1月24日(金)、日本ラグビー協会は、将来の日本代表選手の育成を加速するためのプロジェクトである「ジャパン・タレント・スコッド(JTS)・プログラム2025」を2月から開始すると発表。そして日本代表を率いるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)ら日本代表のコーチ陣が参加し、2月12から14日の間、2回目の合宿が実施された。13日、強風の中、メディアに2時間ほど練習が公開されて、ジョーンズHC、選手たちがメディアに対応した。
2回目の合宿に参加したのはスコッド50名中(FW20名、BK12)、下記の32名だった(BK3名は招集したが、試験や体調不良で不参加)。毎回、合宿ごとにスコッド50名から35名ほどを呼ぶという
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朝から接点練習やトレーニング、ユニット練習、全体練習、夜にも座学を行う予定だという。今回の合宿を含めて国内7回の合宿を経て、4月にはU23日本代表を編成し、オーストラリア遠征も予定している。
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先週の第1回合宿はジョーンズHCが不参加だったが2回目の合宿から参加。全体練習終了後、ジョーンズHCが報道陣に対応し、あらためて今季のJTSプログラムの意図、目的などについて説明した。
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エディー・ジョーンズJC
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エディー・ジョーンズHC
――JTSの目的、今回どのような形でどのようなものを目指していているのでしょうか?
JTSは、おそらく日本(代表)が発足させた最も重要なプログラムのひとつでしょう。現在の世界のラグビーを見ると、トップ4チームとそれ以外のチームとの差は広がっています。
そして、本当に素晴らしい成績を残しているチームが若手選手の育成を推進して加速させているのは、決して偶然ではありません。日本では高校(日本代表)チームが強いことを知っています。私たちの高校チームは本当に強いです。
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2年前はアイルランド代表に勝っていましたし、私は、去年のイタリア代表戦の最後の最後での敗戦したのを覚えています。そのレベルでは互角に戦っているということです。しかしその次の4年間は、選手たちにとってのエリート育成がありません。
彼らは「大学のラグビー」をしています。非常にいいコンペティションではありますけど、エリート育成ではありません。そこで、私たちは、ジュニア日本代表チームの一員として、19歳から22歳までの若い選手たちに、オーストラリア、そして日本でも、ハイパフォーマンスなトレーニングとゲームを体験してもらうことを目指しています。以上がプログラムの概要です。
今年は「7つのキャンプ、3試合で構成されるオーストラリア遠征、国内2試合」
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――去年もJTSを行いましたが、改善したことはあるのか?
昨年は、基本的に1日だけのキャンプが2回だけでした。今年は7つのキャンプ、3試合で構成されるオーストラリア遠征、そして日本での試合が少なくとも2試合あるかもしれません。
ただ、私が彼らと過ごしたわずかこの2日間で、急速な改善が見られました。優秀な人材が不足しているわけではありません。問題は才能ではありません。才能を安定したプレーに結びつける能力です。
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――セレクションポリシーは?
そうですね、選考方針としては、日本代表としてプレーできる可能性のある選手を選ぶようにしています。つまり、日本代表としてプレーするには、才能があり、ある程度のタフさがあり、適応力も必要です。ですから、私たちはそのような基準でメンバーを選びました。
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――昨年は矢崎由高選手(早稲田大2年)がJTSから、そのまま日本代表になりました。この50人から 何人くらい昇格して欲しいのか、27年W杯には何人くらい選ばれてほしいでしょうか。
非常に良い質問ですね。今の時点で答えられる質問ではありません。(日本代表を発表する)5月の最後にはわかっている状態になっているでしょう。ここから日本代表としてプレーできるだけの実力を持つ選手を1人か2人輩出できれば、すぐにでも日本代表の選手層は厚くなるでしょう。おわかりのように、現在、リーグワンでは、日本人選手の出場時間は50%以下です。ですから、大学に集まる才能に目を向けて、その才能をより早く伸ばすことができれば、選択肢が増えることになります。
――それは具体的にはどんな選手をイメージしていますか?
通常、FWは成熟するのに時間がかかります。ですからBKにはよりチャンスがあります。確かに、ここには良いSHが数人います。私たちは10番の選手を何人か見ました。ポテンシャルのある選手や、強みを持つ選手もいると思います。
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ニール・ハットリー
――今回のメンバーに求めている姿勢は?
私は彼らにハングリー精神を持って欲しいのです。本当に、ボールを獲得したい、学びたいというハングリー精神を。彼らがプレーするとき、主体性を発揮して欲しいと思っています。そして、プレーするとき、彼らはタフであってほしいと思います。
――何年後の代表に? このプログラムは何年間かかる?
本当に良いプログラムとなるには3年くらいかかるでしょう。昨夜、私はあるスタッツを見たのですが、それは(アイルランドの)レンスターのものです。レンスターはヨーロッパで一番のチームです。
選手はレンスターのアカデミー出身が80%を占めています。首都ダブリンには16校あります。そんなに多い方じゃありませんが、少なくとも、その16校で世界最高峰のレンスターのチームの80%の選手を輩出するということなのです。
そして、そのレンスターチームの80%がアイルランド代表になり、そのアイルランド代表は世界最高峰のチームです。ですから、日本代表候補のジュニアの才能を最大限に引き出すことができれば、より優れた選手を育成できるチャンスがあるということです。
それこそが、私たちが探し求めるべきものなのです。日本代表ができないということはありません。
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――今年はJTSの期間が長くなったことで、どういうことにフォーカスするのか。
もちろん、ラグビーの知識や自己管理に重点を置くべきです。良いラグビー選手であるための最大の要素のひとつは、他人から指示されるのではなく、自分自身で身体のケアの方法を知っていることです。ですから、私たちは、彼らにコーチングを行い、身体のケアを行い、ラグビーの知識をより深め、そして、ラグビーを本当に愛してもらうために努力しています。
7回目のキャンプには福岡堅樹さんにきてもらいたいと思います。彼はトップレベルでラグビーと勉強を両立している、素晴らしい例だと思っています。
――選手たちの前で話をしてもらうのですが?
