2月3日と4日、東京都・リコー総合グラウンドにおいてU20日本代表候補のうち、FW選手のみを招集した合宿を実施。その模様は4日に一般公開された。
昨年行われた「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」では5戦全敗で最下位に終わったU20日本代表。今季は、下部大会である「ワールドラグビーU20トロフィー」に降格し、再びコアチーム入りを狙う。
4日公開された練習では、スクラム、ラインアウト、モールの3つのセッションに分かれ、約2時間半にわたって行われ、スクラムのセッションでは、山村亮氏(現:栗田ウォーターガッシュ昭島スクラムコーチ兼FWアドバイザー)が、かつてヤマハで培った「スクラムメソッド」を選手たちに指導した。
新たにスタッフとして参加する三村雄飛丸アシスタントコーチ(ヤマハ発動機)も、体の高さの微調整など、細かいポイントにわたる指導を行った。
エディー・ジョーンズ日本代表HCも就任してからユース世代を含めた強化するための仕組みづくりを言及しているが、そのあたりの連携やU20代表チームとして目指している目標についてなど練習後、大久保直弥監督に聞いた。
さらに合宿に参加している選手では、1月に行われた大学選手権準決勝に1年生ながら先発出場した天理大学のバックロー、川越功喜(天理高校)と太安善明(天理高校)の2選手から合宿の様子などを話してもらった。
大久保直弥 U20日本代表監督
――FWだけの合宿をやった意図
U20トロフィーもしくはチャンピオンシップなどの大会に向けて自分たちの強みを見出さなきゃいけないというところもそうなんですけど、ルール上、日本人中心のチームなので、日本人の特性でいうと体の大きさに関わらず、結束力を持っていくにはセットピースだと思うので、今回始めて格上のリーグワンのチームの旨を借りることができる。我々も目標に対してリーグワンのチームが共感してくれたことは自分たちにとってもすごくありがたいことです。
――今回の準備期間や試合数について
過去のレビューから2月、3月は学校がないにもかかわらずこの期間を今まであんまり使っていなかったので、詰め込みはよくないですけど、やっぱりFWって時間がかかるんですよBKに比べると。今回こうやってリコーさんが環境を提供していただいて、(宿泊は)この施設の『雑魚寝』なんですけど、そういうのも含めてFWらしくていいかなと思います。
――この施設の上で寝てる?
そうです。こういう環境なので、コミュニケーションを取らざるを得ない。ほぼ強制的ですよ(笑)。全員が一部屋なんです。別にFWだけホテルに泊まる必要は全然ないと思います。こういう経験も後になってものすごい印象に残る体験だと思うんです。多くのスポンサーさんからご提供いただいて、とにかく、「ウェイト、トレーニング、食べる」ということで2泊3日です。
今日も走ってないじゃないですか。昨日もウェイト3回やっているんですけど、とにかくジムと食事。ここにランを入れちゃうと絶対(体重が)減るんですよ。同じようにやろうとしても、次の日同じ重さで絶対できなくなるので、そこは割り切って、チームとセットピースと食事。これも初めての試みで常にフィードバックもそうですし、これが3ヶ月半後、選手たちの体がどう変わっていくか。これは僕らにとってもチャレンジです。
関東組は今日、一旦解散するんですけど、関西の選手は6日東芝(府中)、7日にパナ(熊谷)と移動するので、ここに残る予定です。(石橋)チューカはジャパンの関係で東芝へは行かないです。
合宿からあんまり間隔が空きすぎるとまた元に戻ってしまうんですけど、このくらいの間隔だと、再合流してもすぐに入ってこれる。
――このメンバーで絞っていく?
一応候補選手なので、この中から生き残った選手がトロフィーに行くというのが理想なんですけど、大会までは13試合近くあるんで、そこは激しい競争になるんじゃないかな。加えて、2年後のシーズンを考えたとき、エディー(・ジョーンズ日本代表HC)とも話をしているんですが、今の高校日本代表から3、4人入れたいなと。4月以降彼らが大学に入って、もう1回ミックスしていくつかの編成でゲームをするという計画はあります。
能力というよりは、その先附が将来インターナショナルでやれる可能性があるのであれば、駄目なところを探すよりも将来有望なところを引っ張っていきたいと思っています。
――エディー・ジョーンズHCとはU20日本代表の方向性などについてどんな話をしている?
