
後半も先に点を取ったのはサニックスだった。1分、リコーのカウンターアタックを止めてボールを奪い、パリンガタイがトライ。2分、リコーも横山健一が初トライを返すが、サニックスは4分に濱里耕平がトライを返し36-7。5分に再び横山健一のトライで36-12としても、サニックスは7分に再び濱里耕平、さらにホーンが鳴ったあとの10分にも自陣から果敢に展開。最後は金川禎臣がポスト真下にトライ&コンバージョンを決め、スコアを50点の大台に乗せて有終を飾った。MVPには、決勝の前半にサニックスがあげた4トライすべてにからむ2トライ2アシストの爆発を見せるなど、大会4試合で7トライ、トライ王に輝いたヘスケスが選ばれた。
サニックス・藤井雄一郎監督
「去年のトップリーグの成績が良くなかったので、今年は春からすべての試合に全力で戦おうと、最初の九州セブンズから臨んできました。今日もベストのメンバーで、ゼッタイに優勝しようという気持ちで、2週間ほど前からセブンズの練習をしてきた。良いスタートを切れたので、この勢いをシーズンに向けてキープして、次のステップに向かっていきたい」
サニックス・濱里周作キャプテン
「サニックスは身体が小さいので、練習の時から『組織で戦おう』と決めて、どこよりもキツい練習を重ねてきました。特にコミュニケーションを高める練習で、上手く行かない部分があれば、何回も繰り返してきた。優勝できて本当に良かった。ありがとうございました」
なお、男子の1回戦敗者によるコンソレーション戦は、サントリーが決勝でNECを36-19で破り優勝した。
※トライランキング(男子)
1 カーン・ヘスケス (サニックス) 7
2 横山 伸一 (リコー) 6
成田 秀悦 (サントリー) 6
4 横山 健一 (リコー) 5
ネマニ・ナドロ (NEC) 5
女子の部は日体大が強敵相手に2連勝で優勝!
女子の部では、7人制日本代表の井上愛美、横山里菜子、アンジェラ・エルティングら豪華メンバーを並べた連合軍「RKU龍ヶ崎GLACE・セブン」に対して、「ほとんどが高校までは違う競技をしていた選手ばかり」という日体大女子が食い下がり、10-7で迎えた後半0分、日体大の平野恵理子がトライ。1トライを返された6分には主将の鈴木美緒がダメ押しのトライ。22-12で会心の勝利を飾った。
これで勢いに乗った日体大女子は、続く一昨年の覇者・名古屋レディース戦も安藤杏奈の2トライなどで先行。後半、名古屋は陸上競技出身のスプリンター飯田美妃主将のトライと黒田歩のコンバージョンで12-10と逆転するが、日体大はラストプレーで左サイドを平野がビッグゲイン、相手タックルに捕まったところで鮮やかなオフロードパスを通し、鈴木美緒主将がそのままインゴールへ。劇的な逆転サヨナラトライで17-12と名古屋を下し、初優勝を飾った。もう1試合は名古屋が12-10でRKU龍ヶ崎GLACE・セブンを破り2位となった。
日体大女子・中川直子コーチ
「3月に名古屋の大会(Japan Women‘s Sevens)ではあまり良い結果が出ず、その後は15人制の練習ばかりやってきたのですが、走り込んでボールをもらう練習や、私たちは身体が小さいので、FWの近くではなく外のスペースを攻める練習をしてきた。それがうまくできて、サポートも多くて、トライを取れたのが勝利に繋がったと思います」
日体大女子・鈴木美緒主将(女子MVP)
「名古屋の大会では両方のチームに勝てなくて、とても悔しい思いをしたけれど、今日はその思いをぶつけて、勝つことができて嬉しい。名古屋レディースの方々は身体が大きくて、この前の大会ではポイントを作ろうとしては当たり負けてしまった。今日は当たるよりも、ボールを離してサポートして、という組み立てがうまくできた」
大友信彦 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。プロフィールページへ |