第104回全国高校ラグビーが27日、東大阪市花園ラグビー場で開幕。開会式に続き、恒例の「U18花園15人制」東西対抗戦が行われた。
試合には8月のコベルコカップでセレクトされた東軍西軍それぞれ23選手が出場。12月13-15日にNZで行われたGlobal Youth SevensにU18女子SDSとして出場、優勝したメンバーも東軍の木川海(佐沼③)、萩田未來琉(麗澤③)、齋藤紗葉(関東学院六浦③)、レイラニ・ナイヤガ(開志国際③)、河内陽愛(四日市メリノール②)、伊藤ちひろ(関東学院六浦②)、西軍に大内田葉月(修猷館③/福岡レディース)、藤原郁(京都成章③)、大内田彩月(修猷館①/福岡レディース)、尾久土栞(京都成章③)、伊礼門千珠(佐賀工③)が出場。高校女子のオールスターと呼ぶに相応しい顔ぶれでの戦いとなった。
試合は東軍がキックオフ。西軍にノックオンがあり西軍陣22mスクラムから東軍は右WTB瀬戸萌仁加(関東学院六浦③)を走らせるが、タッチから残したボールを西軍がターンオーバー。強い風が吹く中での試合だったが、西軍のSO大内田葉月、東軍のSO山本梨月(関東学院六浦③)がともに好キックを連発。引き締まった攻防が続いた。
スコアが動いたのは8分だ。東軍陣ゴール前10m付近のスクラムを西軍が押し込んでターンオーバー。すぐにSH高宮わかば(嘉穂③/福岡レディース)がパスを出し、前に仕掛けたSO大内田葉月からCTB大内田彩月へと姉妹パスが渡りポスト右へトライ。コンビネーションの難しい急造チームにあって、息の合った姉妹ペアのダブル司令塔というアドバンテージを活かしたアタックがさっそく炸裂した。
先制された東軍もすぐに反撃する。西軍陣に攻め込むと、スクラムからFB杉本姫菜乃(国学院栃木③)、WTB瀬戸萌仁加のランで西軍ゴール前に迫る。ここでフェイズを重ねた東軍は、SO山本梨月がDFの裏にグラバーキック。しかしここは西軍DFが反応よく戻りドロップアウトでピンチを脱する。
15分にはスクラムでPKを得た東軍が右ゴール前ラインアウトから攻めるが、西軍はFL浦山亜子(大村工③/デューザ長崎)が猛タックルで相手落球を誘い、得点を許さない。16分には西軍SO大内田葉月の好キックに対し、東軍は自陣ゴール前でFB杉本姫菜乃からCTB木川海に思い切って繋ぐカウンターアタックでハーフウェイラインまで出るが、木川から再びパスを受けた杉本が惜しくも落球。東軍は再三良い形を作るがあと1本のパスが通らずなかなか得点に繋がらない。
逆に西軍は20分、自陣からまたも大内田葉月⇒彩月のホットラインで相手DFラインを突破すると、右へCTB13尾久土栞-FL6浦山亜子がパスをつなぎ、WTB14藤原郁が右タッチ際で東軍SH高橋あいり(関東学院六浦③)のタックルをすり抜けて右中間にトライ。SO大内田葉月が難しいコンバージョンを決め、西軍が14-0とリードして折り返した。
後半に入ると東軍がスクラムで相手ボールを奪うなどFW戦で優位に立ち、SOで先発した山本梨月主将がSHに上がり、後半から登場したSO伊藤ちひろとのペアでボールを動かすが、攻め込んだところで西軍の圧力を受け落球するなど好機を活かせない。逆に西軍は11分、No8トゥカナ ルシアナ、LOブカ ミリアマ(ともに筑紫台①/Cheers)という2人のフィジアナ留学生が次々とパワフルな突進を見せ、最後はゴールライン上の密集を⑧ルシアナが飛び越えながら右腕を伸ばしてグラウンディング。大内田葉月のコンバージョンも決まり、西軍が21-0とリードを広げる。
このままでは終わりたくない東軍は15分、FL7棚田温香(四日市メリノール③/パールズ)のジャッカルでPKを獲得。山本が速攻に出て蹴ったキックが相手の手に当たり、ゴール前のラインアウトチャンスを得ると、右への展開で途中出場のWTB20レイラニ・ナイヤガが右隅でラックを作って左へ折り返し、最後はWTB14齋藤紗葉がタックルを受けながらオフロードパスをCTB22河内陽愛(四日市メリノール②/パールズ)-CTB13萩田につなぎ、途中出場のWTB21松本栞(四日市メリノール③/パールズ)が相手タックルを受けながら身体を捻って左隅へ初トライ。
東軍はさらに20分、自陣ゴール前に攻め込まれたところで相手パスをカットした23伊藤ちひろがカウンターアタック。WTB松本が捕まったラックからFB杉本が右ショートサイドを突破。ハンドオフとステップで5人のタックルを引き受けながらハーフウェーラインを超えて前進すると、オフロードパスを使って内をサポートしたFL6高橋みひろへ。高橋は西軍LOブカ・ミリアマに追いかけられながら45mを走り切り、最後は背後からタックルを受け、倒れながらも腕を伸ばしてグラウンディング。⑩山本梨月のコンバージョンが決まり、12-21となったところでノーサイドの笛が鳴った。
東軍の山本梨月と杉本姫菜乃、西軍の大内田姉妹と、強い風の中でも強いキックを蹴る選手が複数出てきたこと、そして前半の最後にみごとなトライをあげた西軍の藤原郁のように、好機に走りきれる選手が現れたのは今季の高校女子ラグビーの大きな進歩といえそうだ。
昨季、この大会に出ていた谷山三菜子(佐賀工→日体大1年)はすでにサクラセブンズの中心メンバーとして世界を転戦している。この日活躍した選手からも、来季のワールドシリーズやアジアシリーズ、さらには春からの太陽生命ウィメンズセブンズシリーズで活躍する選手も次々に出てきそう。あるいは15人制ワールドカップも?
そんな日本女子ラグビーへの期待を抱かせる、若き才能たちの競演だった。
なお、この試合をさばいたレフリーは筑紫女学園高3年で、福岡レディースに所属している田代未空さん。現役の女子高校生が高校女子の全国トップの試合を吹いたのは初めての快挙だが、落ち着いたレフリングで選手にストレスなくプレーさせていた。五輪セブンズを吹いた桑井亜乃さん、今季のワールドラグビーチャレンジャーシリーズのパネルレフリーになった池田韻さん(福岡レディースの先輩だ)に続き、レフリーとして世界に羽ばたく日が楽しみだ。