サクラフィフティーン総括会見・レスリーHC「日本だけがスキルレベルが高い時代ではなくなってきているのは明白」 | ラグビージャパン365

サクラフィフティーン総括会見・レスリーHC「日本だけがスキルレベルが高い時代ではなくなってきているのは明白」

2022/10/24

文●編集部


24日、ラグビー女子15人制日本代表はワールドカップ2021の戦いを終え総括会見を行った。浅見敬子ナショナルチームディレクターとレスリー・マッケンジーヘッドコーチがこれまでの活動を振り返った。

浅見敬子ナショナルチームディレクター

チームとしては目標としていたトップ8は達成できなかったが、一試合、一試合、選手 スタッフが懸命にやってくれた。私自身誇りに思うチームだし、成長を止めないチームはこういうチームだなと感じた。ニュージーランド戦も含めて4試合で、素晴らしいチームになったと感じています。


――3年後のW杯に向けて、これからどんな経験を積ませていきたいか 


まずは、2017年からのレビューを持って、2019年1月からW杯まで、現体制になってからの道筋、何が結果としてよかったのか、何が上手くいかなかったのか。コロナの影響もあるが、しっかり分析して評価していかないといけない。選手やヘッドコーチから(イタリア戦後)試合経験、経験値で(他の国と)壁を感じたという言葉があったが、それは間違いない。レビューとして客観的に意見をいただきながら、代表強化部門として見据えていきたい。

――今後の体制はまだ決まっていない? レスリー・マッケンジーHCとの契約は今年の年末まで?


はい、そうです。しっかりここは何が良かった、悪かった、どう変えていくかということをもう少し客観的に見ていかないといけない。現状では決まっていない。すべてのことがこれからです。


――今後の強化の方針は


間違いなく、(新しい国際大会)「WXV」が始まりますので、毎年しっかりやっていって、W杯は3年後なので、W杯に向けて強化を進めていく必要があります。今大会は1年多かったことが間違いなくプラスに働いた。次の大会は1年少なくなったので、我々はどうやっていくか、大きなところです。(現体制の)強化の内容を振り返って、次に進むことをしっかりやっていきたい

(新しい国際大会は)来年の秋の予定で、フォーマットが変わらなければ3試合になるはずです。またホスト国も確定していないし、どのチームがどの枠になるか、予選もあります。どの国がどの枠に入るかにもよると思います。

――レスリーHC体制はこれで一区切りです。良かった点、改善すべき点は?


レスリーさんは選手を丁寧にみてくれて、ディテールと言う言葉が彼女のコーチングの中でキーワードになっていて、選手を大事に見ていたし、よくコミュニケーションをとっていた。英語が少しわかる人もいたが、コミュニケーションは大変だったが丁寧に取り組んでくれていた。

2017年までの体制はセブンズが終わった直後、セブンズのメンバーと融合してやっていたが、選手層が薄い中やっていかないといけなかった。2017W杯はケガや負傷が出たが、今大会はほとんどケガ人がでなかった。2017年W杯後、どれだけ選手層を厚く、フィジカルの強いチームにするかがポイントだった。レスリーさんがコンタクトに自信を持てるように、丁寧にこだわってくれた。そのチームカルチャーが選手のマインドを大きく変えてくれた。

難しかったところは、彼女うんぬんの問題ではなく、選手層(の問題です)。セブンズを軸でやっている選手、チームが多いが、2017年W杯の後、15人制をやりたい選手が増えたのは事実です。セブンズしかやったことがない選手を15人引っ張ってきたりしました。SH阿部は基本セブンズの選手でしたが、なんとか15人制にシフトしてやってくれた。レスリーさんの目は確かだったし、選手層を厚くすることは大変な苦労だったと思います。ユース アンダーカテゴリーにどんどん厚みをもたせるには選手の発掘、強化も大事だなと考えています。


――今後もセブンズと15人制のハイブリッドで臨んでいく?


