サクラフィフティーンこと女子15人制日本代表は16日、秩父宮ラグビー場で「太陽生命ジャパンラグビーチャレンジシリーズ」フィジアナこと女子15人制フィジー代表と第2テストマッチを行い、41-36で勝利。福岡で行われた第1テストに続き連勝を飾った。
試合は午後6時10分、1,921人の観衆が見つめる中、日本のキックオフで始まった。

長田いろはキャプテンを先頭に入場

フィジー国歌斉唱

日本・国歌斉唱
日本は3分、WTB今釘小町の好判断のキック&チェイスで相手にキャリーバックさせ、いきなり5mスクラムのチャンスを得るが、このファーストスクラムはフィジーが125kgのコロバタ、156kgのラソレアという超重量級両PRの体格を活かして一気に押し込みPKを奪う。

今釘小町が判断よく裏のスペースにグラバーキックし自らチェイス

この試合ファーストスクラム。フィジーの重量FWでジャパンはペナルティーを取られてしまう
だがフィジーが10m線付近まで戻した日本ボールのラインアウトから日本はアタック。フェイズを重ねてからSO大塚朱紗が相手ゴール前へキック。相手が戻ったところへWTB今釘、FL長田いろは、LO川村雅未が3人がかりでタックル&オーバーをかけてPKを獲得。このラインアウトからラインアウトに持ち込み、さらにPKを得ると再びラインアウトからモールを押しておいて左に展開。CTB小林花奈子がDFのギャップに飛び込み先制トライ。大塚がコンバージョンを決め日本が7点を先制した。

大塚朱紗が裏のスペースにグラバーキック

プレッシャーをかけてPKを獲得

小林花奈子がディフェンスのギャップに飛び込み先制トライ

大塚朱紗のコンバージョンも決まって7-0
しかし、フィジーは前週、前半を無得点で終えたチームとは別人だった。
次のキックオフで日本が落球して22m線でのスクラムを得ると、そこからワンパスで重量級のランナーが接点に思い切り走り込む直線的アタックを反復。必死に食らいつく日本DFもズルズルと差し込まれ、12分、5番LOダウニモアラがゴールポスト真下にトライ。FBティソロがコンバージョンを決め7-7の同点。

前半12分、フィジーはLOダウニモアラがトライを返し7-7
日本もすぐさま反撃。フィジーゴール前5mラインアウトのチャンスを得るが、ここで痛恨のノットストレート。フィジーはここで、自陣ゴール前から果敢にアタック。12ヴムがゴール前から22m線まで前進し、キックとFWの縦突進をからめてハーフウェーまで前進すると、再びボールを持ったヴムが力強く前進。日本は2人3人がかりで止めようとするが姿勢が高くなり、相手の体重を活かしたアタックに後退を繰り返し、最後はWTB14ミリニアのビッグゲインからLO4ナロケテが右隅にトライ。フィジーが12-7と逆転する。

阿部恵と長田いろはがダブルタックルするも止まらず…

しかし、試合開始から20分を過ぎると、序盤からエンジン全開で飛ばしてきたフィジーの重量級選手たちの足がさすがに止まる。25分、自陣から4連続でPKを得た日本は左ゴール前10mのラインアウトをLO川村が掴み、ゴールライン目前でラックを作ると、CTB小林、FL齊藤聖奈が連続アタック。ここまで抜群の決定力をみせてきた2人のアタックをフィジーはしのぐが、日本はすぐにボールを出し、HO谷口琴美が左中間インゴールに飛び込んだ。SO大塚が慎重にコンバージョンを蹴り込み14-12と逆転する。

永井彩乃が突破を図るもダブルタックルの前になかなか前進できない

25分、敵陣ゴール前10m付近でのラインアウト。川村雅未がしっかりキャッチ

川村が前進

谷口琴美がトライ

大塚朱紗がコンバージョンをきめて14-12の逆転
続いて31分、フィジーゴール前に攻め込んだ日本は、相手ボールのスクラムからのアタックを止めてPKを得るとクイックスタート。ゴール前でフェイズを重ねると、エース齊藤聖奈がポスト左にねじ込みトライ。自らが持つ日本代表通算トライ記録を17と伸ばす。大塚がコンバージョンを蹴り込み21-12とする。

西村澪が縦の突進

前半31分齊藤聖奈がトライ

齊藤聖奈は自らが持つ代表通算トライ記録を17に伸ばした
さらに35分にはフィジーのCTBネイヴォサがハイタックルでイエローカード。日本は数的優位の10分間をフルに活用することを狙ったのか、まずはショットを選択。大塚が正面左約35mの位置からみごとなキックを決め、24-12と点差を広げる。

35分、大塚朱紗のPGが決まり24-12とリードを広げた
しかしフィジーに数的不利は関係なかった。次のキックオフから日本陣に攻め込むと、先ほどまで止まっていた足が復活。ラインアウトからNo8レウェニギラ、CTBヴム、FBティソロらが次々と縦突進を繰り返し、LOダウニモアラがゴール前へ。ここは日本WTB松村美咲が必死のタックルで止めるが、サポートに入ったSOラヴティアにオフロードパスが繋がりトライ。フィジーが数的不利をものともせずにトライを奪い、19-24と追い上げてハーフタイムへ。

