2025年も大詰め!本誌恒例、日本ラグビー10大ニュースをセレクトしてみました。あわせて関連記事も紹介。
10位 全国高校大会、桐蔭学園が2度目の2連覇(2025年1月7日)
まずは新年の幕開けを飾った高校ラグビーから。ほぼ1年前の話題になってしまいますが、桐蔭学園が花園2連覇を達成しました。桐蔭学園は2019-2020年度にも2連覇を達成していて、6シーズンで2度の2連覇(6シーズンのうち4度優勝)という充実ぶり、過去6年間、桐蔭学園に在籍していた生徒はみな日本一を経験しているわけです。近年の冬の花園での連覇は、2009―2011年度に東福岡が3連覇を飾りましたが、真ん中は桐蔭学園との引き分け両者優勝でした。単独優勝による連覇は2001-2004年度の啓光学園以来20年ぶりだったのです!そして狙うは令和初の3連覇。この正月にはまたビッグニュースが聞けるのか?

9位 大学選手権で帝京大が2度目の4連覇(2025年1月13日)
こちらも連覇のトピックとなりましたが、大学選手権で帝京大が2度目となる4連覇を達成しました(前回は9連覇まで伸ばしました)。もはや帝京大が優勝しても誰もニュースだと思わないかもしれませんが、今回は対抗戦で早大に敗れ、対抗戦の連覇が3で&連勝が25で途切れたところからの反撃優勝。一昨季(2023年度)までの3連覇とはちょっと一味違う優勝でした。ひとつの負けを次の勝利につなげる復元力と学習能力、経験を次のステップアップに、次の学年に繋げていく文化伝達力はずば抜けています。今季(2025年度)は対抗戦3位に沈んでしまいましたが、それによってこの連覇継続の可否がますます注目されそう。新春2日、早大との準決勝は目が離せません!

8位 リーグワンが新カテゴリー制導入を発表(2025年5月13日)
8位にはちょっと微妙な、賛否両論渦巻く規定変更のニュースを入れました。リーグワンの登録カテゴリー変更です。リーグワンには以前のトップリーグや、他競技のような国籍による登録資格条件はなく、これまでは他国の代表経験がなく、日本代表の資格を得た選手(現在は日本協会登録から5年)は「カテゴリーA」として日本人選手と同じ条件で登録可能でした。しかし近年は日本で長くプレーする外国出身選手が増え続け、ピッチ上の15人に外国出身選手が10人以上も並ぶケースも増えてきました。リーグワンでは日本人選手の出場機会、リーグワンでのプレー機会を増やすことを目標に、これまでのカテゴリーAを、本人または両親、両祖父母の誰か1人が日本で出生している/義務教育9年間のうち6年間以上を日本で過ごしていた「A1」と、それ以外の「A2」に分け、2026-2027シーズンからA2は従来の「カテB」とほぼ同じとして扱うと発表したのです。
考え方の前提は理解しますが、これまで長く日本でプレーし、これまでのルールに基づいてライフプランを立てて、かつ日本ラグビーに多大なる貢献を果たしてきた選手たちの貢献度が軽視されてしまうことに強い違和感を覚えます。功労者としてA1扱いを受けるのは日本代表30キャップ以上。セブンズは含まれません。たとえば15人制で2019年と2023年のワールドカップ、7人制で2016年五輪など多くの大会に出場して日本代表を引っ張ってきたレメキロマノラヴァ選手は20キャップのため、資格は「A2」となり、海外から初来日した代表歴がないだけのビッグネームや、若い育成選手と実質同じ扱いになってしまいます。
新規定が目指す方向は理解しますが、これまでの功労者、既存のルールに基づいて権利を得てきた選手への扱いは分けて考えてほしい。対象になる選手はさほど多くはありません。日本ラグビー界として、功労者に報いるためにも(場合によっては法的トラブルを避ける意味でも)誠意のある、温情ある裁定を望みたいです。
7位 太陽生命シリーズに世界のスター集結!(2025年6月21日)
女子7人制ラグビーの国内サーキット「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」は2025年のシリーズから開催時期をワールドシリーズと切り離し、日本代表「サクラセブンズ」の選手たちも国内所属チームで大会に出場できるように日程を改革しました。すると、日本代表選手だけでなく世界のセブンズのトップ選手が集結。三重パールズにセブンズで五輪2大会優勝、15人制でも世界一を経験しているニュージーランドのレジェンド、サラ・ヒリニ、ブラジル代表でワールドシリーズ100トライを達成したトライゲッター、タリア・コスタ、東京山九フェニックスにカナダ代表で五輪2大会出場のチャリティ・ウィリアムス、横浜TKMにフランス代表のヨレイン・イェンゴ、ナナイロプリズム福岡にフィジー代表のレアピ・ウルニサウ……世界のトップ選手が続々と集まってきた。リーグワンにNZや南アフリカなどから世界のトップ選手が続々集結しているのと同じ現象が、国内の女子セブンズシーンでも始まっているのです。これが、サクラセブンズの躍進に繋がっているのは間違いない。太陽生命ウィメンズセブンズシリーズという大会が12年続いてきたことに改めて感謝です!