いい形ではセパレートしてこられたと思いますが、今回、ブラックファーンズの選手たちでもオリンピックで活躍した選手が普通にW杯で活躍する選手が多かった。本当に世界で戦える選手は15人制、セブンズ関係なくいる。選手のハイブリッドは無視するのではなくセブンズ、15制の強化を今後も上手く連携してやっていくことも大事かなと思います。

――3連敗。プール最下位で勝点も挙げられませんでした。強化担当として評価を 


もちろんトップ8という大きな目標がある中、プールでの1勝は前回も達成できなかったので、(今回もできずに)残念に思っている。点差もそうですがフィジカルで大きなギャップがあった中で、自信を持って戦えたことは誇りに思います。(プレーの)中身は成長していたし、1試合1試合伸びていたことがパフォーマンスに出ていた。


――W杯でも1試合平均1.7トライ。この2年間で14試合で、平均2.5トライと決定力のなさが響きました。

W杯の厳しさを感じています。W杯、世界と戦う中で、経験値というところで、2017年も他のチームと比べてキャップ数が少なかった(が今回もそうだった)。また他のチームの平均年齢は20代後半で、日本代表には2017年から残ってくれた選手もいたが 平均年齢は23~24歳だった。経験値や大きな舞台で戦うことがもっともっと必要だなと思いますし、もっともっと積んでいかないといけない。W杯という舞台で結果を出す(プレーを)出せなかったのは私達の今後の強化に向けて宿題だと思います。

いろんなエラーもありましたし、ここで取らないといけない場面で(トライが)取れない。セットプレーが取れない。陣地が取れなかったのは経験値が大きかった。


――若いチームなので、逆に、3年後は期待できるのでは?


頑張ってくれた選手たちは、今は疲れているので休んでもらいたい。ブラックファーンズ戦から考えれば長い期間、NZにいてメンタル面でも疲れている。しっかりゆっくりしてから、次につなげるよう考えてもらいたい。

――点差以上に内容は良かったが、レスリーHCが「日常的な環境を高めないと判断が成長しない」と話していました。プロ化も含めて国内環境をどうよくしていくべきか? 


日本の選手はプロではない状況だが、企業、大学にサポートされていい状況でできている。一概にプロ化がいいのか、(プロ化している中でも)だいぶ差があるようで、選手たちがどういうことがハッピーなのか。もちろん強化に結びつかないといけないし、我々も議論していかないといけない。


――テストマッチのマッチメイクに関して


今夏、国内4試合やらせていただいて、W杯結果を出すことの難しさもそうですが 国内で多くの方に見ていただく中で結果を出すプレッシャーも感じたことがなかった。来年以降も日本の女子ラグビーを知ってもらうことも含めて、個人的に試合を国内でできればといいと思うし、私も協会内で話していきたい。

(夏に)南アフリカ、アイルランドと対戦しましたが、レスリーさんがどの相手とやるべきかを考えてくれた。高いレベルとやるのか、同じくらいの相手とやるのか、コーチの強化の方向性もあるが、(今夏は)いいマッチメイクだった思います。遠征がいいのかホームがいいのかなど、バランスもしっかり検討しないといけない。前年、今年とはそれができたのが良かった。


――国内15人制の環境をもっと良くしていくには


2017年W杯が終わったあと、セブンズだけでなく15人制にもチャレンジしたいという選手が増えた。関西大会、関東大会と地域の大会があり、やりたい人が増えてきたし、15人制経験のあるコーチが、15人制を指導するチームが増えてきた。

やりたい選手が増えてくることで国内大会は、ボリューム、質も上がっていくことが期待できますが、選手層は薄いです。特にタイトファイブは、女子だけの問題ではないが、その厚みはないです。

どの試合もずっと同じPRが出ていて、その選手のウェルフェアはどうなのか、選手の安全面も配慮していかないといけない。クラブチームや地域と話して、発展させていかないといけないのは女子ラグビーの課題だし考えていかないといけない。


――サクラフィフティーンの今後の予定は


直近はないが来年、(新しい国際大会)「WVX」が始まったり、それに伴う予選があったりするので、それに向けてのスケジュールを立てるが、その前に今回のレビューをしっかりしたい。


レスリー・マッケンジーヘッドコーチ

――マインドは変えられましたか?


全然できません!(日本語で) 正直、心の切り替えはあと1~2週間かかると思います


――もう少し、先まで自分で強化していきたいという気持ちは?


今、私がお伝えできることは自分のチームに対する気持ちが大きくて強いことです。このチームの強化プログラムに携わってきましたが、この中での選手たちの成長にすごく誇りを感じています。それだけ気持ちがある分、いろんなことにフラストレーションもありました。結果を見るとベストを出しましたがこういう結果になった。やるせなさというフラストレーションもありますがそういうふうに思う分、情熱があった。チームに対する気持ちが大きいし、その分、いろんな感情が今、私の中にあります。

――W杯では攻め急ぎがあったが、勝ちたい気持ちが強かった?


