サクラフィフティーン、先制するもアメリカの勢いを止めることができず連敗。プール戦突破の可能性遠のく | ラグビージャパン365

サクラフィフティーン、先制するもアメリカの勢いを止めることができず連敗。プール戦突破の可能性遠のく

2022/10/16

文●大友信彦


10月15日、ラグビーワールドカップ2021(playing2022)、サクラフィフティーン(XV)こと女子日本代表の第2戦、アメリカ戦が行われた。

世界ランキングは日本の13位に対し相手のアメリカは6位、1991年の第1回ワールドカップで優勝を飾っている女子ラグビーをリードしてきた強国だが、初戦ではイタリアに10-22で敗れていた。

現地でもサクラフィフティーンを応援

現地でもサクラフィフティーンを応援



試合会場はNZ北島北部、ノースランドの中心都市ファンガレイにあるノースランド・イベントセンター。サクラXVにとっては初戦のカナダ戦に続き2戦目で「1試合経験して、芝の状態もスタンドの雰囲気も分かっている」(南早紀主将)。加えて、初戦からのインターバルはともに中5日ながら日本は移動なし(アメリカはオークランドから移動)という地の利を得て臨む試合だった。

SO大塚朱紗のラインブレイク

SO大塚朱紗のラインブレイク



FB松田凛日がブレイクしてキック

FB松田凛日がブレイクしてキック

先制したのは日本。日本のキックオフはノット10mとなるが、直後、アメリカのスクラムからのアタックでアメリカのエースCTBケルターにWTB名倉ひなのが猛タックル。さらにDFを続けてノックオンを誘うと、その自陣スクラムからSO大塚朱紗が巧みなステップでラインブレイク。さらにFB松田凜日につなぎ、松田はゴール前に巧みなキック。相手ゴール前で競り合い、戻った相手WTBフーリーを名倉がタッチに押し出す。

前半4分、SH阿部恵の先制トライ

前半4分、SH阿部恵の先制トライ



いきなりゴール前ラインアウトを得たサクラXVは、このチャンスを活かした。FL長田いろはがキャッチすると、モールを警戒したアメリカの裏をかく「前ピールオフ」でNO8齊藤聖奈かショートサイドに走り込み、外に開いたSH阿部恵にパス。両チームで最も小柄な身長147cmの阿部が右隅に飛び込む。日本が待望の先制点をあげた。テストマッチ初先発となったHO谷口琴美の正確なスローイングも光った。

阿部のトライに集まって祝福する選手たち

阿部のトライに集まって祝福する選手たち


次のアメリカのキックオフが直接デッドボールラインまで転がり、日本はセンタースクラムから再び敵陣侵入に成功し、11分にはPKから再び右ゴール前へ。

12分にはスクラムからNO8齊藤が右へ持ち出し、⑧⑨でSH阿部へパスするが、相手FL6ジョンソンがボールに手を出してカット。外には⑭名倉が余っていただけにトライ濃厚な場面だった。しかし、TMOを経てデリバレートノックオンの判定が下り、ジョンソンにイエローカードが出されるが、PT(ペナルティートライ)の判定はなし。

日本はここでラインアウトを選択したが、痛恨のノットストレート。絶好のチャンスを逃してしまう。結果論ではなく、FWが数的優位を得た直後、PKの位置が5mだったことを含め、スクラムを選択する場面に思えた。

FB松田凛日が裏スペースに蹴り込まれたボールに対してフォローにまわるもアメリカのプレッシャーを受けてしまう

FB松田凛日が裏スペースに蹴り込まれたボールに対してフォローにまわるもアメリカのプレッシャーを受けてしまう


数的優位を得た日本だったが、自陣でPKを得てもタッチキックがノータッチになって陣地を戻されるなどそのチャンスを活かせない。アメリカは逆に、自陣に戻されてもカウンターアタックで日本陣に攻め込み、22分にSOカントーナがPG。日本はディフェンスで粘りトライを防ぎ、直後にSO大塚朱紗がカナダ戦に続き50/22キックを成功。相手ゴール前ラインアウトの好機を得たが、このラインアウトを失敗。相手シンビンの10分間に得点できずじまい。

27分には再び相手ゴール前でPKを獲得。今度はラインアウトでボールを獲得し、モールからFWが得意のピック&ゴーで相手ゴールに迫るが、日本女子歴代最多トライを決めている齊藤聖奈のアタックも相手に阻まれインゴールドロップアウトと、追加点を奪えない。

