三重パールズがアルカス・PTS合同チームに勝利し女子15人制全国選手権初優勝 | ラグビージャパン365

三重パールズがアルカス・PTS合同チームに勝利し女子15人制全国選手権初優勝

2021/02/26

文●大友信彦


2月21日、名古屋・瑞穂ラグビー場にて、2020年度の女子15人制ラグビー日本一を決める「第7回女子ラグビーフットボール選手権(会長杯)」が行われた。

大会は一昨季までは関東と関西の優勝チーム同士、2位チーム同士、3位チーム同士が対戦する形で行われてきたが、昨季は関東と関西から2チームずつが出場し、たすき掛けでトーナメントを行う形に変更。決勝は龍ケ崎グレースと横河武蔵野アルテミスターズという関東勢同士の対決となり、試合は7-7の同点で終了。いったんは抽選が行われてアルテミスターズの単独優勝と発表されたが、翌日になって改めて「両者優勝」が公式に発表された。

今季も当初は東西から2チームずつが出場して行う案を検討していたが、コロナ禍の影響で関西大会が実施されなかったことや、延期されていたワールドカップアジア予選が3月に組まれたこと(結果としては中止されたが)も考慮され、2月21日に東西の1位同士の一発勝負で行われることに決定。関東からは関東大会優勝のモーニングベアーズ(自衛隊体育学校とアルカス熊谷の合同チーム)、関西からは協会推薦で、サクラフィフティーン選手を多数擁する三重パールズが出場した。困難な状況の中で大会実現に尽力した関係各位、感染対策に細心の注意を払って大会への準備に励んだ両チームの選手・スタッフ各位を改めて称賛したい。

試合の登録メンバーは以下の通り 身長/体重/年齢/出身校 在籍先)【過去の主な所属チーム】☆はRWC2017出場★は2020-2021年女子日本代表候補

MEMBER_モーニングベアーズ

  • 1 小松崎菓鈴 154/60/20 自衛隊体育学校 常総学院
  • 2 公家明日香 163/69/26 アルカス熊谷 立正大(後藤衛生コンサルタント)
  • 3 藤本麻衣子 161/70/29 アルカス熊谷 木曽青峰高【横浜TKM】
  • 4 門脇桃子 165/63/26 アルカス熊谷 大東大一高-東京学芸大 埼玉りそな銀行
  • 5 葛西杏奈 172/72/25 自衛隊体育学校 仙台商★
  • 6 井口瑞穂 161/58/25 アルカス熊谷 立正大 岡部工務店
  • 7 田坂 藍 168/60/28 アルカス熊谷 日体大 赤城乳業☆
  • 8 黒川 碧 164/69/23 アルカス熊谷 石見智翠館-立正大 松坂屋建材
  • 9 山本久代 154/54/24 自衛隊体育学校 日本女子体育大 【東京フェニックス】
  • 10 藤春柚香 160/67/19 自衛隊体育学校 八戸工大一高
  • 11 本間美月 160/63/25 アルカス熊谷 中京大 丸和運輸機関 【名古屋レディース】★
  • 12 古田真菜 167/61/23 アルカス熊谷 筑紫高-立正大 NTTファシリティーズ★
  • 13 伊藤 睦 161/62/23 自衛隊体育学校 名取北高
  • 14 谷口令子 166/65/28 アルカス熊谷 鎌倉学園高-東京学芸大 凸版印刷★☆
  • 15 平山 愛 155/60/28 自衛隊体育学校 桐生市立商☆
  • 16 谷山美典 165/60/21 アルカス熊谷 福岡-立正大3年
  • 17 桑島彩花 164/68/24 自衛隊体育学校 高根沢高
  • 18 石井寿依 168/67/31 自衛隊体育学校 昭和学院短大
  • 19 西村蒼空 167/65/20 アルカス熊谷 追手門学院高-立正大2年★
  • 20 今釘小町 158/60/19 アルカス熊谷 石見智翠館高-立正大1年★
  • 21 阿部 恵 147/52/22 アルカス熊谷 石見智翠館高-立正大4年★
  • 22 鈴木陽子 150/54/27 アルカス熊谷 横浜南高-立正大 東日本メディコム★
  • MEMBER_三重パールズ

