25日に行われる「リポビタンDチャレンジカップ2025」オーストラリア代表戦に挑む日本代表23名のメンバーが発表された。JAPANXVから、LOタイラー・ポール(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、FB矢崎由高(早稲田大学)がメンバー入りを果たした。今回も選手セレクションとテストマッチ5連戦に向けてエディー・ジョーンズHCのコメントを紹介。
エディー・ジョーンズHC
――オーストラリア代表戦のメンバー発表を受けて
10月6日から宮崎でキャンプを開始し、非常に良い準備ができました。ですから試合に向けて万全の準備が整っていると感じています。
オーストラリアがラグビー界で台頭する勢力として復帰していることを理解しており、今年の彼らのプレーを称賛しています。しかしながら、我々は彼らと対戦することを楽しみにしております。日本代表のラグビーを、日本のスタイルでプレーし、国立競技場で行われる素晴らしい試合となるはずです。試合をオープンに、流れるように進めることを好むベン・オキーフ審判が担当されます。我々はそのような試合に備えております。我々にとって大きな挑戦であることは承知していますが、十分対応できると確信しております。
――ワラビーズは前回のテストマッチからメンバーを13人変更しました。勝利の機会があるとお考えですか?
相手が誰を選んでも勝つチャンスはあります。ですから、彼らがどんなメンバーを選んだかは考慮しません。それは彼らの問題です。しかし、多くの選手がポジションを争っているチームと対戦する際、彼らは誰もがポジションを確保したいと願っています。試合開始早々に思うようにいかない状況が続けば、彼らは苛立ちを募らせる可能性があります。我々の仕事は、その苛立ちを引き出すことです。我々のミッションは、試合を通じて彼らを追い詰めること。ですから、彼らが誰を選んだかはさほど重要ではありません。ただし、彼らが選んだチーム構成が我々にとって異なる機会を生み出すことは事実です。

矢崎由高
――FB矢崎選手を先発に起用しました。
彼が早稲田大の学生であることは理解しております。彼の第一の職責は早稲田大学にあります。しかし、早稲田大学が彼を試合に出場させてくれるというご厚意を示してくださった以上、彼は日本を代表する若手有望選手の一人ですし、非常に実力のある真摯な若手選手ですから、今回の試合に出場可能である以上、彼を起用するのは当然の選択でした。
FB松永(拓朗)はかなり深刻な膝の怪我からの復帰となります。ヨーロッパ遠征前に、まずは試合経験を積む必要があると考えました。そのため矢崎に機会が巡ってきたわけですが、土曜日の試合を観戦される皆様は、彼の若き才能にきっと感銘を受けることでしょう。
――昨年10月以来の代表戦となる矢崎選手の成長について、どのような点を期待していますか?
ニュージーランド戦後に膝の負傷を負い、基本的にこの12ヶ月間、彼は膝の負傷からのリハビリを続けてきました。しかし復帰した彼は以前より強靭になり、少し機敏さも増し、ゲーム理解も深まっていると思います。とはいえまだ若い選手であり、成長過程にあるため、土曜日の試合で何を成し遂げようと、今後もさらに上達していくでしょう。ただ確実に、以前より少し成熟した姿を見せています。

――ジョーンズHCが指導したことのある選手がいるオーストラリア代表で、特に注目している選手は?
私たちはオーストラリアよりも自チームのことをより重視してきました。自分たちのラグビーを展開したいのです。オーストラリアには優秀な選手がいることは承知しております。そのうちの何人かには、私が指導した経験もあります。彼らが活躍する姿を見たいとは思います。ただし、我々に対して、ではないです。ですから、特に注目したい選手を挙げることはできません。我々は自分たちのことに集中しています。
――オーストラリア代表にはヘッドコーチ時代に指導された選手たちが何人か在籍しています。ワールドカップでは起用を見送られた選手もいる。オーストラリアとの対戦はあなたにとって何か特別な意味がありますか?
オーストラリアに勝つのは楽しいものです。イングランド代表として10度対戦し、9度勝利しました。それは楽しい経験でした。オーストラリア代表との対戦には、常に独特の感情が伴います。しかしそれは、おそらく自分自身の極限の競争心を呼び起こすものです。今週もその気持ちは変わりません。ですから試合を楽しみにしています。
――LOワーナー・ディアンズがPNCに続いてゲームキャプテンを務めます。そして2人のバイスキャプテン。これはこの試合のみでしょうか、それともツアー全体もこの体制でいくのでしょうか?
今回(のリーダー陣は)はこの試合のためですが、ツアー全体にならない理由はありません。ワーナーはこれまで非常に優れた仕事をしてきました。今後もその役割を継続し、さらに成長を続けると確信しております。本人もキャプテン職を楽しんでいて、チームもそのリーダーシップを高く評価しています。ツアー全体を通じたキャプテン就任に問題はないでしょう。ただツアーに向けた新たなメンバー選考を行う必要があるため、その際にツアーのキャプテンを発表する予定です。
ツアーキャプテンはワーナーとなる可能性が高く、同様に副キャプテン2人もワーナーをサポートする立場となるでしょう。李、ディランもその一員です。しかし、現在のチームの素晴らしい点の一つはリーダーシップをうまく分担していることです。全員が尊敬するキャプテン、つまりワーナーがいることは重要ですが、試合には多くの要素が関わります。様々な局面があり、(下川)甲嗣のような選手たちがチームの方向性を形作る上で重要な役割を担っています。ディランと承信についても触れましたが、フッカーの(江良)颯もチーム内での存在感を増しています。こうした選手たちが優れたリーダーシップグループを形成し、ワーナーが先導しています。ツアーでの彼らの成長が楽しみです。ただしまずはオーストラリア戦を勝ち抜くことが最優先課題です。我々はオーストラリア戦勝利を目標に掲げており、そこから(欧州)ツアーに臨みます。