できればトレーニングさせたいなと思いますけど(苦笑)、ミーティングですね。
――身体のケアはしてもらわないのですか。
まだ医師免許持っていないと思いますが、でも今大学ではクラスでトップの成績だと聞いています。
――今回、JTSには高校生も入っています。彼らは高校代表にも入っています。また今回怪我などで入っていないメンバーもいますが。
高校代表の2人、小林と本山に関しては、U18の遠征に行ってもらおうと思っています。そして呼び戻すことができるのであればオーストラリア遠征に参加してもらいたいです。また大学選手権の決勝でケガをした選手が何人かいます。ですので、まだ何人かの選手は参加するかどうか話し合っています。
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本山佳龍
―― 今回の合宿で唯一参加したPR本山選手の評価をお願いします。
彼は有望な若手選手です。すでにテストマッチのラグビーができる体を持っているのは幸運です。今114kgですけど、もっと体重も増やせるような選手だと思いますし、彼はプレーするのに十分な体格を持っています。そして、もっと上手くなりたいという強い意欲を持っています。彼は常にプラスになる情報を探し求め、自分を鍛えています。
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――昨季、JTSに呼ばれたFB小野澤謙真選手(慶應義塾大学1年)については。
彼は入っていません。
――ジョーンズHCは、若手の育成と日本代表で結果を出すというタスクがあるが今年の目標は?
ゴールは常に全てのテストマッチで勝つことです。私たちはすべてのテストで勝ちたいと思っていますが、同時に、日本代表にとってより大きな役割を担う責任を感じています。若いタレントに目を向けなければ、優秀な人材は育たないでしょう。私たちは、今いるタレントをすべて育成しなければなりません。ウェールズ代表の現状を見てください。かつてトップ4だったチームが現在14連敗中です。その理由は、彼らの地域にあるアカデミーが大幅に削減されたためでした。つまり、タレントが出てこなくなってしまいました。
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ジャパン・タレント・スコッドプログラム予定
2月5日〜2月8日:合宿・トレーニング
2月12日〜2月14日:合宿・トレーニング
2月17~月18日:合宿・トレーニング
2月26日〜3月2日:合宿・トレーニング
3月7日〜3月8日:合宿・トレーニング
3月17日〜3月23日:合宿・トレーニング
3月29日〜4月1日:U23日本代表遠征事前合宿・トレーニング
4月1日〜4月16日:U23日本代表豪州遠征
取材当日参加予定選手(2月12日〜15日の合宿参加予定選手)
<FW 20名>
PR1
大塚 壮二郎(関西学院大 178cm,110kg 2004/7/5生)
檜山 蒼介(明治大 176cm,108kg 2004/7/26生)
弓部 智希(近畿大 173cm,100kg 2003/7/4生)
HO
高比良 恭介(明治大 176cm,103kg 2005/8/16生)
田中 京也(立命館大 175cm,95kg 2005/9/14生)
西野 帆平(明治大 176cm,104kg 2003/5/22生)
PR3
八田 優太(京都産業大 185cm,115kg 2004/4/5生)
本山 佳龍(長崎南山高 188cm,115kg 2006/12/26生)
山口 匠(明治大 180cm,120kg 2005/3/29生)
LO
石橋 チューカ(京都産業大 190cm,102kg 2004/4/10生)
磯部 俊太朗(筑波大 190cm,108kg 2004/7/14生)
栗原 大地(東洋大 192cm,102kg 2003/9/29生)
能勢 涼太郎(近畿大 197cm,108kg 2003/7/28生)
物部 耀大朗(明治大 192cm,116kg 2004/9/28生)
FL
亀井 秋穂(明治大 191cm,90kg 2004/10/27生)
太安 善明(天理大 176cm,96kg 2004/4/2生)
利川 桐生(明治大 181cm,103kg 2003/8/2生)
中森 真翔(筑波大 190cm,93kg 2005/12/24生)
No8
宮下 晃毅(法政大 185cm,100kg 2003/12/22生)
森山 海宇オスティン(東洋大 183cm,102kg 2003/9/23生)
BK 15名>
SH
髙木 城治(京都産業大 168cm,71kg 2004/9/11生)
村田 大和(京都産業大 168cm,73kg 2004/10/15生)
SO
伊藤 龍之介(明治大 172cm,77kg 2004/11/20生)
上ノ坊 駿介(天理大 183cm,86kg 2003/9/29生)
CTB
白井 瑛人(明治大 178cm,83kg 2005/10/22生)
平 翔太(明治大 178cm,94kg 2003/11/18生)
李 智寿(朝鮮大 180cm,82kg 2004/11/6生)
WB
海老澤 琥珀(明治大 173cm,81kg 2004/10/27生)
田中 健想(早稲田大 172cm,75kg 2005/8/7生)
武藤 航生(関西学院大 174cm,83kg 2004/3/23生)
FB
竹之下 仁吾(明治大 180cm,86kg 2004/6/11生)
増山 将(筑波大 177cm,80kg 2004/4/14生)