ラインアウトを獲得するLO高野眞希

ラインアウトを獲得するLO高野眞希

前半、日本はFWがアメリカを押し込む場面が目立った

前半、日本はFWがアメリカを押し込む場面が目立った



日本はここからペナルティーが増え、自陣に押し込まれる場面が続く。それでも40分、PKから自陣ゴール前のラインアウトに持ち込まれたが、相手CTBケルターをCTB古田真菜が捕まえ、ボールを出させずにアンプレアブル。5-3とリードして前半を終えた。


両チームあわせてトライはわずか1本。前半はスコアが動かず40分が進んだが。後半はゲームが動いた。

45分、自陣からのキックチェイスでボールを捕ったアメリカHOキトリンスキーが左隅に走りきって初トライを決め、アメリカが8-5と逆転。

51分、今度は日本が相手ゴール前のPKをSH阿部がクイックスタートし、WTB名倉ひなのが右隅に再逆転のトライ。失点からすぐに点を取り返したが、55分にはアメリカがCTBケルターのトライで13―10と再々逆転。後半に入り、前半はチグハグしていたアメリカのアタックが機能し始める。

51分、WTB名倉ひなのがワールドカップ初トライを決める

51分、WTB名倉ひなのがワールドカップ初トライを決める

大塚のコンバージョンは決まらず

大塚のコンバージョンは決まらず

日本は59分にNO8永井彩乃とHO永田虹歩、63分にはLO玉井希絵と吉村乙華、PR北野和子、SH津久井萌とリザーブ陣を投入して局面打開を図るが、加速のついたアメリカの攻勢は止まらない。

応援の日の丸を背にNO8永井彩乃が突き進む

応援の日の丸を背にNO8永井彩乃が突き進む



62分にはWTBデティボーとCTBケルターの連続ビッグゲイン、SOカントーナのキックから途中出場の⑳ケアンズが右隅にトライを決め、タッチ際からの難しいコンバージョンをケルターが成功。

途中出場のHO永田虹歩、タックルを受けながら突き進む

途中出場のHO永田虹歩、タックルを受けながら突き進む



20-10とリードを広げ、70分にはラインアウトからPR1ロジャースがハンドオフでグイグイと前進し、WTB14デティボーがトライ。ケルターのコンバージョンも決まり、残り10分で27-10まで点差をつけた。

それでも日本は76分、相手キックを捕った今釘が自陣10m線付近からカウンターアタックで相手DFの隙間を次々に突破し、約55mを走り切るトライ。大塚のコンバージョンも決まり17-27の10点差に追い上げる。もう1つ、PGでもDGでも何らかの点をスコアできれば7点差以内のBPを獲得できる。

76分、相手のキックをとったWTB今釘小町が豪快なカウンターアタック

76分、相手のキックをとったWTB今釘小町が豪快なカウンターアタック

ゴールポスト下にトライ

ゴールポスト下にトライ


祝福にかけよる大塚と長田

祝福にかけよる大塚と長田

しかし、その望みは叶わなかった。78分、逆に自陣に攻め込まれたピンチに、今釘が相手パスに手を出した行為がデリバレートノックオンと判定され、イエローカード。アメリカはこのPKでショットを選択し、ケルターが右中間25mの位置からキックを成功。30-17まで点差を広げて試合終了。

アメリカは4TのBPも含め勝点5を獲得。日本は2試合を終えて勝点ゼロ。決勝トーナメント進出へ厳しい状況となった。23日の最終戦でイタリアに点差をつけて勝てば、3位同士の比較による8強進出の可能性はわずかながら残っているが、点差、プレッシャーを考えず、思い切ってワールドカップの舞台を楽しみ、勝利を掴んでほしい。

レスリー・マッケンジーHC

初戦よりもポゼッションをコントロールしたかったので、特にテリトリーをコントロールすることができたことを非常に誇りに思う。選手たちは終始マネージできていて、いくつか機会を逃してしまったことや規律の欠如と判断ミスが課題であり、このような厳しい形で教訓を得なければならなかったことは、チームにとって本当に残念なこと。

忍耐強くコントロールし続けるという意図を失ってしまった場面があった。トライを奪われただけでなく、トライを奪える位置につけていた場面もあったが、そこで少し急ぎすぎたと感じる。受け身になったわけでもないが、相手に主導権を与えてしまった。