  • 1 鈴木侑晏 155/70/19 石見智翠館 九鬼産業
  • 2 舩橋那緒 158/66/25 流通科学大 (医社)主体会病院
  • 3 谷口琴美 163/75/25 日体大 住友電装★
  • 4 玉井希絵 168/78/28 関西学院大 パソナ★
  • 5 三輪里佳 157/62/20 石見智翠館 九鬼産業
  • 6 伊藤優希 163/63/24 筑紫-日体大 住友電装★
  • 7 末 結希 162/63/24 長崎南-東京学芸大 住友電装【アルカス熊谷】☆
  • 8 齋藤聖奈 164/73/28 大体大 住友電装【阿倍野ホーリーホック】★☆
  • 9 原仁以奈 150/58/28 市立船橋-拓大 丹青社【ラガールセブン】
  • 10 山本実 168/71/24 東海大相模-日体大 住友電装★☆
  • 11 三谷咲月 160/60/20 四日市メリノール学院-明星大
  • 12 片島佑果 165/66/31 愛知教育大 日商【ラガールセブンウエスト】
  • 13 ティティマ・ラヴィサ 163/60/32 フィジー (一社)PEARLS
  • 14 ジョージア・ダールズ 163/68/27 NZ (一社)PEARLS
  • 15 庵奥里愛 160/60/24 神戸甲北-日体大 住友電装★
  • 16 山本さやか 157/68/34 中京女子大 日商【名古屋レディース】
  • 17 和田萌里 153/63/21 朝明 住友電装
  • 18 菅原菜那 158/60/18 大阪緑涼高 日商
  • 19 渡辺桜子 152/55/19 金沢学園高 コスモ石油
  • 20 保井沙予 166/68/28 天理大 (医社)主体会病院
  • 21 山中侑香 156/61/28 東灘高 コスモ石油【兵庫県RSレディース】
  • SCOREBOARD

    第7回全国女子ラグビーフットボール選手権大会 決勝 2021.2.21 パロマ瑞穂G

    この試合、前半だけで2トライをあげるなどパールズを牽引したNo8齋藤聖奈主将

    この試合、前半だけで2トライをあげるなどパールズを牽引したNo8齋藤聖奈主将

    先手を取ったのはパールズだった。モーニングベアーズのキックオフからの自陣アタックで、一度はボールを奪われるが、相手のワイドパスが浮いたところにWTBジョージア・ダールズがプレッシャーをかけ、こぼれ球を足にかけて前進。相手陣22mライン左中間までドリブルで持ち込むとワイドに展開。SO山本実のパスからFL伊藤優希、No8齋藤聖奈、FL末結希とFW第3列陣が軽快にパスをつなぎ、最後は末からリターンパスを受けた齋藤が右中間に先制トライ。キックオフから1分15秒をかけてのノーホイッスルトライで先制すると、SO山本実がコンバージョンを蹴り込みパールズが7点を先行する。

    勢いに乗ったパールズはさらに点を重ねる。5分、7人制と15人制の両方でフィジー代表経験を持つCTBティティマ・ラヴィサのビッグタックルでボールを奪い、PKを獲得して左ゴール前ラインアウトからモールを一気に押し込みHO舩橋那緒が押さえる。そして左中間からのコンバージョンをSO山本が鮮やかに決めるのだ。

    従来の女子ラグビーでは、真ん中以外からゴールキックが入ることはきわめて希なことだった。プロキッキングコーチの君島良夫さんの主宰する「JEK」でキックを磨いた成果が、従来の女子ラグビーの常識なら10点差だった展開に「14点」という大きなアドバンテージを与えた。

    そこからはモーニングベアーズもじわじわと反撃するが、フェイズを重ねるうちにパールズが勢いを盛り返し、ターンオーバーあるいは相手ミスを誘う展開が繰り返される。関西大会がなくなり、試合が行われる見通しがなかなか立たない状況に置かれたパールズだったが、そんなタフな環境で厳しい練習に取り組んできた成果が、フィジカル・メンタルの両面でひとつひとつのタックルに、ブレイクダウンに反映されていた気がする。

    中でも印象的だったのはパールズPR鈴木侑晏のフィジカルストレングスだ。タックルもだが、ボールを持ったとき、相手タックルを受けながらでも前進する力がすごい。石見智翠館高2年時には第1回全国U18女子セブンズでMVPを受賞。年末のU18花園15人制でもパワフルなトライをあげ、女子ラグビー界では知られた存在だったが、2020年の日本代表候補には声がかからず、PRでは石見智翠館で同期だった日体大の小牧日菜多、関東学院六浦から日体大に進学した牛嶋菜々子らが合宿に招集された……そんなことにも刺激を受けていたかもしれない。山本実のゴールキックからも、鈴木侑晏の突進からも、やっと試合ができた喜びと、ここで準備してきた自分のパフォーマンスを見せたいというポジティブなエネルギーが伝わってきた。

    密集からパスアウトするパールズSH原仁以奈

    密集からパスアウトするパールズSH原仁以奈

    もうひとり、印象的な輝きを見せたのがパールズのSH原仁以奈だ。鈴木や齋藤聖奈らがパワフルに前進し、あるいはBKのテイマィマ・ラヴィサやジョージア・ダールズが外のスペースでビッグゲインを果たしたときも、密集へいち早く到着しては素早くパスをさばき、モーニングベアーズのディフェンスを攪乱した。