6位 ブレイブルーパスがリーグワン初の連覇飾る(2025年6月1日)
そしてリーグワンでは発足から4シーズンにして初めての連覇が達成されました。初の連覇を飾ったのは東芝ブレイブルーパス東京。NZ代表でワールドカップ2大会に出場するなど56キャップを持つリッチー・モウンガが司令塔として、日本代表でワールドカップ4大会に出場してきたカリスマ主将のリーチマイケル36歳が開幕戦からプレーオフ決勝まで全20試合すべてに先発、18試合に80分フル出場という鉄人ぶりでチームをリード。さらに22歳のワーナー・ディアンズはじめ原田衛、松永拓朗、佐々木剛ら若いリーダー陣も成長。バランスの取れた陣容で安定した戦いを続け、リーグワンになって初の連覇。それも、リーグ戦1位からプレーオフ優勝という「ポール・トゥ・フィニッシュ」を初めて達成したのです!リーグワンはこれから長く続き、いろいろな記録に彩られていくでしょうが、ブレイブルーパスが達成した初の快挙は永遠に刻まれることでしょう!
また、女子15人制の全国選手権では東京山九フェニックスが3連覇を達成。2025年の15人制の国内タイトルは、大学や高校も含め「連覇」がトレンドでした。2026年はどうなるでしょう?

5位 NECがグリーンロケッツを譲渡。JR東日本への譲渡が成立(12月11日)
そのリーグワンのちょっと切ないニュースが、8月のNECによるグリーンロケッツ東葛の「譲渡方針」発表でした。日本選手権優勝3度、マイクロソフトカップ初代王者など数々の栄光を築いてきた名門ですが、近年は低迷。成績だけでなく、箕内拓郎、土佐誠、田村優ら、将来を担うと期待された選手たちが次々と離脱するなど、チームのマネジメントも疑問視されてきましたが、ここにきてチームを持ち続ける意味を見出せなくなったという意思を表明したわけです。ラグビーの社会的な価値を高めようとしているリーグワンにとっては存在意義に関わる離脱表明。シーズンが始まる12月までに譲渡先が見つからなければ撤退、つまり45年かけて築いてきた歴史あるチームは解散するという危機になったのですが…それからわずか4カ月足らず、開幕2日前の12月11日、急転直下、チームの受け入れ先としてJR東日本への譲渡が発表されたのでした。
しかも、チームの受け入れ先として興味を示した企業は約10社もあったといいます。ラグビー界では1990年代からニコニコドー、伊勢丹、コカ・コーラ、サニックス…いくつものチームが強化を縮小し、あるいは廃部と言う悲しい結末を迎えてきました。しかし今回は、ラグビーの持つ社会的価値、社会課題解決力を高く評価した企業があり、また、ある企業が運営をやめたとしてもチームが存続する実例ができたことは、ラグビー界にとって大きな一歩だったと思います。おりしも、一度強化をやめたセコムが強化を再開し、リーグワンに加盟し、さらに自前のスタジアム建設の方針も発表しました。まだプロスポーツとして自立したとは言い難いラグビーリーグワンですが、その価値を認めてくれる仲間が増えていると実感できたのは嬉しいことでした。

