12月22日、相模原ギオンスタジアムでは、ジャパンラグビーリーグワン2024-25、三菱重工相模原ダイナボアーズがD2から昇格を果たした浦安D-rocksを迎えた。
ダイナボアーズの注目は今シーズン新加入のカート=リー・アレンゼ(南アフリカ代表)。世界トップクラスのパフォーマンスにホスト・相模原のファンは大きく期待を寄せた。
浦安はD1昇格後、初の公式戦、元スコットランド代表、クレイグ・レイドローHC体制でどんな戦いを見せるか、初陣を勝利で飾れるか。
この日の相模原はメインスタンドに向かって左から右に強い風が吹いていた。前半風上を選択したダイナボアーズがSOジェイムズ・グレイソンのPG3本、浦安もSOオテレ・ブラックのPG2本で9-6として迎えた前半32分、浦安は敵陣22m手前のスクラムでペナルティを獲得すると、直後のラインアウトからモールで押し込み、ダイナボアーズのディフェンスを引き付けるとSH飯沼蓮がBKに素早く展開。最後はWTB石井魁がトライ。逆転した浦安だったが、司令塔のSOブラックが右肩を痛め、途中交代を余儀なくされる。
後半5分、追いかけるダイナボアーズはWTBベン・ボルトリッジがハイタックルでイエローカードが出され14人に。48分、浦安は敵陣ゴール前のスクラムでペナルティを獲得。ショットを選択し、田村が落ち着いて決めて9-14とリードを広げた。
ダイナボアーズは51分、相手ペナルティから敵陣に侵入すると、ラインアウトからのドライビングモールを押し込みゴールに迫る。最後は密集からCTBバイフトニシオが同点のトライ。同点に追いついたダイナボアーズは57分、敵陣10m手前でペナルティを獲得すると、タッチに蹴り出しトライを狙いにいく。ラインアウトのチャンスを迎えるもモールアンプレヤブルで好機を逸してしまう。
それでも60分、FWのコリジョンで浦安に食い込み始めたダイナボアーズFWがチームを前進させ、スペースをつくると、今シーズンダイナボアーズに加入した、FB/WTB カートリー・アレンゼが本領発揮。敵陣15m付近でパスを受けたアレンゼは一気に加速。
浦安WTB安田昂平、FBイズラエル・フォラウをあっという間に振り切ると、SO田村熙のタックルも弾き飛ばしリーグワン初トライを決めてダイナボアーズが逆転に成功する。浦安・田村はこのプレーで脳震盪により退場。
65分、浦安はNO8ヤスパー・ヴィーセの突破から敵陣にブレイク。SH飯沼がボールを捌くと、オフサイドの位置にいたダイナボアーズの選手にボールが当たるも梶原レフェリーは「故意にボールを当てている」としてペナルティを取らずにそのままゲームが継続。
直後にエピネリ・ウルイバイティのタックルで、浦安が思わずノックオン。チャンスを活かすことができない。試合後の会見でレイドローHCはこの場面で流れが変わってしまったと振り返るが、浦安にとっては後半チャンスらしいチャンスがこの場面だっただけに悔やまれる流れとなった。
すると69分、浦安のディフェンスがボールに寄り、アウトサイドにスペースができたところをWTBボルドリッジがスピードで抜き去りトライ。貴重な追加点をダイナボアーズが加えた。
さらに73分、後半から出場したFLジャクソン・ヘモポが勝負を決めるトライ。31‐14と一気に突き放した。この時点で3トライ差以上となりこのまま勝利すればダイナボアーズがボーナスポイントを獲得出来る状況だったが、浦安も意地を見せる。
85分、フェイズを重ねてボールをキープしながら前進し続けて最後はCTBシェーン・ゲイツがトライを決めノーサイド。ダイナボアーズが31‐19で開幕戦白星発進となった。
元スコットランド代表、クレイグ・レイドローHCの初陣は、途中怪我の選手も出たり、自陣でのペナルティで相手の勢いを止めることができず初勝利は次節以降となった。
なおこの試合のPOMは、逆転トライを決めたカート=リー・アレンゼが選ばれた。
勝利したダイナボアーズは次節、ディフェンディングチャンピオンの東芝ブレイブルーパス東京に挑む。敗れた浦安は、静岡ブルーレヴズとの対戦となる。
三菱重工相模原ダイナボアーズ グレン・ディレーニーHC
前半と後半で全く違う40分だったと思います。前半はあまりポジションも良くなくて、ずっとディフェンスしている時間が多かった。いくつかのチャンスは相手も自分たちもスコアすることができていました。後半は、ボールをもって自分たちが何ができるのかということを見せることができた。終わり方として、最後相手にトライを許しておそらくボーナスポイント取れなかったので、そこは良い学びだと思います。
――後半流れがキーポイントは
一番はポゼッションだと思います。前半は相手も長い間ボールを持っていました。風上のときはキックを使ってエリアを取っていけば相手は逆に戻すことがないのでボールを持つ時間が少なくなるのですが、逆に後半は風下になって、ボールを持つ時間を長くして、相手のペナルティからモールで前にでて、外側にスペースを作ることができた。そこに、カート二ー(・アレンぜ)やボルトリッジにスペースを与えてスコアすることができた。そこはFWの努力によるものだと思っています。後半自分たちがボールを持つことができたので勢いを変えることができたと思います。
――風上の選択について
(キャプテンだけでなく)二人で判断しました。ここ3年いつも風が強い中スタジアムで試合をしているのですが、風上のときはいいプレーが多かったと思いますけど、初めて風のアドバンテージを使えなかったかなと思います。一つの原因としては、今日の試合ではデビューしたが4人もいたということ。新しいやり方のラグビーもちょっとまだ馴染んでいない部分もあったかな。
三菱重工相模原ダイナボアーズ 岩村昂太キャプテン
前半のところでいうと、ポジションが取れなかった。自分らのペナルティが多く、自分たちで首を締めてしまったところがあったと思います。そこは自分たちの意識で改善できるところだと思うので、今後しっかり改善していきたい。後半のようなラグビーができれば我々は本当にどこでも戦えるようなチームだと思いますので、自分たちのラグビーを信じてこれからも戦い続けたいなと思います。
――後半の流れを変えたポイントは
FWのモールだったり、ボールキャリー、フィジカルの部分で前に出たことが流れを掴めた要因だったかなと思います。
――前半風上を選択した?
