17日、ニッパツ三ツ沢競技場では、第104回全国高校ラグビー大会・神奈川県大会予選決勝、桐蔭学園と東海大相模の一戦が行われた。
桐蔭学園は昨年日本一となり、今シーズンは申驥世がキャプテンでチームを牽引。今季春の選抜では準決勝敗退するも関東大会では優勝、サニックスワールドユースではオーストラリアの高校との激戦を制し、大阪桐蔭とともに決勝進出。惜しくも敗れ準優勝だったがチームとして成長を果たした。夏のセブンズでは5大会ぶりの優勝を果たした。
東海大相模は近年稀に見る高い評価のチーム。選抜大会ではベスト8入りを果たした。全国大会でも十分通用する2校同士の戦いは序盤から緊迫感あふれる戦いとなった。
相模が自陣22m手前でノットリリースボールのペナルティを犯し桐蔭学園がチャンスを迎える。タッチに蹴り出しラインアウトからトライを狙うも、ボールを確保できず。相模がエリアを戻し桐蔭が再びトライを狙う。今度はBKに展開するがゴール直前でノックオン。相模ボールのスクラムとなりエリアを自陣10mまで戻す。
4分、桐蔭は敵陣10mのラインアウトからボールを展開し右オープンサイドへ展開。左に折り返してゲイン、フォローに入ったSH後藤快斗(3年)が先制のトライ。SO丹羽雄丸(3年)のゴールも決まって7-0。
ペースを掴んだ桐蔭が相模陣内で試合を進める。相模のペナルティに乗じて果敢にアタックを繰り返すも、相模も粘り強いディフェンスでスコアをさせない。10分、相模NO8藤久保陸(3年)が自陣22m手前でジャッカル。ようやく自陣を脱出。
相模は敵陣15m付近のラインアウトからアタック。ブレイクダウンで桐蔭がノットロールアウェイのペナルティ。相模はショットを選択し、SO長濱堅(3年)が落ち着いて決めて7-3。
さらに前半16分、桐蔭が自陣10m付近でオブストラクションのペナルティ。相模はここでもショットを選択。長濱が落ち着いてボールを決めて7-6とした。
点差を縮めた相模だったが、直後のキックオフからの攻防でダイレクトタッチでピンチを迎える。桐蔭は丁寧にボールを繋いでフェイズを重ねると、相模がオフフィートのペナルティ。桐蔭がアドバンテージをもったままアタックを継続。相模がさらにハイタックルのパネルティで桐蔭はショットを選択。丹羽が難なく決めて10-6とした。
追いかける相模はそこから敵陣での時間帯を作ることができるものの、ハンドリングエラーでボールを継続できずスコアにつなげることができない。さらに25分、相模はラインオフサイドで桐蔭がチャンスを迎える。桐蔭はこのチャンスをしっかりとものにし、ラインアウトからのドライビングモールでFL申驥世キャプテンがトライ。左隅からの難しい角度からのゴールを丹羽が確実に決めて17-6として前半を終えた。
後半は相模のキックオフで開始。後半3分、相模が自陣5m付近でペナルティ。桐蔭がタッチに蹴り出し敵陣22m付近でのラインアウトのチャンス。ここはボールを確保できず相模に一度は戻されるが、直後のラインアウトで相模がノックオン。22m付近で桐蔭ボールスクラムから左にワイドに展開。モメンタムを保ったままフェイズを重ねLO西野誠一朗(3年)がトライ。24-6とリードを広げた。
これ以上離されたくない相模は14分、敵陣22m内側のスクラムからFWで右に流れると、桐蔭のディフェンスラインにギャップができたところにボールを運び、最後はFB五島悠翔(3年)がトライ。24-11と追い上げを開始。
直後の17分、桐蔭はダイレクトキックのミス。相模が敵陣22m付近のラインアウト。左オープンサイドへ展開するも桐蔭の前に出るディフェンスでノックオン。チャンスを逸してしまう。
それでも22分、相模は敵陣ゴール前のマイボールスクラムから桐蔭ディフェンスが中央に集まったところで外へ展開。WTB福岡遼(2年)がトライを決める。長濱のゴールも決まり24-18と6点差に迫った。
試合残り時間は6分少々。追い上げられている桐蔭はキックオフからどんな戦いをするか。敵陣10mのラインアウトモール、SO丹羽が敵陣22m付近へのコンテストキック。攻める姿勢を見せた。28分、桐蔭は敵陣15m付近でペナルティを獲得するとショットを選択。残り時間を考え冷静に試合を運んだ。丹羽が確実に決めて27-18と9点差にして1トライ1ゴールでは届かない点差に引き離した。
残り30秒というレフェリーからのコール、相模のラストプレー、パスが乱れたところ桐蔭・丹羽がキック。自らボールをキャッチしてそのままゴール中央にトライ。34-18で試合終了。桐蔭学園が2年連続22回目の花園出場を決めた。
桐蔭学園 藤原秀之監督
今日は東海大相模さんはもう新人戦から強いということはまあ十分わかってましたし、選抜大会でもベスト8、サニックスでも非常にいい成績で来てましたので、この試合が一つのターゲットになるということはわかってました。
前半は相手のミスが多かったので幸いにしてうちがそれを拾ったという形になったと思います。前半2つ(トライを)取れたのは大きかったかなと思います。
(後半について)県内でこういう試合がなかったので、最後は絶対に1点を争う試合、シーソーゲームになるということはわかっていました。全国にいくチームはこういうところをしのいでいかなきゃならない。
今日の試合はお互いに成長できる試合だったんじゃないかなと思います。(花園に向けて)例年通り、(選手たちの)身体の状態がどうなのかを確認しながら選手、スタッフと考えていい景色を見れればいいなと思っています。
――今日のテーマは
向こうはFWに自信を持っているので、前半それに対してうちがどうやるかということをテーマにしていて、FW、BK、身体を当てていこうという感じでした。今日は前半FWが頑張っていましたし、ラインアウトからスコアにつながったので良かったですね。
――選手たちは焦っていた?
