3月7日から熊谷合宿を行っているラグビー女子7人制日本代表候補の山中美緒(名古屋レディース)と小出深冬(アルカス熊谷)がオンライン取材に応じた。2人はともに、リオ五輪を経験。「もう一度メダルを獲りたいという強い気持ちがあるからこそ、ここまで這い上がってきた」(山中)。「メダル獲得、全然手が届かなかった。全部足りなかった」(小出)。4年前の経験があるからこそ、愚直にメダル獲得のために挑戦している。
「もう一度メダルを獲りたいという強い気持ちがあるからこそ、ここまで這い上がってきた」山中美緒

熊谷で合宿をやっていますが毎週ゲーム形式の練習があり、そこに向けてパフォーマンスを出せるように日々トレーニングしています。ゲームコントロールだったり、戦術の部分など準備したことを出せるかやっています。
――トレーニングメンバー、チームとしての位置づけとして違いがあるのか。
トレーニングスコッドとして入っていますが、練習の差はなく、一緒にオリンピックに向けて頑張っています。ゲームの方でもSDSと試合をすることで自分たちにもいい刺激になるし、最後の最後まで誰が選ばれるのかわからないと思いますし、互いに切磋拓磨して、女子ラグビーの質をあげていきたい。

――リオに出場したメンバーも
もう一度 東京五輪でメダルを獲りたいという強い気持ちがあるからこそ、ここまで這い上がってきました。リオのメンバーも出ていないメンバーもそこの思いは一緒だと思います。
――練習試合はこれまで何回やっていますか。
先週に1回、今週も金曜日にゲーム形式の練習試合を演る予定です。今まではチーム内で紅白戦をやってきた。他のメンバーとやることで、チームで準備してきたセットアタックを試すことができる。そこでうまくいかなかったことをどう修正したらいいか話をしながらすすめています。
――リオの時と、今のチーム進歩できていることは
それぞれが自分に必要な課題に取り組む時間が増えた。自主性が備わったと思います。
「全員でアタックして、全員で勝利したい」

――ハレマキリHCの印象
シンプルなフォーカスポイントやアドバイスを選手それぞれにかけてくれる。セットアタックからのクリエイティブさ、いろいろな攻め方があることを教えてもらっています。どうやってディフェンスを崩すかだったり、今まで通りガツンと行く時だったり、スペースを作って、スペースへボールを運ぶという部分を磨いていきたい。
――オリンピックをとるために世界のラグビーはどう変わったか。リオから。
世界的にも、スピードだったり、フィジカルはあがっている。私達がそこで勝つというより、出場している7人全員がアタックしたり、ディフェンスしたり、全員で勝利していきたい。

――今のチームの手応え
大分コミュニケーションがとれてきている。組織としてアタック・ディフェンスできている。疲れてきた時にそこが難しくなっている。14分間、組織で戦えるように準備をしていきたい。
――2016年の3月と今の3月に違いは?
メンバーも絞られていくと思いますが、ライバルではありますが、切磋拓磨しています。チームとしてのメダル獲得という目標に対して、そこはブレずにできていると思います。
――対外試合が出来ない状況。世界との距離をどうやってはかっているか。チーム内競争で何を武器に勝ち残っていきたいか。
海外の試合の映像を見たり、海外で行われた大会の映像見たりして、海外のチームが今どんな状況なのか確認しています。常に安定したパフォーマンスをだせるところで勝負していきたい。

――東京五輪が延期になった時の印象と、代表活動に合流したときの気持ち
怪我が多くてリハビリ生活が長かった。オリンピックが延期になった時に、まだまだパフォーマンスを上げるチャンス。ゲーム感覚を取り戻せるチャンスがあると思ってやってきました。
やっとスタートラインに立てたという気持ちでした。そこから勝負になりますが、ここに這い上がってきたのは、またチャンスをいただけたので、メンバーに選ばれて、大会でメダルを獲得するという目標を果たしていきたい。
「メダル獲得、全然手が届かなかった。全部足りなかった」小出深冬