    福岡の草ケ江ヤングラガーズで楕円球を追い始め、高校でもラグビーをする環境を求めて千葉の市立船橋へ進学し、拓大でもラグビー部に籍を置きながらラガールセブンでプレー。ラガールセブン解散後は自身の仕事とプレーを両立できる場を求めて三重パールズへ移籍……女子ラグビー発展途上期に、自身の進路を開拓してきた原は、実はこの大会を最後に現役引退を決意していた。この日の原のプレーからは、一瞬も立ち止まっていたくない、そんな胸の叫びが聞こえてきそうだった。

    オフロードパスを出すパールズCTBティティマ・ラヴィサ

    オフロードパスを出すパールズCTBティティマ・ラヴィサ

    試合はウォーターブレイクをはさみ(この日は全国的に季節外れの暖かさに包まれていた)、25分、ハーフウェー付近でのFL末結希のターンオーバーからの速攻でFL伊藤優希、FB庵奥里愛がゲインしてモーニングベアーズゴール前に攻め込み、反則を誘うと山本実がPG。さらに35分にもラヴィサとダールズのパワフルな走りで相手ゴール前に攻め込むとフェイズを重ね、最後は背後からFL末のプッシュを受けたNo8齋藤聖奈がゴールラインを越え2本目のトライ。

    ここでも山本が確実にコンバージョンを決める。トライを重ねても緩まず、途切れることのない得点ラッシュに、試合がない中でディシプリンを高く保ってきたチームの意識の高さが透けて見えた(と同時に、自分たちの手の内を一切見せることなく、相手の分析をじっくりして臨んだ周到さも窺えたのだが…)

    モールを推すモーニングベアーズと耐えるパールズ

    モールを推すモーニングベアーズと耐えるパールズ

    モーニングベアーズも反撃を試みるが、フェイズを重ねている間にじわじわとプレッシャーを受け、攻撃が続かないまま前半を終了。前半はパールズが24-0と大きくリードした。

    突破を図るNo8黒川碧

    突破を図るNo8黒川碧

    後半はパールズのキックオフで試合が始まった。モーニングベアーズとしては、どうしても後半最初のスコアがほしい。キックオフボールを持ったWTB本間美月が思いきってカウンターを仕掛ける。現在の所属はアルカスだが名古屋レディース育ちの本間にとって瑞穂は走り慣れたホームグラウンド。芝の感触もすべてわかっているはず……だったがこの日は少し勝手が違ったようだ。パールズのWTBジョージア・ダールズが本間をがっちり捕まえて離さず、動きを抑え、モールアンプレアブルの判定でパールズのスクラムに。パールズの選手が一斉に喜ぶ様子に、後半の入りに集中して臨んだチームの意思統一が窺えた。

    このスクラムから攻め返し、相手ゴール前に攻め込んだパールズは5分、スクラムから左に展開し、後半からWTBに入ったばかりの保井沙予が左隅へ飛び込みトライ。2019年太陽生命セブンズシリーズ東京大会でMVPを獲得しながらその大会で膝を痛め、長く競技からの離脱を強いられていたパワフルランナーがみごとな復活トライ。そして、左隅からの難しいコンバージョンを山本が、低い弾道の強いキックで鮮やかに決めるのだ。男子でも、トップリーグでも、この位置から決める選手はなかなかいない。山本のコンバージョンはパールズのみならず、サクラフィフティーンにとっても頼もしい武器になりそうだ。

    モールから抜け出すモーニングベアーズHO公家明日香主将

    モールから抜け出すモーニングベアーズHO公家明日香主将

    とはいえ、モーニングベアーズもやられっぱなしではいられない。その意地が実を結んだのは後半9分だ。相手ゴール前に攻め込んで得たスクラム。小松崎、公家、藤本のフロントロートリオを軸に、カチッと固まったパックがパールズを押し込むと右⑧⑨のサインプレー。No8黒川からSH阿部恵にボールが渡った横へ走り込んだCTB古田真菜がパスを受け取ってゴールポスト右に飛び込んだ。49分かけてようやくあげた初トライ。だがこのコンバージョンをFB平山は外してしまう。

    平山は関東大会では得点王に輝いた正確なキック力の持ち主だ。地上戦での予想以上の消耗、点差によるプレッシャー、相手キッカーである山本実のキックの正確さ……いくつもの要素が、日本女子有数のキッカーの精度を狂わせたのだろう。

