3日、国立競技場では関東大学ラグビー対抗戦、明治大学対早稲田大学の一戦が行われた。明治創部100周年ということで31915人の観客がスタジアムに駆けつけた。毎年接戦となる「早明戦」。今シーズンは序盤から明治が早稲田を圧倒する一方的な展開となった。
前半5分、明治は敵陣ゴール前のラインアウトからモールで押し込み、HO松下潤一郎が左隅に先制のトライ。さらに17分にCTB平翔太のPGが決まり8-0とリードを広げる。
21分、明治は敵陣22m手前でのマイボールスクラムからアタック。早稲田LO池本大喜がハイタックルで明治はPKを獲得する。この試合でゲームキャプテンを務めたLO山本嶺二郎はトライを選択。先制トライと同様にモールで押し込み、モールが割れたスペースに松下が走り込みトライ。平のゴールも決まり13-0と明治がリード。
これで勢いに乗った明治は連続トライでラッシュをかける。28分、自陣10m付近のマイボールラインアウトから、ショートサイドをついてWTB海老原琥珀がタッチラインぎりぎりを走り抜け大きくゲイン。SH萩原周がポイントをずらすとノーハーフの状態でSOの伊藤耕太郎がSHの役割を果たし、NO8木戸大士郎を当てて前進。さらにFWをあてポイントずらす。今度は萩原が戻り逆サイドにもう一度FWを当てる。早稲田BKのDFが内によりアウトサイドにスペースができたところで、伊藤がアウトサイドへ展開するも早稲田DFに捕まる。
今度は左サイドにフェイズを重ね、お互い我慢の時間が続く。明治がボールをキープして迎えた12フェイズ目、早稲田CTB岡﨑颯馬が明治FB池戸将太郎に詰めてくるもオフロードで伊藤につながると1対2の局面ができる。伊藤から大外で待っていたWTB安田昂平にラストパスがつながる。安田がスピードと強さで早稲田FB伊藤大祐を交わし右隅にトライ。20-3とリードを広げる。
さらに39分、敵陣10m付近のマイボールスクラムからフェイズを重ねゴール前までボールを運んだ明治は、PR為房慶次朗が早稲田の隙をついてラックサイドのボールをピックしてトライ。明治が早稲田を1PGに封じ込め27-3と圧倒して前半を折り返した。
後半になっても明治の勢いは止まらなかった。46分にはSO伊藤耕太郎が60分にはFB池戸将太郎がトライをきめ41-3とし試合を決めた。
前半からエンジン全開で飛ばしていた明治。大差が開いたこともあり、足が止まり始めた67分、ディフェンスラインのコネクトが切れたところ、早稲田のルーキー矢崎由高にトライを決められると状況が一変。「早明戦」特有の波乱の展開へ。
68分、自陣からボールをつなぐ早稲田。細かなパスをつなぎハーフウェイまでボールを戻すと敵陣10m付近でボールをもったHO佐藤健次がそのまま独走しトライ。41-17。
明治も直後のキックオフに対してプレッシャーをかけてマイボールにすると、FWで体をあてて内に寄り出した早稲田ディフェンスをかいくぐるように伊藤から秋濵とつないで安田が相手ディフェンダーをハンドオフして右隅にトライ。46-17と再び引き離す。
それでも早稲田は直後のキックオフ、敵陣22m付近でボールを奪うと、明治ディフェンスのコネクト切れて完全にスペースができたところをLO池本大喜がトライ46-24とする。
さらに76分、明治ディフェンスが個々で前に出てくるところ、正確なパススキルで早稲田が交わし、矢崎由高がハーフウェイ付近までボールを運び、FB伊藤大祐へのオフロードがつながりトライ。46-31とさらに追い上げる。これで終わらない。
78分、自陣ゴール前10mから伊藤大祐がビッグゲイン。一気に敵陣までボールを運ぶと佐藤健次がトライ。46-38とついに8点差とする。ロスタイムは8分。早稲田に逆転のチャンスが見えてくる。
しかし81分(ランニングタイム)、この試合ゲームキャプテンを務めたLO山本嶺二郎がラックでファイトをかける。早稲田の一瞬の隙をついてラックを剥がすと、SH登根大斗がトライ。さらに85分、伊藤耕太郎の背後から入ってきた海老澤琥珀が勝利を決めるトライ。
後半もつれた試合は58-38で明治が勝利を収め、明治は対抗戦2位として選手権出場することとなった。初戦は23日、流経大と筑波大の勝者との初戦を迎える。
敗れた早稲田は17日に初戦を迎え、法政大(関東リーグ戦3位)と戦う。勝利すると京都産業大学(関西リーグ1位)に挑む。
明治大学 神鳥裕之監督
国立競技場という素晴らしい場所で早稲田大学さんという素晴らしい相手とこういった早明戦ができたということは、非常にありがたく感じています。試合に関しては、もう本当にこれぞ早明戦というようなゲームになりました。
本当に簡単に諦めない早稲田さんの素晴らしいアタックと、攻撃と粘り強さとこういったところで、ゲーム序盤の内容とはまた違う景色が後半あったかなと。ゲームの前から必ず苦しい時間帯もあるということを伝えながら準備してきましたので、そういった点では最後、しっかりトライを取り返して勝ち切れたということは選手たちの成長につながったかなと思います。
次からは負けたら終わりという厳しい試合になりますのでさらにレベルアップして成長していきたいと思います。
――選手権までの計画について
そんなに新しくやることはもうこのタイミングではないと思いますので、今やっていることをしっかり磨きあげていくというところと、やっぱり結果として30失点近く後半してしまったということはしっかり反省しなければいけないというところです。