はい。選択しました。(あの点差での折り返しは?)ちょっと想定外でした苦笑。
――初試合で初トライを決めたアレンぜ選手について
すごくシャイボーイんですけど、練習のとき小泉とよくコミュニケーションとって、いろんなアイデアを伝えているところもよく見ますし、ロッカーの中でも外国人選手だったりとか、日本人選手とコミュニケーションを取って、日本というか、チームに馴染もうとしているというのはすごく見えます。本当に素晴らしい結果を残した選手ですけど、その生き方というか、学ぶ姿勢は見せてもらえているのえ、僕らシニアのプレーヤーだったり、ヤングプレーヤーも含め、みんな学ぶところがあるなと思います。
(フィールド上では)見てもらった通り爆発的なスピードがもう素晴らしいですね。前半も倒れたあとも行こうとしたんですけど味方とぶつかってうまく行けなかったとかもあったんですけど、ただカートリーのスピードを活かすためにどうアタックしていくか、やってスペースを作っていくのか今後やっていきたい。
浦安D-Rocks クレイグ・レイドローHC
前半と後半でかなり展開が違った試合になってしまいました。前半は風下の中、よく戦った。後半、規律の乱れから自分たちで試合を崩してしまったところは課題だ。
――後半で試合の展開が変わってしまったのは今振り返るとどの部分?
規律の乱れから相手にエリアを与えてしまうという部分が一つと、あとはすごく流れが変わった局面としては、ラインブレイクのあと、オフサイドのポジションにいた選手に、飯沼キャプテンがパスしたボールがあたったにもかかわらず、それが流れてしまって、結局最終的にダイナボアーズにそこから脱出されたというところです。我々のチャンスがあったのに、うまくペナルティがもらえずにそこで試合の流れが変わってしまったように感じます。
――今日はFWを多めにリザーブにおいた意図
FWパックがダイナボアーズの一番の脅威だと思ったので、そこへの対策です。自分たちがプレシーズンからも練習してきた6人FWを入れるというのはやってきたベンチの構成だったので、ヴィセのようなインパクトある選手を入れることができる利点もあります。
その反面、今日は10番の選手が2名が怪我してしまったというアンラッキーな部分もありました。これからのシーズンでラグビーの神様がラッキーな部分を持ってきてくれることを祈っています。
浦安D-Rocks 飯沼蓮キャプテン
ヘッドコーチも言ったとおり、前半ファイトできて、後半少しリードされた時に、前のプレーを引きずってしまって、少しの接点で引いてしまったり、焦りからペナルティしてしまったりというところが響いてしまったかなと。次どんなことが起こっても、自分たちのやるところだけを集中してプレーできていれば、勝てた試合だったかなと思います。課題が見つかった試合になりました。
――セットプレーもよくて、焦る展開でもなかったけど、焦った要因として今考えられることは
やっぱり10番(田村)熙さんが脳震盪して、予想してなかった状態の展開になってしまったところが大きかったかなと個人的には思います。
――前半は風下の中でいいパフォーマンスでした。ハーフタイムではどんなレビューを
やることは変わらずに、自分たちはチャレンジャーなんで、チャレンジャーらしくひたむきに仕掛けていくことはもちろん、リードはしていましたけど、(後半は)風上なんでしっかりエリア取って、DFしていこうと言っていました。
――D1昇格後の初戦で感じた通用する部分は
セットプレーのところだったり、いつも通りアタックすれば、後半の最後もそうでしたけど取り切る力もありますし、自分たちのチームにはタレントも揃っているので、影響されないところ、常に80分間自分たちのペースでいつも通りにプレーすれば、通用するというのはわかったんで、本当にメンタルのところかなと。まだまだ試合は続くんで一戦一戦成長していきたい。