そうですね。やっぱり6点差のところでは焦っていたと思います。ああいうところをどう凌いでいくかは全国大会でも大事なところだったので、3点とって、最後トライを取るということは落ち着いているなと思います。
――相手のスクラムに対して
スクラムは強いということは想定していましたので、多分ああなるだろうなあと思っていましたね。大阪桐蔭にも押されていましたし。
――今シーズンは大阪桐蔭に2回負けていますがチームの状態はあがってきている?
まだ大阪桐蔭さんに勝つとかというレベルじゃないですし、全国大会で戦えるようなプレーを身につけていかなければいけないし、このようなプレーだと上位にいけないという感じでした。
――予選決勝で強い相手と戦えたこと
それが一番ですね。県内で強い相手と出来たことが次につながりますね。今季は国体があったり、怪我もあったりしたので秋の練習試合は組まなかったです。流経大柏さんとしか組まなかったですね。今年は大学にもいかなかったので、この後のスケジュールはスタッフと考えたいと思います。
――今日の試合でいうと課題は
CTBにはもっと仕事してほしかったですね。ボールを外側に振ってほしかったし、FBを走らせてもいいじゃないかなと思いました。身体的にはうちの方が動けていたし、FWも裏に出るケースが多かったので。
――申驥世キャプテンの怪我について
国体前の予選で怪我をしたので2ヶ月休ませました。そのときに後藤と西野にリーダーをやらせて大分成長しましたね。(バイスキャプテン)の古賀も夏合宿の怪我で休ませて、その間、彼ら2人でしんどい思いをしながら、もがけたのが良かった。
――連覇について
その位置にいないことは選手たちが一番良くわかっていますよ(苦笑)。今年は今年なんで、気負わず。もう上の先輩たちがすごいというのはわかっているので、自分たちのラグビーをするということに専念するんじゃないですかね。
桐蔭学園 FL申驥世キャプテン
今年も県決勝で全国トップレベルの東海大相模さんといい試合ができて感謝しています。相模さんは今年も強くて、自分たちが1年生の時、ここで負けて、2年生の時に勝って、3年生、自分たちの代ではどうするんだという話し合いをずっとしてきました。夏合宿が終わってから、この試合に絶対勝つということを目標にやってきたので本当に勝ててホッとしていますし、仲間が誇らしいです。
(後半追い上げられた場面では)ピッチの中でも絶対にこういう場面というのは来るから、そのための練習もしてきたから、ここは走ろうと話をしていました。何よりもこのスタンドで応援してくれた選手と保護者と学校の先生とかそういう声援がすごく聞こえてそれが自分たちの力になりました。
桐蔭学園 SO丹羽雄丸
(ゲームメイクは)ボールを大きく動かすことを意識してたんですけど、ミスもあってそれを助け合いながら60分間やりきれました。(キックの成功率は100%だったことは)練習してきたことをやっただけなんで、花園にむけてもう1度磨いてやっていきたい。
(花園では)決めたことを完璧に、今日のミスを修正しながら、ミスを少なくして継続してトライが取りたい。ボールを大きく早く展開してトライが取れるようにしたい。
桐蔭学園 SH後藤快斗
1年間自分たちがターゲットにしてきたので本当に勝てて今はホッとしています。負けた時は自分はリザーブで試合を見てました。あの試合は自分たちが決めたことが実行できなかったので、試合前にまず自分たちがやると決めたことをしっかり遂行してやろうと声をかけて試合に入りました。
(トライについて)自分の強みであるサポートのランコースということが出せたかなと思います。
いろいろと経験を積めて、プレー中の余裕と幅が増えたなと思います。花園へは今日の試合でも自分のミスが結構あったんで、しっかりそこは詰めていきたいです。
(SO丹羽とのコンビネーションは)雄丸は1年のときからずっとハーフ団やってきて、春はいなかったんですけど、同学園ということもありますしすごくやりやすいです。
(キャプテン、バイスキャプテンが負傷で代理でリーダーをやったことについて)国体の前の予選でキャプテンが負傷したので、自分とLO西野でやりました。高校に入ってリーダーやったことなかったんですけど、どれだけ大変化というのもわからなかったんですけど、やっぱり経験することで、驥世とか古賀の大変さがわかりました。彼らの手助けじゃないですけど、少しでも救いになれればいいなと思っています。
(リーダーとして言葉を発する立場になりますがそういうところは?)正直あんまり得意じゃないですけど、ポジションとしても、リーダーとしても指示を出すということはやっていかなればならないのでそこは割り切って、自分が見て、こうしてほしいなと思ったkとはちょっとした空き時間で伝えるようにしています。
(プレーにもプラスになった?)そうですね、ピッチでも声がけというのはすごく大事にしています。
(桐蔭に入った理由は)出身は熊本なんですけど、ヒガシ(東福岡)を倒したくて、あとは全国一を取るにはどういう高校がいいかということを考えて、あとは桐蔭のOBには素晴らしいSHが多いので、自分の成長になるんじゃないかと思って選びました。
(花園連覇はプレッシャーになる?)連覇についてはプレッシャーというよりも、先輩たちがくれた僕達へのチャンスだと思っています。自分たちの代で成し遂げていきたいです。今日の試合でも緊張はしましたけど、それで固くなってもいいプレーはできないので、自分の中で楽しむ、ラグビーをやっているのは楽しいからやっているので、まずは楽しむことが大事だと思って今日の試合も気持ちを込めて戦うことができました。