前半終了間際SOラヴティアのトライ

後半開始早々からウォーミングアップするンドカジェニファ「後半6分から出場する」とハーフタイムに告げられたという。
後半も先に点を取ったのは日本だった。
9分、相手ゴール前に攻め込むと、いったん奪われたボールをCTB小林がタックルしてそのまま強奪。サポートした加藤幸子につなぎ、永井彩乃がラックにすると、右へ松村美咲-FL長田いろは主将とつなぎ右隅にトライ。大塚のコンバージョンは惜しくもポストに当たって外れるが、日本が29-19とリードを広げる。

後半から登場した向來桜子

松村美咲が内にステップをきってボールをキープ

長田いろはにつなぐと、1on1の局面で仕掛けてそのまま右隅にトライ
さらに16分だ。フィジーの自陣からのアタックをハーフウェー付近で止め、相手のパスを日本SH阿部がカット。そこからFB西村蒼空が前進し、ラックから出たボールを阿部が好判断でキック。インゴールで弾んだボールをフィジーFBティソロが押さえ損ねたところへ走り込んだのがWTB14松村美咲。福岡での第1テストでは初キャップに2トライで花を添えた18歳がしっかりとボールを押さえデビューから2試合連続のトライ。日本は34-19の15点差までリードを広げた。

インゴールのルーズボールに対して最後までチェイスし、松村美咲が2試合連続トライを決めた
しかしフィジーは男子と同様、スペースがあれば、アンストラクチャーな状況でボールを持てば、フィジアンマジックが炸裂する。24分、フィジー陣に攻め込んでいた日本がハーフウェーライン付近まで後退した混戦からこぼれ出たボールを奪うと大きく右へ展開。CTB13ネイヴォサが右のスペースを走り切ってインゴールを陥れトライ。24-34の10点差に迫る。

まさに「フィジアンマジック!」低く入ったタックルに対して上を通してボールをつなぎ10点差に迫るフィジアナ。

後半出場の小鍛治歩は怪我のため退場。悔しい試合となった

自陣から仕掛ける安藤菜緒

向來桜子の好走から

松村美咲が精度高いキックで裏のスペースに蹴り込む

SH津久井萌のクイックからアタックしかけ、長田いろはがステップを切ってゴールに迫る
それでも日本は流れを渡さなかった。27分、途中出場のFL向來桜子の好走からパスを受けたWTB松村が好判断で相手ゴール前へキック。蹴り返されたラインアウトからPKを得ると、交替出場のSH津久井萌がクイックスタート。さらにCTB小林がゴールに迫り、FL長田主将がポスト真下にトライ。大塚のコンバージョンも決まり41-24と17点差をつけた。

17点差と再びリードを広げる長田いろはのトライ

苦しい時間帯での長田のトライはチームにもう一度エナジーを与えた
しかし、これで諦めないのがフィジーの恐ろしさだ。次のキックオフで日本陣深くに攻め込むと、日本のパスミスで得たラインアウトから攻め、FLワイセガが左中間にトライ。SOラヴティアがコンバージョンを蹴り込んで31-41の10点差に戻すと、直後の74分には日本の中途半端なキックからカウンターアタックでみごとなパスを繋ぎ、ラヴティアがみごとなステップを切りながらトライ。ゴールは外れたが、ワンチャンスで逆転できる36-41まで追い上げた。

SH津久井萌

向來桜子がしぶとく絡み相手を倒すと

すぐに立ち上がり、相手をタッチラインに押し出した。
残り5分、日本はフィジー陣深くにキックを蹴り込んでプレッシャーをかけ、逃げ切りを図る。残り2分、フィジーの自陣スクラムからのネイヴォサのアタックには3人がかりのタックルでノックオンさせ、次のスクラムからのアタックでハイタックルのペナルティーを獲得。
ここでちょうどタイムアップ。日本は大塚がPGを狙う。相手に7点差以内負けのBPを与えないという、WXVなど世界大会のレギュレーションを睨んだチャレンジだったのか、しかし大塚は角度のあるこのキックを失敗。インゴールで捕球したフィジーが渾身のアタックに出るが、これもノックオン。日本は小林がタッチに蹴り出し、41-36で逃げ切り。フィジーとの2連戦に連勝し、5月のカザフスタン戦、7月のスペイン戦に続き今年のテストマッチ4連勝。このあとのイタリア遠征と10月のWXVに向け弾みをつける勝利となった。

