1月7日、第103回全国高校ラグビーフットボール大会、決勝戦はAシード同士の戦い、桐蔭学園(神奈川)が東福岡(福岡)に8-5で勝利し、3年ぶり4回目の優勝を飾り、春の選抜大会に続いて2冠を達成した。
両チーム共に準決勝からメンバーの入替はなかった。互いにAシード。ここまで4試合を戦ってきている。そして、両チームともに花園で戦う度にチームが成長していてこの決勝に向けてピークをもってきていた。
実力拮抗のチーム同士、60分、どちらが勝利するか本当にわからない戦いだった。序盤からFWのフィジカルバトルでやや桐蔭学園が押し込む場面が見られたが、互いに粘り強いディフェンスでトライを許さなかった。
試合が動いたのは前半13分、桐蔭学園はボールを保持して23フェイズ。東福岡が自陣10m付近でペナルティ。城央祐キャプテンはショット選択する。キックを蹴るのはここまで90%以上の成功率を誇るFB吉田晃己。左腕を2度大きく上にあげるルーティンから思い切り振り抜きゴール中央にPGを決め桐蔭学園が3-0とリードする。
24分、東福岡SH利守が自陣22m内側で相手のラックからボールを奪うと左オープンサイドへ展開。カウンターを仕掛ける東福岡SO井上晴生がボールを落球すると、桐蔭学園WTB田中健想がボールをピックして相手ディフェンダーを二人にタックルを受けながらもインゴールへトライを決め8-0とリードを広げて前半を終えた。
後半に入っても両者スコアがないまま10分をすぎる。桐蔭学園は何度か敵陣に入るもこの日はセットプレー、特にラインアウトが決まらずリズムがつかめない。東福岡も用意してきたオプションを出しながら攻撃を仕掛けるもゴールラインを超えることができない。
後半16分、東福岡は敵陣10m付近からのアタックでNO8高比良恭介キャプテンがタッチライン際をゲインするとオフロードでWTB深田衣咲、CTB神拓実とつながりトライ。やっと桐蔭学園のディフェンスをこじ開けて8-5とする。
後半29分、ロスタイムは1分、残り2分の戦い。東福岡はハーフウェイ付近でPKを獲得。SO井上が素晴らしいタッチキックでゴール前5m付近でのラインアウトのチャンス。フェイズを重ねる東福岡に対し、低いタックルで桐蔭学園は懸命のディフェンス。
迎えた7フェイズ目、HO田中健心が値千金のジャッカル。桐蔭学園が8-5で東福岡で接戦を制し3大会ぶり4度目の優勝を果たした。
桐蔭学園 藤原秀之監督
本当にあの生徒、すごいことやったなというふうに思っています。 東福岡さんにはまだ決勝戦で勝ったこと一度もなかったですが、歴史をしっかり作ってくれましたから、本当に良かったなというふうに思っています。
昨年(花園に)出れませんでしたから、本当に彼らがあの悔しい思いでいっぱいだったんで、桐蔭のまたDNAを引き継いでくれたなと思っております。
彼らには「おめでとう」といいたいです。
今日は高校の最後の試合ですね。本当の決勝、高校生らしい試合が見せれたんじゃないかなというふうに思っております。
本当にシンプルに両方の生徒、選手ですね。それから関係者並びに本当に大会を運営していただきました実行委員の方、すべての方に感謝したいというふうに思っております。
試合はナマものなのでしょうがないですね。やることをやった。(花園で右肩上がりでした)また新たな桐蔭のDNAとして頑張ってもらいたい。素晴らしい最高のチームでした。また新たな歴史の1ページを作ることができた。
最後はしびれましたね。ディフェンスしぶとかった。がんばりました。準々決勝で仰星にプレッシャーを浴びたのが良かった。(東福岡さんが)思ったより蹴ってきた。外側を攻めてくると思っていた。
桐蔭学園 NO8城央祐キャプテン
(1年前)あの日、負けてから立ち返る場所、自分たちのアイデンティティー、桐蔭学園らしさを見つけることができました。1、2年生の時はコロナで練習時間が短かったり、対外試合ができなかったが、3年になってから始めて、関東の強豪や大学との合同練習をさせてもらって関係者の方々のおかげもあり日本一になれました。
自分たちで身体をバチバチあてて、自陣からでも継続して自分たちのラグビーをしようとミーティングで腹を決めてやることができました。僕たちはチャレンジャーなので、チャレンジャー精神を持って臨もうとしました。
(「徹する」というチームスローガン)プレーどうこうより、ミーティングで話したことをやる抜くことができました。FWがシンプルにバチバチ(体を)当てることが一番大事だし、自分たちの強みなのでそれをやろうとしましたし、できたと思います。
夏合宿ではトライを取られることに対する執着心が低かった。今日は多彩なアタックをしてくる東福岡さんにあまりトライを取られなかったのは、自分たちの準備もあったと思いますが、気持ちの部分も出せたのかな思います。
(花園は)やってみると2週間5試合はとても短く感じました。(昨年末、花園を見に来ていたが)ほとんどが花園を知らない中、1年後、ここで試合をするには逆算してやらないといけないと思っていました。40人くらいは来ていました。
