2012年12月2日。臙脂と紫紺。縦と横。対照的なプレースタイルとカルチャーを持つライバル同士の戦いが、節目を迎える。1923(大正12)年の初対決から89年。毎年12月最初の日曜日に行われる早明戦と、大学選手権での対決をあわせ、両雄の激突は100回目を迎えるのだ。
名門の対決。伝統の対決。
その魅力は、今も多くの人を引きつける。
しかし、大学ラグビーを、早明戦を取り巻く環境は変化し続けている。2004年12月、初対決から80回目の定期戦を迎えた早明戦に寄せて、大友信彦氏が書いた一文を、ここに再録する。
早慶戦とは。そう問われたある年の早大キャプテンは答えた。
「早稲田民族と慶應民族の戦いです」
発言者が、実は高校までは、慶應義塾と並び称される私立のお坊ちゃん学校出身だったりする事実の面白さはこの際置いておく。
早慶戦とは民族の戦いである。ここでいう民族とは出身が都会か田舎かとか、財布の軽重、ファッションの洗練度や生活圈などと思ってもらって構わない。というか、その象徴としての旱慶のイメージそのものである。「例外もいるぞホラ慶應の×番」とか「授業料は今じゃワセダの方が高いゾ」とか、そういう具体的なことではない。それゆえ、早慶両校と関係なくあらゆる人が、どちらかのイメージに肩入れし、応援することができる。
早明戦とは
では早明戦とは。
件の早大キャプテンは答えた。
「体の小さい者は、大きい者に必ず負けるのか。という命題への挑戦なんです」
ラグビーにおいて体の大きいこと、力が強いことは、基本的に有利な要素だ。古の時代から、明大には体の大きい、フィジカルの強い選手が集う傾向があった。体の小さい、力で劣る側は、それでも勝利の果実を掴むために、低く鋭いプレーに磨きをがけ、走り込みを重ね、練りに練ったサインプレーを開発し、大きな者を倒してきた。その事実の積み重ねが、また新たな才能を呼び集めるのだ。
「ワセダでは体の小さな選手でもチャンスを掴める」
「大きな者を倒すロマンに挑戦できる」
そして、その延長線には体の小さな日本人が、巨漢で固めたラグビー先進国のナショナルチームを破るという夢がある。