おっしゃたことの2つとも、選手たちは自問自答していたし、自覚していた。15人制のゲームの経験値がまだまだ足りない部分があります。国内でどのくらいのコンペティションのレベルでやれるのかが大きい。そういう環境でミスをして、自ら学ぶことを繰り返してやっていく。そしてテストマッチに向けて準備していくことが少なからずある。テストマッチはすごく大きなプレッシャーの中でパフォーマンスを発揮できるかにある。15人制の経験をどれだけ積めるか積めないかが結果などに反映してくる。

今回のチームはどの選手も一生懸命やっていて、W杯が初めての選手がいるが、なるべくW杯に近い形で合宿し練習やっていたが、本番ではいつもと違う、本当の相手と戦ったとき、相手は15人制に(長く)身を置いている分、冷静で、いつもと同じ反応で試合に臨むことができていた。そこに対して私達のチームが対峙していかないといけないところがあった。


――国内、国外ともにもっとチャレンジすることがある 


15人制はもっともっとやれるし、もっと15人制のプログラムに参加していき、どういったものが大事かもっと明確に打ち出すことがW杯の結果にもつながっていくし、結果の意味にもつながっていく。それが、今後のサクラフィフティーンの成長につながると思います。


――プール4位。1勝もできなかったがコーチとしてポジティブな面は

昨日のイタリア戦のディフェンスは素晴らしかった。イタリアは(大会直前に)フランスに勝つような(世界ランキング)2位、3位を争う素晴らしいチームです。経験もフィジカルもあるイタリアに対して効果的にディフェンスができた。(サクラフィフティーンは)フェイズごとに丁寧にやっていた。誇れるものだと思います。

選手は身体ボロボロで疲れているが、あれだけのディフェンスをやってくれたことを嬉しく思います。あれだけディフェンスにプレッシャーをかけられたので、どちらかというとキックに頼る方向に行かせた。最後のトライはフラストレーションを感じましたが、ハーフタイムにも選手に「ワールドクラス(のディフェンス)だよ!」と声をかけました。

――23,24歳の若い選手が多かった 次のW杯まであと3年しかないが期待できるのでは?


日本代表には若い選手がたくさんいるが、ポイントは今回のW杯でどんな気づきを得て、持ち帰って消化してつなげていくか。個人の選手の力量や消化能力によるが、ここから選手、チームはもっと強化しないといけない、強くならないといけない、パワフルになり、ゲーム理解を深めて、マネジメント力も高めていかないといけない。

そういうことをやっていく中で 今回の気づきの中で選手たちが個々にやれるかやれないか(が大事)。基本的には素晴らしくてエキサイティングな若い選手がたくさんいるので次を楽しみにしていただいてもいいかと思います。


――海外経験を踏んだ選手の経験がどんなプラスになった?


海外経験を積んだ選手をチームに迎えられるのはエキサイティングなことでした。自信や気づき、日本を離れてわかったことの価値など海外の経験を釜石で語ってもらう機会がありました。

今後はいろんなラグビーをやっていく中で、フィジカル、テクニカル、戦術でもコンペティションでそれ相応の中でやっていくことが大事だと考えたときに、ずっと日本だけで過ごすのはもったいないし、追求するには難しい環境なのかなと思う。次世代を育てることを考えると、ゲーム経験、ゲーム理解を培うために、ある程度、海外の経験を選手になんらかの積んでもらうことがいいのかなと思います。


――W杯大会中に海外クラブから日本人選手への勧誘などはありますか?


(W杯前に海外に行った選手)自分が紹介したというより、私がイングリッシュスピーカーなので、手っ取り早かっただけです。意図的に特定の選手を送ったわけではない。つないだ程度のレベルです。

海外に行った選手が所属していたチームからポジティブなフィードバックが得られています。どのチームも選手を気に入ってくれていて、スキル、日本人の細やかさ、彼女たちのプロフェッショナルさなど、そういったところがチームにとって新しい価値だったというとこで、それを踏まえて、どこのクラブ、他にも日本の選手と契約することに非常に高い興味、感心を持っている。

今回の大会を通じて、割と多くの声として、日本人の選手のオファーや迎え入れの機会に感心があるとかなりたくさんあると聞いています。私自身も驚いているがポジティブなことだと思います。日本人の選手たちは、世界の女子ラグビーの中で、すばらしいロールモデルになっていると感じています。

――W杯を経て、個人とチームとして学び、成長したことはありますか?