まだうちの選手をエディーが直接見たというのはないんですけど、今のところ次の熊谷では見に来るので、そこでもっと具体的に、選手をみつつ道筋みたいなものはもっと共有できると思っています。基本的なセレクションポリシーは、(髙橋)智也(高校日本代表監督)さんともそうですし、1番~15番までこういった選手が日本には必要だというのは、もうエディーには全部共有しました。
――エディーから何かリクエストは?
代表には「超速」というコンセプトがあるんですけど、そこは自分たちも同じようなコンセプトがあります。言葉はちょっと違うんですけど、スピードもそうなんですけど、セットピースが日本の強みになる事も含めて同じ意見を持っています。
今のシックスネイションズも去年のU20代表選手が3人くらい、もうメンバーにはいってきているじゃないですか。日本もU20で去年活躍した選手が今年ジャパンデビューできるような仕組みに、そう仕組みにしていかなきゃ駄目だというのが一番の共通認識です。
エディーは積極的に自分から情報取りにくるので、常にどういう選手が見たいとか必要なときに名前を挙げられるような状況にしていくかコーチとして大事かなと思っています。
――今日スクラムをコーチングしていた山村亮さんについて
素晴らしいですよね。選手の顔を見たら、話を聞かせている時点で良いコーチングをしているなと思います。
――三村雄飛丸(アシスタントコーチ)については
コーチ1年目でやっぱり大変だと思う。そこはサポートしながらという感じで。ただ彼も体のサイズはないけど、反骨心と考える力がある選手だと思います。
――まだBKはきていないけど、このU20代表のテーマは
この何年か、カオスを作ってそこからストラクチャーをどう作るかというものでしたが、カオスの逆で「コスモ」というキーワードを作った。秩序を生み出す。カオスになったらすぐにコスモに戻す。コスモの一番の象徴はセットピースだと思うんで、1ヶ月前からFWはコスモを作るために入っています。(エディーHCは)すごくいい、って言ってましたよ(笑)。
――今日大野均さんを呼んだ意図は?
もう10年以上、日本を支えてきた方だし、選手たちが目標にしてほしい選手です。過去彼よりタフなFWは多分日本にいなかった。今後もちょくちょく来てもらって経験などをはなしてほしいなと。ただ、選手たちが(均さんに)何か質問できる言葉を持ち合わせていないというのが残念でしたね。自分がどう代表になるかという戦略がある選手だったら、もっと食いついていけると思うんです。
自分に必要なものをわかっている人に質問できるか、そういう語彙力も含め鍛えていかなきゃいけない。先程の質問タイムで「好きな食べ物は?」って。ちょっと・・・(笑)
代表チームで限られた時間の中で自分の考えをどう伝えられるか、質問するということ含めてインターナショナル選手として生き残れる要素、自分の考えとは、気持ちをしっかり言語化できる能力は求めていきたいですね。
――セレクションポリシーについて。フロントローでは100キロ未満は選ばないというような話もありましたが
今のインターナショナルレベルが100kgとしたら、今の選手たちは60ぐらいしかないですよ。筋力でいうと15キロたりない。でも今の日本代表のカルチャーってハードトレーニングで、U20日本代表がそれをやらない理由はない。
トレーニングへの耐性も含め、全ても取られるんですよね。例えば体が完璧でも、全くコミュニケーション能力がない人は世界で戦うことはできないんですよ。スキルとスピードとパワー、環境へ対応できるタフさ、そういう五角形を引き出していかないといけない。もううまいだけでは世界でやっていけるようにはもうなくなっているので、常々そこは意識させていきたいと思っています。
――BKを入れて大きなスコッドで活動していく?