4位 ラグビーワールドカップ2027組み合わせ決定&ネーションズチャンピオンシップが26年スタート(12月3日)
そしてラグビーの頂点たる日本代表にも大きな動きがありました。ビッグニュースのひとつはこれ、2027年のワールドカップ(男子15人制)の組み合わせ抽選会が12月3日に行われ、2年後の本大会のプール戦で対戦する相手がフランス、アメリカ、そしてサモアに決まりました。サモアとは2015年、2019年、2023年に続き4大会連続の同組。今回サモアは太平洋地区予選に相当するPNCで最下位、南米チリとのプレーオフにも敗れ、世界最終予選でようやく出場権を掴むという低迷ぶりでしたが、ワールドカップでは間違いなくフルメンバーで来る。しかも次回大会では、NZやオーストラリアなどで代表経験を持つビッグネームが、自身や父母のルーツをたどって代表に合流することも予想されていて、本大会ではとてつもなく厄介な相手になる可能性もあります。
そして、日本代表に関するもうひとつのトピックが、2026年に始まるワールドラグビーの新大会「ネーションズチャンピオンシップ」に日本の参加が決まったことです。欧州シックスネーションズの6か国と、南半球のSANZAAR4カ国+日本とフィジーの計12か国が南北対抗の形で7月と11月に対戦。これまで上位国と定期的に対戦する機会のなかった日本にとっては朗報ですが、選手のスケジュール、負荷は相当なものになりそう。選手のウェルフェア、国内リーグも含めた試合数の調整など新たな問題も出てきそうです。

3位 サクラXVがワールドカップで31年ぶりプール戦勝利(9月7日)
ここからTOP3は日本代表が残した大きな勝利です。まずはサクラフィフティーンこと女子15人制日本代表。ワールドカップ本大会のプール最終戦でスペイン代表を29-21で破りました。日本女子は2002年大会でオランダから、2017年大会で香港から勝利をあげていますが、それはプール戦終了後、上位進出が断たれたチーム同士による下位トーナメントでの勝利でした。今回も決勝トーナメント進出はなりませんでしたが、プール戦での勝利は、女子ラグビーが世界的にまだ黎明期だった1994年大会のスウェーデン戦以来31年ぶりの快挙でした。今回の勝利をつかんだ現役のサクラフィフティーン選手・スタッフだけでなく、競技環境が恵まれない中でも着実に強化を進めてきた女子ラグビーの先達のみなさんに改めて深く敬意を表します。とはいえ、今回の成績が今のサクラフィフティーンの実力とイコールとは思いません。次はもっと上へ行ける!

2位 日本代表が12年ぶりにウェールズを破る!(7月5日)
男子の日本代表も快挙をとげました。小倉ミクスタで行われたウェールズとのテストマッチに24-19で勝利。旧ティアワンからの勝利は2019年ワールドカップのプール最終戦でスコットランドを破って以来6年ぶり。そしてウェールズからの勝利は第1次エディーHC時代の2013年以来12年ぶり。前回はそのウェールズ戦勝利から2015年ワールドカップでの南アフリカ撃破へとステップアップしていっただけに、今回の勝利も日本代表大躍進への一歩となってほしいです!

1位 サクラセブンズが世界3位に躍進!(12月1日)
そして2025年日本ラグビー界トップニュースの第1位は間違いなくこれです。サクラセブンズこと女子セブンズ日本代表が、ワールドシリーズ第1戦のドバイ大会でみごと3位に入賞。銅メダルを獲得したのです!これはリオ五輪男子の4位を更新する、男子と女子、7人制と15人制を通じ、シニア代表における日本ラグビー史上最高成績です!実は、女子セブンズは今年の2月、前年度のバンクーバー大会で初の4強入り。それだけでもニュースだったのですが、そこから9カ月でさらに進歩しての3位です!とはいえこの快挙にもサクラセブンズは満足していません。目標は2028年ロサンゼルス五輪での金メダル獲得。それもけっして妄想ではなく到達可能な目標だと実感させてくれる、ワールドシリーズでの戦いぶりでした。2026年は、さらに順位を更新するニュースが聞かれるか?サクラセブンズのさらなる飛躍に期待です!

大友信彦(おおとものぶひこ) 1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。ラグビーマガジンなどにも執筆。 プロフィールページへ |



大友信彦