「12人が同じラグビー描ければ、目標が見えてくる」中村知春(女子7人制ラグビー日本代表) | ラグビージャパン365

「12人が同じラグビー描ければ、目標が見えてくる」中村知春(女子7人制ラグビー日本代表)

2020/09/08

文●編集部


9月8日(火)、7日(月)~11日(金)まで、埼玉・熊谷ラグビー場で女子セブンズ日本代表候補選手たちが合宿を行っている。その合宿に参加しているメンバー9人のうち、リオデジャネイロ五輪にも出場したベテランの中村知春選手(ナナイロ プリズム福岡/電通東日本)がオンラインで報道陣に対応した。

東京五輪は自分の中での一つの区切りに。

――今回の合宿に参加しての感想を


私自身コロナ明け、初めての参加になります。コンディション不良で、合宿が参加できる強度に治してから参加するということで初めてとなりました。チームには(合宿)2~3回目の選手もいます。2グループに分けて活動していますが、だんだんと参加人数も増えていて、徐々にラグビー仕様にフィットしている状況。ディフェンスをつけていないですが、明日以降どんどんラグビーらしい展開になるんじゃないかなと思います。久しぶりということで、体を戻しつつ、今までずっと(代表チームとして)活動できなかった分、ラグビーをみんなでできる、みんなでボールを回す楽しさを感じています。


――長い間、会っていなかった選手と会えた印象は?


全員と会えていないですが、若い選手、たとえば香川メレ(優愛ハヴィリ/アルカス熊谷&早稲田大1年)さんと一緒に走ってみてフィットネスが一気に増えたなという印象です。ウェイトトレーニングなどに取り組んでいた成果かなと感じました。

――東京五輪が1年延期になった率直な感想は?


徐々に徐々に、だったので、そう(延期になる)だろうなと思っていました。どうしようかな、きついなというのが半分と、もう1年、ポジティブにいい環境で、代表環境で活動できるという気持ち半分。ポジティブとネガティブが半々くらい入り交じるというのが率直な感想でした。


――男子選手の何人かが東京五輪を断念したりしますが、来年の東京五輪に向けて何が一番モチベーションになっているか?


男子の選手が徐々に離脱する中で、悲しいなと思いますが、わかる気持ちもあります。そこは複雑な感想ですが。来年に向けてのモチベーションは難しい状況の中ですが、私自身の(ラグビーをしている)目的が女子ラグビーの価値を上げることなので、やり切らずに終わるのであれば最後までやり切りたいし、4年前(のリオオリンピックでは)、男子が4位、女子が10位という結果だったので、男子に対するライバル心もあります。

――東京五輪は中村選手にとって集大成になるのでしょうか? 


当初の予定では、東京五輪までいいプレッシャーの中で活動してワールドシリーズ(WS)を最後に。今まで、すごいプレッシャーの中でやっていたので、勝ち上がったWSを、単純に7割ラグビーを楽しみながらやってみたいという思いがありました。WSに今までお世話になった両親などを呼んで、最後を見てもらいたいと勝手に描いていました。そこ(WS)もなくなってしまったので、東京五輪が自分の中で、ひとつの区切りになると考えています。

――男子7人制日本代表を引退した桑水流裕策選手(ナナイロプリズム福岡ヘッドコーチも兼任)から何かメッセージありましたか? 


桑水流選手が代表引退を決意した時にお電話をいただいて、直接、話をうかがいました。「頑張ってください 応援しています」と声をかけていただきました。また「代表は引退したが、ナナイロのHCの時間が増える。2人でよりよいチームを作っていきましょう」と話しました。桑水流選手とは(お互いに)リオ五輪からいろんなことを経て同じような苦労をした先輩、背中を追いかけたい選手のひとりでした。

ナナイロ プリズム福岡は、9月20日に福岡で日本経済大学さんなど3チーム対抗を考えています。


細かいこと、向き合わないといけないことをしっかりと見つめ、さらに強みを磨く

――リオ五輪を経験している選手として、前回大会には金メダル獲得という目標達成できなかったのは何が足りなかったのか? 前回を踏まえて東京五輪まで何が必要か?