リーチ・マイケル
――リーチ マイケルがオーストラリア代表戦で90キャップを迎えます。
まず、このチームが自らの輝かしい瞬間を作り始める時が来たと考えます。土曜日にそのチャンスがあり、それが私たちの目指すところです。2025年のこのチームが、日本のラグビーに新たな革命をもたらしたチームとして語られることを願っています。そして、リーチがこのチームにいることは幸運です。どの国であれ、テストマッチ90試合出場は、その選手のタフさ、自己規律、そしてトップレベルでプレーし続ける決意の証です。リーチは日々、それらの資質をすべて示しています。ですから、彼はチームにとって素晴らしいロールモデルです。しかし、これからは我々自身の輝かしい瞬間を創り出したいのです。この2025年のチームは、2015年や2019年のチームよりも優れた存在でありたい。それが我々の目標です。
――この試合の注目ポイント、どういった戦い方をするのか。これまで一度も勝利したことのないオーストラリア相手に、どのように立ち向かうのか?
私たちは日本らしくプレーしたいと考えています。日本らしくプレーするとは、リスクを取る必要がある、ということです。良いリスクを、です。しかし、試合開始時はテンポを重視したプレーが必要です。そして戦い続けること。サッカー日本代表が(3-2と逆転勝利した)ブラジル代表戦で示したように、ひたすら攻め続け、攻め続け、攻め続けるのです。それが優れた日本のチームが実践することです。サッカーであれ、ラグビーであれ、野球であれ関係ありません。ご存知のように、日本のチームには常にこの闘志があります。土曜日こそ、その闘志を存分に示す必要があります。
戦術面では攻撃の仕方に細かな工夫があります。守備面では内側からのプレッシャーを強めたいと考えています。(ワラビーズの)エドメド、10番の若手選手ですね。テストマッチ出場はわずか4試合なので、彼にプレッシャーをかけることを重視します。内側からのプレッシャーを強めれば、外側への圧力も増大させられます。これが我々の戦術において極めて重要な要素です。我々は世界最速の攻撃を追求すると同時に、高速な組織的な守備の構築にも着手しています。最終的には世界最速の守備を実現したいと考えています。
――ラグビー日本代表は1930年以降、395試合で1497トライで、次の試合で1,500トライとなる可能性があります。
これはワーナーに全部答えてもらいましょうか(笑)。私が日本に来た時、試合のスコアを聞いたら7トライと6トライと言われ、聞き返したことがあります。日本の試合を通じて理解できるのは、トライ数に対する特別な関心です。少なくとも3トライは決めたい。そうすれば勝利のチャンスが生まれるからです。それが実現し記録も作れれば素晴らしいことでしょう。
――日本代表のメンバーではコーネルセン、ライリー、ガンター、グリーンはオーストラリア出身ですね。
自分の母国と対戦する時、世界で最も素晴らしい歌の一つが流れます。国歌です。自国と対戦することは大変光栄なことです。そしておそらく、国歌が流れる瞬間だけそのことを本当に考えるのでしょう。その瞬間、感情が込み上げてくるかもしれません。ニュージーランドやオーストラリアで幼い頃を過ごした記憶が蘇るのです。試合前のあの瞬間を彼らは経験するでしょう。
でも今は誰もそのことを語りません。彼らは無関係な存在ではなく、日本代表チームの一員だからです。彼らは日本のためにプレーし、日本に献身しています。そして日本の勝利を願っているのです。しかし試合前には必ず感情が高ぶる瞬間があるでしょう。繰り返しになりますが、これは大きな栄誉です。これがインターナショナルラグビーの素晴らしい点です。選手たちは異なる国のためにプレーする機会を得られて、母国と対戦することもできる。これはユニークで素晴らしい経験です。ですから土曜日に彼らが素晴らしい経験をすることを願っています。合計4人の(オーストラリア出身)選手が(日本代表として)参加するわけです。彼らに本当に良い経験をしてほしいと願っています。