今(山本)嶺二郎が言うように、体力的な部分というよりかはもう少しチームの中でゲームの展開とか、コネクションであったりとかコミュニケーションのところを80分間しっかり維持させていくことが重要なのかなと思っています。繰り返しになりますけれども、今まで積み上げてきたものをしっかりと磨き上げていく、そういったことに尽きるかなと思います。
明治大学 山本嶺二郎ゲームキャプテン
このような素晴らしい舞台で早稲田大学という素晴らしい相手と試合できることに感謝したいと思います。試合内容は前半、明治が優位にたったんですけども後半、最後早稲田さんのプライドがすごく見えた内容だったかなと思います。ただそこで、少し時間はかかってしまったんですけど、流れを断ち切って最後トライを取りきって勝ちきったのは今後の成長につながると思います。この後の選手権に向けて、もう一度修正して優勝できるように臨みたいと思います。
――前半、接点やゴールデンメーターでのアタックが良かった
早稲田さんのBKというのは、強力だと思っていますが、明治のBKも取り切る力があると思うのでFWから常に前に出続けようと話をしていました。最初(のトライを)モールで取り切れたというのはすごく自信になりましたし、最初はペナルティー(を獲得した場面で)PGではなくてタッチを選択したところは、僕自身、今後の自信になってきますし、明治FW全体の自信につながっているので良かった。
――終盤早稲田に連続トライを取られたところ体力的にはどうだったか?
今回の試合のテーマは「オールアウト」ということで、前半の最初から全力でやりきったので後半最後の方に疲れが見えてきたんですけど、全員走り切れたかなと思っています。あとはコミュニケーションの部分だったり、相手の外に展開するアタックに対して、どうディフェンスするかというのを話すだけだったので、たしかに体力的に厳しい部分あったんですけど、そこに不安はなかったと思います。
――今日はゲームキャプテンとしてどういうことを意識してチームを束ねていたか
前節からキャプテン不在で僕がゲームキャプテンを務めさせていただいているんですけど、変わらずフィールド(内の)15人、すごく喋ってくれるメンバーが多いので、細かいところはその選手たちに任せて、最後、バラバラになりがちなところをまとめるということを常に意識していました。
――今シーズンは『モメンタム』というキーワードを掲げて前に出ることを意識されていますが、今日の試合ではどうだったか
早稲田さんのディフェンスが流してくるというふうに分析していたので、どんどん縦についていこうというふうに試合の2週間前からやってきたので、そういう意味では、開いているスペースというわけじゃなかったんですけど、1対1の状況を作って、そこで縦にモメンタム作るというところはできていたかなと思います。
早稲田大学 大田尾竜彦監督
今日の試合に関しては、やってはいけないというか、一番恐れていたシナリオになってしまった。この試合を経て、自分たちの強み、弱みがハッキリしたので、修正して選手権に臨むにあたり、いい試練といい経験になったと思います。
――コリジョンが悪かった要因は
我々のディフェンスに対して、明治さんがやることが特に前半徹底していて、シンプルだった。ボールを長くもたれてからコンタクトするシーンが多くて、トイメンが決められなかった。自分たちのコンタクトが弱くなかったというよりも、対策されたときに次、どうするか。
そこを改善できたらというところが多かったので、すべてが何かダメというよりも、どういう風にコリジョンに行くのか徹底したい。前々回、前回、こちらとしてはコンタクトの手応えがあって、オプションの迷いとかもあったのかな。身体を鍛えてきたとかコリジョンを今まで鍛えていなかったら、ここから選手権に向けてどうすることもできないのですが、そこをやってきたので切り口を変えていくだけだと思うので自信を持ってやっていきたい。
早稲田大学 伊藤大祐キャプテン
やっぱり勝ちたかった試合で、特に前半、いかれた部分がすべてかなと思う。もう1回、選手権まで時間があるので、自分たちのミスで取られた得点と、そうじゃないところを反省して、もう1回、うまくどっちも勝ち上がったら同じ舞台でできるので1戦、1戦、準備したい。特に前半の22mに入ってからの明治の勢い、コンタクトの状況で、相手が強かったどうこうではなく、自分たちでやりたかった接点でのバトルが、この試合、すべていかれた原因かな。そこが一番大きく、インパクトとしては残っています。
――大学選手権に向けて
ここからノックアウトで、1戦1戦、チームとして1年間やってきたことを、もう1回ぶらさずに信じてやらないといけない。僕自身の良し悪しでチームが変わると思うので、今日も良いところ悪いところハッキリ出た試合なので、自分自身、もう1回ギアを上げて選手権に臨みたいと思います。
――前半のパフォーマンスに関して
前半に関しては、少しチームとしてゲームコントロールを久富とやりながら、明治の方が強いとわかっていたので、チャレンジャーとしてやろうとしたが、判断が保守的になった。マインド、メンタルの面で、チャレンジャーとしての姿勢ではなかったかなと思います。結果論ですが。ここから自分たちは上がっていかないといけないチームなので、もう1回チャレンジャーとして、アタックするマインドをもってやりたい。