50回目のメモリアル大会を迎えているグビー日本選手権はついに決勝戦を迎え、2月24日(日)14時、東京・国立競技場でキックオフされる。最終決戦に勝ち上がったのは2年連続2冠&3年連続5回目の優勝を目指すサントリーサンゴリアスと、12シーズンぶり10度目の優勝を狙う神戸製鋼コベルコスティーラーズ(トップリーグ3位)となった。
サントリーの攻撃時間・機会をどれだけ少なくできるか・・・
今シーズン、すでに両者は2度対戦している。トップリーグ(TL)のリーグ戦ではサントリーが43-29、プレーオフ(PO)のセミファイナルでもサントリーが38-19で勝利した。ただ神戸製鋼は今シーズン、リーグ4位のトライ数(56)と攻撃力もさることながら、リーグ最少失点(255点)を誇るディフェンスも整備されている。そのため、今シーズン無敗のサントリーの攻撃時間、機会をどれだけ少なくするかが焦点となろう。
ただディフェンスで粘り、守り切るのではない。神戸製鋼の発想は逆である。PR/HO安江祥光はいう。「サントリーはアタックするとミスをしないのでディフェンス疲れをしてしまう。マイボールのキープ時間多くして相手にアタックさせないことが大事だと思う」
苑田右二HC(ヘッドコーチ)も考えは同じ。「(POの)セミファイナルで非常に良い入りをしたが、ペナルティーやハンドリングエラー、ターンオーバー含めて30回弱あったので、ボールを持って攻撃する時間が少なかった。そこを修正してボールをキープしてアタックする『ムービングラグビー』をしっかり準備して、決勝の舞台を思いっきり戦いたい」
神戸製鋼がミスやエラーを少なくし攻撃回数が増えれば、準決勝同様、ワールドカップの優勝を知る男、CTBジャック・フーリーが牽引するBK陣が決定的なプレーをする機会が増えよう。パナソニックから移籍して1年目、すっかりチームに馴染んでいる世界的CTBは「(南アフリカ代表でチームメイトだったサントリーSHフーリー・)デュプレアに(今シーズン負けている)借りを返したい」と意気込んでいる。また、1点を争うノックアウト形式のため、プレースキックやエリアマネジメントも大事。SO山本大介のキックも勝敗に大きく関わることになろう。
若手選手の成長も・・・分厚い選手層のサントリー
対する、2年連続2冠&日本選手権3連覇がかかったサントリーは標榜する「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」を貫くことは間違いない。準決勝のパナソニック戦は、相手のディフェンスのプレッシャーの前に「ダブルタックルをされる機会が多かった」(大久保直弥監督)が、3年目のNO8西川征克、2年目のWTB村田大志がトライを挙げるなど試合の流れを決める活躍を見せた。
今シーズンから日本代表を率いるエディー・ジョーンズ氏の後を継いだ就任1年目の大久保監督は「『アグレッシブ・アタッキング・ラグビー』を文化として根付かせたい」として、チーム全体の4割ほどを占める1~3年の若手を「SOS(ソス)=Seeds(種)of Sungoliath」と名付けて、育成に力を入れた。若手2人の躍動はまさしく監督の手腕と言えるところだろう。
今シーズン最後の決戦に向けても大久保監督は「この40週間、いかにボールを継続してアタックできるか、そのためのトレーニングをし続けていたので体力には自信がある。ベストゲームを決勝でしたい」と自信をのぞかせた。
もちろんPOセミファイナルよろしく、若手だけでなくハーフ団にも注目が集まる。SHフーリー・デュプレアとSO小野晃征でゲームメイクし、勝負所でSH日和佐篤とSOトゥシ・ピシの2人を投入し、試合のテンポを上げてトライを狙ってくるだろう。またジャッカルの世界的名手で、2年連続TLのMVPに輝いたFLジョージ・スミスの攻守に渡っての存在感は群を抜いている。
アタッキングラグビーが持ち味の両チーム。トライの取り合いになることは間違いないだろう。最後まで、ミスを少なく攻撃的な姿勢を貫くことができたチームが、きっと日本一の栄冠は輝くはずだ。
斉藤健仁 スポーツライター。1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。印刷会社の営業を経て独立。サッカーやラグビー等フットボールを中心に執筆する。現在はタグラグビーを少しプレー。過去にトップリーグ2チームのWEBサイトの執筆を担当するなどトップリーグ、日本代表を中心に取材。プロフィールページへ |