(今季は15人制で無敗だった)「勝つ」ということが一番の自信に繋がりました。京都成章、大分東明、大阪桐蔭、國學院栃木、東福岡に勝てて、自分たちはやれると自信が付いて夏も全勝できた。今思えば、(桐蔭学園の選手たちが中心となって出場し決勝でまけた)国体は悔しかった。そこで自分たちの弱さを再確認できた。それがあったから空気が引き締まったのもあったと思います。
(憧れの桐蔭学園に入学して優勝できたこと)まだ実感が湧いていませんが、こんな景色だったんだな。桐蔭学園のいち員として新たな歴史を築くことができてよかった。涙は出ましたが、あまり見せる必要がないと思って我慢しました。
桐蔭学園 SO萩井耀司
今まで1年間ずっとやってきた体を当て続けるという部分を60分間通して試合でやろうと決めていたことを継続することができたのですごい良かったと思います。
(ゲームプランについて)やっぱり簡単に蹴ってしまうと東福岡さんのいいカウンターからの得点が(これまでの試合でも)すごく多かったので、自分たちの強みである継続ラグビーを前半のはじめからバチバチ体を当てていこうというゲームプランでした。試合前から覚悟をきめて今日は継続しようと決めていたので、やっぱり僕のゲームメイクに周りがすごく走ってくれたのが良かった。
(この試合できつかったところ)セットプレー全てですよね。ラインアウトがなかなか安定しなくて、そこから自分たちのいいアタックというのができなくて、相手に(ボールが)渡ってしまってディフェンス、ディフェンス。ボールを取り返せても、またセットプレーが安定しなくてすごく苦しかったですね。
(ラインアウトがうまくいかずにどう修正しようと話をしたか)FWに対してはセットプレーをシンプルでいいよ、ミスしてもいいから正確にやるようにということと、相手に渡ってしまっても、ディフェンスしようと(気持ちを)落とさせないような声がけを60分間通してしていました。
(ディフェンスについて)守りきりました。自分たちはディフェンスも強みだったんで、そこはぶらさず、60分間、ディフェンスでも走り続けようということを試合前に全員で決めていました。それが実行することができたと思います。
(昨年の負けから優勝できたこと)自分としては(相手に)キレられてもいいので、すごく厳しい言葉とかかけることが多々あったんですけど、それはやっぱりチームとして、個人として成長してほしいというのが自分の中であったので。そういう厳しい言葉をかけていたんですけど、最終的には58期で優勝することができたので、素直に嬉しいです。
(これまで厳しい言葉をかけてきたが、今日はどんな言葉を?)まずは自分のゲームプランを実行してありがとうといって、素直に全員笑顔で喜び合いたいと思います。
桐蔭学園 FB吉田晃己
自分たちは花園を経験したことはなかったんですけど、やっぱり試合を重ねていくごとに桐蔭学園は成長するチームで、一人一人が試合を重ねるごとに花園に慣れていって、自分のキックもそうですし、キックについては自信があったんで、思い通り花園で出せました。
(ディフェンスについて)ディフェンスする時間が増えてくると、規律というところが乱れてしまうので自分は後ろから常にオフサイドをしないという声をかけていました。自分は後ろから指示しているだけなんですけど、前にいるメンバーが最後まで守り切ってくれたんで本当に感謝です。
1点でも勝って、勝ちきるためには自分のキックは非常に大事で今日も最初のペナルティーゴールを決められて、そこから流れを持っていこうと思っていたんですけど、やっぱり東福岡さんが強くて、後半は完全に空いてのペースで最終的には自分の3点が効いたので良かった。
(大会通じて印象的な試合は))やっぱりこの決勝です。自分たち今まで本当に後半0点という試合はなくて、30分間守り続けるというのも今までになかったんで、そういった意味では本当に今日の試合は今までやってきた中で一番印象に残っています。
(花園は楽しめたか?)楽しめました。最後まで楽しくラグビーができました。
(最後のミーティング、どんな話をしたい?)楽しく、みんなで笑い合って話をしたいです。
東福岡 NO8高比良恭介キャプテン
ただただ悔しいです。高校最後の試合ということで、一つになって日本一に向かって60分間、体を張ってよかったと思うし楽しかったです。(ハーフタイムには)8点差だったのでまだいけるよと気持ちは折れていなかったし、行くぞと臨んだが、相手のディフェンスが固くてこじ開けることができなかった。FWだけでなくBKも準備していました。ゴール前まで攻めることができましたが、そこで守りきるのが桐蔭学園さんの強さだったり完敗でした。
(これからのラグビー人生に向けて)今日の敗戦で終わらせるのではなく、これおを次に繋げて今日があったから、と言えるように努力していきたい。