前回、(目標を)金メダルを掲げて届かなかった理由は、これは単純に個人個人のレベルが、オリンピックのメダルを取るアスリートとして足らなかったと思っています。個々で足らなかったものをチームで補うという戦法を最終的には取っていたのですが、弱いところにきちんと向き合わなかったのが大きな理由かなと思います。

そこから自分が世界レベルのアスリートになるということを一生懸命やってきましたが、次のオリンピックに向けてしっかり向き合わないといけないところは、大きな軸だと思います。

前回のオリンピックより、ひとりひとりのポテンシャルは世界で戦えるように、大きくなってきたと思います。あと1年、しっかりと(練習を)やりこんで、ひとりひとりがより世界レベルに達していけば、(金メダルというのは)見えてくる目標かなと思います

(前回大会は)世界一のフィットネスを掲げてやっていた。マラソンではないので、走るだけじゃ勝てないのが7人制のラグビーだと思います。そこに対して細かい戦略なのか、ボールをつなぎ続けてアタックの時間を増やすとか日本のキャラクターみたいなものを明確に出場する12人が(同じラグビーを)描けるようになれば、目標が見えてくると思います。


――若い選手も増えてきました。リオ五輪を経験しているベテラン選手として、若い選手が多い現状をどう捉えていますか?


一年、準備する時間が増えたのは、(日本代表は)10位、11位のレベルなので、若い選手が多いのは、1試合でグンとの伸びる選手もいるので100%ポジティブです。

個人としてもようやく、そういう風に考えるようになりました。今まで突っ走っていかないといけなかったので細かいことを見えないようにしていました。向き合わないといけない問題を『時間がないからできない』とあきらめていた問題をすくい上げて、ラグビーもチームとしての問題も向き合う時間が増えました。私自身もポジティブに捉えるようになって、切り替えることができるようになりました。

――具体的に、時間ができたことで向き合えるようになったこととは?


すごいいろいろあるのですが、リオ五輪の前まで、リーダーとしてチーム力を高めようというアプローチしていました。リオ五輪以降は個人個人がアスリートになるということで、チームへのアプローチを一歩引いた目で見ていました。

お互いのつらさや痛みをわかってあげるような『人間力』と『いいアスリート』という部分をバランスよく育てていく。細かく話しているうちに、価値観の違いをどう埋めるか、どう(お互いに)敬意をもって接するかなど細かいところまでアプローチできなかった。

(今では)アプローチできるようになりました。選手ミーディングでは細かいところ、(個々の選手が)どういう風な考えをもっているか、こういうことが好きなんだな、将来、こうなりたいんだ、など、お互いを知る時間になりました。

普段しない話をしていたという面では、5月は、30分から1時間くらい週5でチームミーティングをしていました。選手だけでなくスタッフも入るとこもありましたが、戦略、栄養、睡眠、そしてフリートークみたいな時間も作って、全員でやるときも、3チームくらいのときでやるときもあった。結果が出るかどうかわからないが、いいことだなと思います。

――中村選手の個人としての強みと、東京五輪に向けて女子セブンズ日本代表はチームとしてどういうラグビーを目指しているか?



ちょうどスタッフと世界とどう戦うか、個々の強みを振り返っていました。(自分としては)運動量と考えていましたが、スタッフからはハーフブレイクを作ったり、攻撃の起点となったりするプレー、反応の速さも世界の中でいいところだと(評価してもらった)。世界トップのラグビー選手になるために、まあまあ高いレベルにいる。(今後も)その部分を伸ばしていきたいと思っています。

チームとしては、今まで世界と戦えていた試合は、『ボールを止めない』『ボールをつなぐ』(ところができていた)。足が速くない分、相手のディフェンスを置き去りにしていく。次の展開を2~3人のミニチームで、阿吽の呼吸で瞬時に話して、ボールを止めずにつなぎ続ける。それは(自分たちの目指している)”世界をワクワクするラグビー”というのに等しいと思います。それに伴うフィットネス、コミュニケーション、パススキルなど細かく突き詰めて、来年(の東京五輪に)に向けてやっていかないといけない。

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