    ようやく初トライをあげ、5-31と反撃を開始したモーニングベアーズだったが、そこから勢いに乗ることは残念ながら叶わなかった。

    流れを相手に渡さない三重パールズの安定感――それを支えていたのが、やはりSO山本実の多彩なキックだ。大きくリードしたことで、相手を後ろに走らせ消耗させるキックがより効果的かつ効率的に使える状況が生まれていた。実際、59分には山本のキックで相手陣に攻め込み、ディフェンスで齋藤聖奈のタックルからボールを奪うとすぐに展開。左WTBの位置に入っていた保井沙予が再びトライを決める。

    スコアはこれで36-5。左隅の難しいコンバージョンを山本はこの日初めて外してしまうが、パールズの勢いはもう止まらなかった。交代でピッチに入る山本さやか、山中侑香らもエネルギーをチームに注入。ピッチを走り回る運動量でも、笛が鳴ったときに次のセットに入る準備の早さでもモーニングベアーズを上回った。

    後半31分には、相手陣に攻め込んだ味方のパスが乱れたところで右WTBジョージア・ダールズが戻ってボールを拾うや反転、プレスしてきた相手タックラーを鋭いステップで次々とかわして右中間に4人抜きのトライ。山本のコンバージョンは外れたが41-5までリードを広げた。

    後半投入され、モーニングベアーズのテンポアップに貢献したSH阿部恵

    後半投入され、モーニングベアーズのテンポアップに貢献したSH阿部恵

    だがモーニングベアーズは、劣勢の戦いでも最後まで闘志を失わなかった。後半36分にはリザーブからFW石井寿依、PR谷山美典。WTB鈴木陽子を一斉に投入する(この時間、パールズはWTBダールズに替わって入った渡辺桜子がSHに入り、原仁以奈がWTBに回っていた。同世代、同じSH、ほぼ同じサイズで長く鎬を削ってきた原と鈴木が図らずもWTBでマッチアップした場面には、女子ラグビーを長く見てきた目には感慨深いものがあった……)。

    タイムアップ後も攻め続けたモーニングベアーズは81分、LO葛西杏奈が右隅にトライ。10-41と追い上げたがそこまで。No8黒川碧のコンバージョンが外れると、ノーサイドのホイッスルが鳴った。

    優勝の賞状を受け取るパールズNo8齋藤聖奈主将

    優勝の賞状を受け取るパールズNo8齋藤聖奈主将

    関西勢の全国女子選手権(会長杯)優勝は史上初めて。過去の優勝チームは日体大、TPA(TKM、フェニックス、アルカスの合同チーム)、龍ケ崎グレースと横河武蔵野アルテミスターズの4チームのみだった。パールズは歴代5チーム目の優勝チームとなった。

    優勝カップ「会長杯」を受け取るパールズSO山本実副将

    優勝カップ「会長杯」を受け取るパールズSO山本実副将

     

    準優勝の表彰を受けるモーニングベアーズ公家明日香主将

    準優勝の表彰を受けるモーニングベアーズ公家明日香主将

    大会終了後の26日には、9月のRWC2021に向けた女子15人制日本代表候補和歌山合宿の参加メンバーが発表された。優勝した三重パールズからは、FW伊藤優希、齋藤聖奈、末結希、谷口琴美、玉井希絵、BK庵奥里愛、山本実の7人が、モーニングベアーズからはアルカス熊谷の鈴木陽子、谷口令子、古田真菜、本間美月、阿部恵、今釘小町、西村蒼空、自衛隊体育学校の葛西杏奈、平山愛が招集された。

    勝利を喜ぶパールズ。右から片島佑香、末結希、鈴木侑晏、齋藤聖奈ら

    勝利を喜ぶパールズ。右から片島佑香、末結希、鈴木侑晏、齋藤聖奈ら

    3月上旬に香港で予定されていたアジア予選は開催見送りが決定され、2月26日時点で代替日程は発表されていない。2月17日に行われた理事会後のブリーフィングで岩渕専務理事は「アジアラグビー連盟、ワールドラグビーとも、早いタイミングで結論を出さなければという認識は共有しています。3月にあるワールドラグビーの理事会で決断されると思います」と話した。
    国内女王を決める戦いが終わったのもつかの間、どんな結論が出ても対応できるよう、ワールドカップを目指す乙女たちは準備を続ける。

    この試合で現役を引退する原仁以奈をみんなで胴上げ

    この試合で現役を引退する原仁以奈をみんなで胴上げ

     

    優勝記念Tシャツに着替えたパールズ。円陣を組んでチームソングを歌いあげた

    優勝記念Tシャツに着替えたパールズ。円陣を組んでチームソングを歌いあげた

     

    大友信彦
    (おおとものぶひこ)

    1962年宮城県気仙沼市生まれ。気仙沼高校から早稲田大学第二文学部卒業。1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。’87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。

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