試合は私たちを愛してくれず、厳しい教訓を与えてくることもあるが、それもワールドカップの一部。チームができたことの大部分には満足しているし、私たちが出来得た良い局面をこの先も覚えておく必要がある。2試合負けたからと言って、物語が出来上がるわけでもなく、全ての結果が決まるわけでもない。ポジティブな要素もあるし、試合をコントロールする能力もあるので、自分たち次第だと思う」

南早紀キャプテン

南早紀キャプテン

南早紀キャプテン



「とても悔しい。スコア出来るところで出来ず、自分たちでチャンスを潰してしまった。試合をしていて世界ランキングほどの差を感じず、戦えているという実感はあったが、スコアを獲るという点では強豪国との差はそういったところなのかなと思った。

前回から、チーム一丸となってどこを修正するべきか、どこの強みを出していくかということをこの一週間で沢山話し合って、練習の中で修正することが出来たので、その点ではチームの力が発揮できた。(自分たちが)テンポをあげてエリアを獲っていけたことは、アメリカはすごく嫌だったと思う。

プール戦があと1戦残っているが、イタリアはカナダやアメリカとまた違ったチームだと思うので、反省すべき点は反省して、良かったところは次の試合でも出せるように戦いたい。通用している部分はたくさんあって、例えばフロントフットで前に出続けて、体を張れている点は、日本の女子ラグビーが強くなっているのを実感している。周りの評価や予想を吹き飛ばすような結果を残せるように、また新しい一週間を過ごしたい」

齊藤聖奈選手

NO8で先発した齊藤聖奈はこの日も攻守に渡って全開

NO8で先発した齊藤聖奈はこの日も攻守に渡って全開



「ポジションがどこであれやるべきことは変わらないと思っているので、常に自分のベストを出せるようにしている。日本は体が小さいチームなので、フィジカルの強いチームにはテンポの速さで勝っていかなければいけないので、その点はチームとして出来ていた。後半に入ってから、規律やちょっとしたミスなど、自分たちでコントロール出来る部分が出来ていなかったことが敗因。こういった小さなミスが敗戦に繋がるということが学べたので、修正していきたい」

日本はダブルタックルでアメリカの縦攻撃に対抗した

日本はダブルタックルでアメリカの縦攻撃に対抗した

今釘小町選手

約55mを快走する今釘

約55mを快走する今釘



「前半、プレッシャーをかけ続け先制点を獲り、良いモメンタムが出来たが、ペナルティが多かったり自分自身のスキルだったり、うまくいかない部分やミスを重ねてしまい、相手にキックからエリアを獲られる場面があったので、そこを修正したい。バックスは、キックで自分たちが空いているスペースを見つけ、シンプルなアタックをすることを心掛けていて、自分のキックはあまり良くなかったが大塚選手のキックで前にゲインできていた。(自身のトライについて)自分がボールを持った時に、相手の選手が疲れていて、自分たちの方がまだ動けると思いアタックした」

名倉ひなの選手


「チャンスの場面でトライを獲りきれなかったことがすごく悔しいので、次に向けてしっかり修正して成長したい。(自身の)トライは全員がオプションになってくれてテンポも良く、ハーフ団が前を見てアタックしてくれていたり、フォワードがしっかり前に出てくれたりしていたので、信頼しきって自分も前に出られた。自分たちをコントロールしきれなかったことと、相手のキックに対応できなかったことが悔しい。相手は体も大きくて突破力のあるチームで、そこを封じることが出来なかったのが今回の敗因だと思うので、次に向けてしっかり修正していきたい。今日の前半のプレーや雰囲気がすごく良かったので、次は80分間そのモメンタムを出し続けて必ず勝利したい」

Gallary

CTB古田真菜がタックルに耐えて前に出る

CTB古田真菜がタックルに耐えて前に出る

FL細川恭子は体の大きな相手に対しても正面から体を当てた

FL細川恭子は体の大きな相手に対しても正面から体を当てた

PR加藤幸子はエクスター・チーフス時代のチームメイトたちとの対決となった

PR加藤幸子はエクスター・チーフス時代のチームメイトたちとの対決となった

加藤幸子のボールキャリー

加藤幸子のボールキャリー

ランにキックに精度の高いプレーを見せたSO大塚朱紗

ランにキックに精度の高いプレーを見せたSO大塚朱紗

初先発のHO谷口琴美はフィールドプレーでも活躍

初先発のHO谷口琴美はフィールドプレーでも活躍

大友信彦
(おおとものぶひこ)

1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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