BKは23、4人くらいいるんですけど、一応候補はそのゲームに合わせて呼んでいく形になると思っています。もちろん背骨になる選手はいるんですけど、実際ゲームやらせてみないと、本当にわからないので多少の入れ替わりはあったとしても多分そこまでという感じですね。
――(ジャパンの合宿にも参加する)石橋チューカ選手について
想像以上ですね。その能力もそうなんですけど、聞くことも良く教育されているし、向上心もあるし、多分ジャパンに行ったら、リーチ(・マイケル)がいいメンターになると思いますよ。リーチも大学の時、今のチューカと変わらない体型だったと思うんで、どういう道筋を歩いてきたかということを聞くだけで全然違うと思う。かといって、チューカがリーチになるんじゃなくて、石橋チューカとしてインターナショナルな選手を目指してくれるといいなと思っています。とにかくミーティングは一番前に座れって言っておきました。
天理大学 FL川越功喜
周りがすごい選手ばっかりで自分ももっと頑張らないといけないと思いましたし、やっぱりレベルの高いところでラグビーができて楽しいですね。もともと日本代表になる道を目指していたんで、高校の時は選ばれなくて悔しい思いをしたんですけど、U20で呼ばれて気持ちもあがったというか、やったろうという感じになりました。
――他の選手と飲食を共にして気づいた点は?
自分自身あまりご飯食べられないんですけど、他の選手は体が大きい分、めっちゃ食べますしそれはすごいなと思います。
――自分らしさをアピールできてますか?
自分はタックルが得意なんですけど、今回のユニットではスクラムとモールというところで、あんまりタックルのシーンはないので。ただスピードも持ち味だと思うんで、そこはモールだったり、リーグワン相手に見せていきたい。
――代表への思いは何歳くらいから
ラグビーを初めたのは小学校からなんですけど、代表になりたいと思い始めたのは中3くらいですかね、ワールドカップだと2019年の時ですね。
――これから世界と戦うためにどういったところを成長させたい?
体を大きくして、フィジカル上げていって、もっと強くできるようにやっていきたい。今88kgですが、目標は100kgまで大きくしていきたい。
――大野均さんがいらっしゃって質問だせなかった?
そうですね(笑)自分がトップリーグ見た時に試合に出られていたのを覚えています。
――これまでこういったコンバインドのチームの経験はありますか
中学校の時に大阪府の選抜でやりました。
――天理大学では国立も経験しました
スタートメンバーでさせてもらっているんですけど、満足せずに全然まだまだもっと上を目指して頑張っていきたいですね。
天理大学 FL太安善明
実際に同じ世代の人たちを見て体大きいなとか体重もすごくあるんで、自分は身長ない分、体重をつけていかないと駄目なんで、食事の面でしっかりと日本代表のやり方を学んでいきながらリーグワンとの対戦にむけてレベルアップしていきたい。
――リーグワンと対戦できるというのはどうですか
すごくありがたいと思っています。今まで経験したこともないですし、すごく楽しみな感じで早くやりたいなと感じています。
――今回の合宿では「雑魚寝」していると聞きました。なかなかないですよね?
雑魚寝はなかなかないですね(笑)。たまに林間学校とかそういうのでやったくらいで。高校でも2段ベッドだったんで・・・。
――今日のセッションでは山村亮さんからスクラムのセッションありましたが何か新たな発見はありましたか
今まで天理大学の中で合ってた部分だけで、いろんな人達とやっていく中で、こういうやり方があるんやなという発見があって、それは自分自身の成長に繋がっているかなと思います。
――大学の方は今は休みですか?
いや、この合宿と同じタイミングで始まっています。
――大学選手権では悔しい結果だったと思いますが、ここでの経験をどう持ち帰りたい?
まだ自分は1回生・2回生なんで、いつまでも4回生とか、3回生に頼っているだけじゃなくて、この下の世代からも盛り上げていって、新たに学んだことを、僕はあんまり口では言えないんで、プレーで表現していきたいです。
――目標としているプレーヤーは
アーディ・サヴェア(現:コベルコ神戸スティーラーズ)選手は結構ずっと憧れています!
今後、U20日本代表は以下のスケジュールでリーグワンのチームとの合同練習を行う。
2月6日(火)東芝ブレイブルーパス
2月8日(木)~9日(金)埼玉パナソニックワイルドナイツ
2月13日(火)三菱重工相模原ダイナボアーズ
2月19日(月)~21日(水)トヨタヴェルブリッツ
3月1日(金)東京サントリーサンゴリアス