見事に勝ちきったサクラフィフティーン

応援に駆けつけていた鈴木実沙紀と齊藤聖奈

第1戦とは全く違うチームに成長したフィジアナ。
サクラフィフティーン レスリー・マッケンジーHC

レスリーマッケンジーHC
「今日の勝利は選手たちにとってすごく喜ばしくおもっています。選手たちは本当にハードな準備をしてきましたし、今日もハードにプレーしました。明日はすごい筋肉痛になっているでしょうね。コーチングボックスの中では少しエキサイトしすぎた部分もあったかもしれません。観客のみなさんも十分にエキサイトしてもらったんではないかと思います」
――今日の試合で良かったところは
「ホームでのテストマッチを2試合行われたことはわたしたちが今どのような位置にいるのかということを確認する非常に重要な機会になったと思っています。結果的には2勝できましたが、この2つのテストマッチではどのようにして勝っていくのか、またどのようにチームをマネージメントしていくかということに集中していました。
勝つということにこだわりながらゲームをどうコントロールするのか、マネージするということを理解していくのか、自分たちの今の力を理解していくのか確認していく機会でもありました。
例えば、(長田)いろは(キャプテン)は今キャプテンとして急成長しています。彼女はキャプテンとはどうあることなのか、キャプテンとしてどうプレーするかということを理解することで本当に成長したと思っています。

長田いろは
今日の2トライに関しては『キャプテンズトライ』だったと思っていますし、いくつかのタックルは『キャプテンズタックル』キャプテンがすべきタックルを見せることができていました。
ここから先もまたテストマッチが続いていくんですが、こういったこと積み重ねていくことによって海外のテストマッチをたくさんしているチームに追いついていけると思っています」
――WXVがサクラフィフティーンにもたらす価値は
「私達は世界上位12位の中にいるチームと戦うことができます。またワールドカップと似たようなフォーマットの中で戦うことになります。この大会の意図は『like for like』ということで『(実力が)似たようなチームと戦うことができる』ということが一つとされています。

そういった大会に定期的に出場できるということはすごく意味のあることで、ワールドカップに向けて自分たちがフィジカル、メンタル両面でどのような立ち位置になるのか、またどのいうふうに発展させていくのか、私達自身、ゲームをどう改善していけばいいのか、確認できるいい機会になります」
――今、キャップ数の少ない選手を意識的に出場させていると感じますがこれからのテストマッチもそうしていきますか?それともある程度メンバーを固定していきますか。
「すごく正直に申し上げると、これ以外のオプションがないというところがあります。なぜならみんな若いので。前回のワールドカップに出ていたような世代の選手たちから代替わりしていく中、新しい選手をどんどん追加してチームとしても成長していけることは今日の試合でもそういった意味ですごくエキサイティングでした。新しくキャップを得た選手たちが、このような激しい競争を経験できたということは非常に収穫だったと思っていますし、チームとしてもそういった状況の中でどういうふうにマネージしていくかを経験でき、価値のあることでした」

この試合初キャップを果たしたンドカジェニファ
――今日先発した弘津悠選手、松村美咲選手ともにセブンズから15人制に転向してきました新しい選手ですが、二人の評価を。
2人に関しては、可能性を感じていてすごくわくわくしています。2人のような選手たが15人制のラグビーがどういうものかを味わうような機会を今回与えることができてすごく良かったと思っています。日本では歴史的に7人制に重きが置かれていました。その中で、2人のような選手がしっかりと足跡を残すことができました。

弘津悠
ディフェンスだったり、フィジカルなプレーだったり、2人のボールキャリーだったり、(松村)美咲に関しては特にキッキングゲームで素晴らしいプレーを見せてくれました。日本には2人のような両方で活躍できる可能性をもっている選手が少なからずいます。ですので、彼女たちがポジティブなインパクト残してくれることで、私達のプログラムにもいい起爆剤になっていますし、ここ数年間、日本国内で行われている大会などで、選手たちの能力が向上していることを示されています」

松村美咲
サクラフィフティーン 長田いろはキャプテン

長田いろは
「国内で試合をする機会をいただけたことにすごく感謝しています。ラグビーとしては先週の試合で出た課題をこの1週間で修正することができて、それを前半に出すことができました。セットプレーで少しプレッシャーもかかった部分もあったんですけど、敵陣に入った時にしっかり自分たちの粘り強いアタックができてトライにつながった。これからに向けてもう一度精度高く、サクラフィフティーンのラグビーを見せることができるように頑張りたい」
ーー前半ディフェンス面で相手にゲインラインをきられる場面があった
「わたしたちのディフェンスの形で『しっかり広がる』というのがあるので、まずは自分たちのやることにフォーカスして、相手に合わせずに自分たちがしっかり幅をとって相手にプレッシャーをかけられるように改善したい。ダブルタックルえ大きい相手に対して2人で止めるというところを徹底させていきたい」
――先週は、キャプテンとして少し考えることが多いと言われていましたが、今日はすごく吹っ切れたように見えました。
「隣とのコミュニケーションを大事にしたことと、自分がオプションになる意識を持って、プレーしていました」
――2トライについて
「そうですね。フットワークを使ってしっかり前に出れたのでトライに繋がったのかなと思います」
――後半の終盤、どんなことを考えてどういうふうに指示をしていた
「チームとしては、全員が声がけしていて、集中することとか、自分たちがフォーカスするところを意識するということをみんなでやっていたので、しっかり、ゲームコントロールできていた」