今回の合宿はSDSと試合ができるということで、セットプレーに重きをおいて練習できているので試合に向けた準備ができていると感じています。アタック・ディフェンスともに2月合宿で準備してきたことをさらにブラッシュアップして、試合に生かしていこうというターゲットがあるので、全員が共通認識をもって合宿に臨むことができている。ミスもあり、まだ100点というわけではないですが、チームとしてチャレンジできている部分は自分たちの身になっているかなと思います。
――リオのあと、怪我だった。
リオのあと、膝の怪我をしっかり治すために10ヶ月ほど。腰の怪我は3ヶ月。肩の怪我で半年ほどリハビリ。一度アルカスに戻って、怪我が続いてきたことで自分の体に向き合えていなかったので体を作っていたので試合に出たのは2019年10月の国体が大きな大会では復帰戦でした。
――怪我の時、東京五輪への思いは
オリンピックでプレーするのは、ラグビー人生の中で大きな目標。そこはぶらさずにやっていたのですが、代表チームにいなければ世界と戦うことができない。アルカスでやるべきことをやって、自分が強みとしてアピールできる部分を増やしていって、ただただチャンスが来るのを待つというか、チャンスをもらえた時にそれを掴むための準備をしていました。
3月に入れなかったら、これがラストチャンスになるかもしれないとおもった。SDSの試合をチャンスをもらえたのはありがたいこと。まずはそこ、SDSの試合で結果を出すことを考えていました。

延期となったときは、正直、新たにチャンスがもらえる時間が増えたと思っていましたが、なかなか国内の試合もできず、個人練習や2・3人での練習しかできなかったので、どうやって練習すればいいか、長い時間かけて考えてやりました。
個々のスキルを伸ばす時間だと思いトレーニングしていました。自分の強みはスピードなので、スピード伸ばすことや、アジリティやフットワークはさらに磨きをかけていろんなスキルがだせることにフォーカスして練習していました。
その時は、山中、桑井選手と練習していました。公園で練習したり、坂道ダッシュをしたりしました。
チームとしてはメダル獲得 そこには全然手が届かなかった。何が足りなかったといえば、全部足りなかった。準備してきたことを本番に出すことが難しいということも身を持ってわかった大会でした。
個々として強くなることも大事ですが、これからはセレクションもあり、全員が出ることができるわけではないのでライバル間の争いもでてくると思いますが、そこはチームとして一つになって戦いに向かっていくことが大事。

2015年に行われたリオ五輪予選決勝・カザフスタン戦。ここまで6トライの小出はディフェンス3人を抜き去り決勝のトライを決めた
――前回のリオ最年少での出場でした。チームの役割
リオとの時は周りのお姉さま方に助けられていた。気づいたら上から何番目の存在。若い選手が増えた。若い選手に負けない思いもありますが、自分が助けてもらったように自分が助けなければならないと思っています。
ラグビースキルは高い選手が多いのでこのプレーはどうだったとか、前よりはするように心がけています。
――今のチームにリオのチームでよかったことを引き継ぎたいといったことはありますか。
今は環境の違いがありますが、リオの時は、今のチームに足りないというわけではないですが、ラグビーもラグビー以外のことも、お互いにいい意味での厳しさを要求していた。そこは年齢に関係なく、勝つために必要な厳しさは今のチームにも引き継いでいきたい。

――以前のスピードは戻っているか。それ以外の4年前より成長していることがあれば
スピードは怪我から明けたあとも、自分の弱みに向き合ってトレーニングしてきたので、不安なくできているので以前よりも良くなっている。4年前より、体重も増えて、コンタクトプレーではしっかり体をぶつけることができている。世界のプレーヤーと戦ってみてどのくらい通用するのか試してみたいです。
――世界の女子セブンズはどう変わっていると感じているか。
直接見たわけではないので、映像を見て客観的に感じていることですが、度の国もスピード、フィットネスは全体的にあがってきている。パスもキックも使って、世界的に、ボールが動くことが多くなってきた。
日本はパスの距離はNZに比べたら短い。全員が動いてパス。ボールを動かすのを日本の強みにしたい。まだまだミスがあってトライにつながらないこともありますが、そこの精度が上がれば日本の武器になると思います。