私自身のことは、ここから数ヶ月かけて、内省して明確にしていかないといけないことかなと思います。個人的なことを言うのであれば 選手が今大会のプレッシャーの大きさを知らず知らずに低く見積もっていた。

熱意もある分、周りの応援を全部背負って、プレッシャーになる部分が、私が思っていた以上あったと感じていた。良い方向に転じるなり、可能な限り取り除くことは コーチとして必要なことだと思っています。そういうことも含めて、カルチャーであったりするので、限られた時間で、ここまでできたことはすごいことだと思う一方で、そういったところで長い目で変えていかないといけないと思う。 

チームとしてはフィジカルの足りなさが目に見えたと思います。ノックアウトステージ(ベスト8)に進むことを今後目指すべきだと思うので、もう少し サイズのある選手を発掘してリクルートしていくことをやっていかないといけないと感じている。選手たちは80分間、あきらめることなく、勇敢に果敢にずっと戦い続けていた。もっと強いサイズのある選手が次、その次のサイクルでかかえていかないといけないと思います。

もうちょっと、レベルの高いところで、コンペティションをやってチャレンジしていけるように大会や試合を、計画的に予定を立てていくべきだし。合宿をやっていくべきだし、国内でやれること、海外でやっていくことを明確していくことの大事さも感じています。


――フィジカルが問題と話しましたが、前回大会からそこが成長した部分ではないのか?


大きさだけでなく、敏捷性も含めてですがフィジカリティーはすごく成長した部分ではあると思います。フィジカリティーと一言で言う中で、もっと力強く、もっとパワフルに、もっと動けるようになれると思っている。チームを強化する中でもっと考えていくべきです。
プログラムの改善や合宿や食事を見直すといったいろいろなことができたが、限られた時間で優先順位をつけたときに、手をつけられなかった点もある。

背をもっと高くすることはできないが、強くすることはまだ手を加えることができる部分だと思います。身長だけでなく、サイズといったときに、いろんなアスリートが日本にいる中で、日本の女子ラグビーがフィジカリティーを上げるために、フィジカリティーな選手を求めていることはもっとアピールすべきだと思います。今回、強豪国の中でプロフェッショナルな環境があり、サイズ、体格でふるいにかけられて(代表選手に)選ばれている。それに対して、日本は遅れを取っているし、入り口が違うのかもしれません。そこを理解して自分たちができる範囲で踏み込んで、何か改善したり、もっと取り組むことができると思います。

ゲームプレーももっと自分たちにあった特性にアジャストすべきだが、一方でそういう道も選べるのではないかとも思います。日本はスキル面が強みであることは昔からあるが、そういった意味では、世界各国がどんどん良くなり、追いついてきている。

日本だけがスキルレベルが高い時代ではなくなってきているのは明白なので、日本ももっと取り組んでいかないといけない。

(世界のラグビーは)スキルレベルではキャッチ、パス、ディシジョンメイキングが過去のW杯よりレベルが上がっています。その背景には、コンディショングフィットネスが上がっていることがあり、世界各地で、良い意味でプロ化してきて、よりフィットしたアスリートが過去に比べて出てきている。それは見ていてとてもエキサイティングだと思います

――イタリア戦当日の夜、チームで何かしたりしたのですか? 


昨日の試合後、特別なことはわかっていました。イタリア戦後、会場でカナダ対アメリカ を観戦して、ご飯を食べて、飲んで、カラオケにいきました。あれだけ大きな試合に対して、そういったところから離れるためやりました


――南主将への評価を


2019年に、2017年大会の経験も踏まえて、私がキャプテンに選びました。言わなければいけないこともちゃんといえるし自信も備えていた。ゲーム理解、リーダーとしての成長など、ずっとすごいなと思っていました。周りを鼓舞して、声を発してチームをリードしてくれた。いつも誠実に私にもきちんと向き合って、人の話を聞けるし質問もできる。人間性が素晴らしかった。願わくば、(今までの)キャプテンとしての役割に誇りを持っていてくれたらなと思います。

彼女だけでなくて、スコッド全体として 今回のメンバーが次へのステップや今後の女子ラグビーをキャンパスに描くのであればどこへ向かっていくのかと、何を描きたいのか、きちんと見て、考えていくことが大事です。それをやるに上にあたって 南主将の経験やこれまで得たことが、そこに価値をもたらしてくれることは確実だと思うのでそういうことをやっていってほしい。そのためにお互いに情報を与え合って次に向けてやっていきたいと思っています。

記事検索

バックナンバー

メールアドレス
パスワード
ページのトップへ