エディー・ジョーンズ日本代表HCによる若手選手育成プロジェクト「ジャパン・タレントスコッドプログラム」が25日、明治大学グラウンドで行われた。
参加したのは先日JAPANXVでオーバーエイジ枠として招集された、青木恵斗(帝京大)、佐藤健次(早稲田大学)、秋濱悠太(明治大学)、土永旭(京都産業大学)の4名をはじめ、髙木城治、石橋チューカ(京都産業大学)、福田大和(帝京大学)、矢崎由高(早稲田大学)など14選手。
終了後、エディー・ジョーンズHCが取材に応じ、このプロジェクトの意図と日本代表発表されるタイミングなどにも答えた。
「6月にもう1回やる予定。大学とはファイトするのではなく連携する重要性は理解している」
――今回の(JAPAN TALENT SQUAD)プログラム合宿の目的は
2027、2031年ワールドカップに向けて若いタレントを育成したい。いろんな大学を回って、コーチたちと話してU20日本代表を見て、すべての選手を集められたわけではないが、少ないメンバーでスタートした。その選手たちを成長させテストマッチを戦う準備をすることに集中する。
――今回のスコッドが日本代表へ招集される可能性があるのか?
確かに窓は開いている。彼らがそれをどうするかです。私たちは彼らにいくつかのアイデアを与えた。彼らがハードワークするか、いかに彼らがワールドクラスの選手になりたいかっていうところです。あとは彼ら次第です。
――ジョーンズHCの笑顔が印象的でした。
社会的にも今の若い選手っていうのは、彼らの強みをいかに引き出すかというようなやり方には変わってるんだと思います。20年前のコーチングはこれをやれって言ったらみんなやるのが昔のコーチングスタイルだったんですけど、今はどちらかというと、いくつかの選択肢を与えてあげて彼らにそれを選ばせる。彼ら自身にそれをやってもらうっていうのが今のコーチングスタイルだと思っています。
――今後はいつやる予定か
今回のようなキャンプは本当にスタートしたばっかりで、6月にもう一回やる予定です。 それ以降は、大学との交渉の中で決めていきますが、(選手が)集まらなくても大学と連携して選手はサポートしていこうと思います。特にS&C、 栄養とメンタルのところはサポートしていこうと思っています。
――今季、人数が増える予定は
今年はない。でも来年は多分(増える)。
――5月のトレーニングキャンプに呼ばれる選手はいるのか?
チャンスあります。
――若い選手を育成する意図は
どんなコーチングをするにしても、まずそのチームの平均年齢というのは、やっぱり最初に見ます。2023年以降チームをしっかりリバイタライズ、変化をさせる必要があるのは間違いなかったので、 選手のプロファイルをリーグワンの中で見ていくと、日本人選手は結構年齢が上にいる傾向が高かった。
若い選手はどこから手に入れるかとなったら大学になる。彼らが準備できていないのはみんなわかっています。でも彼らの準備をスタートさせないといけない。だから、今日は2027年ワールドカップの第一日目の準備でした。
――大学との連携が大事になっていく
少しずつ変化させていく。昔、日本でコーチをしていたが、その時から日本の大学と一緒に仕事することは大事だった。大学とファイトするのではなく、連携する重要性は理解している。だからこそ、今それをやっています。 もうすでにトップの大学の監督とは会っていますし、自分たちが何をしたいかっていうディスカッションもしました。それは引き続きやっていきます。
――今回の合宿で印象に残ったことは
一人の選手が自分はどうやって今年のイングランド戦でプレイできるかっていう質問をしてくれました。本当に素晴らしい質問だと思います。そういった態度を求めています。成功するためにハングリーな選手、世界のベストになりたいって選手です。ただただ日本でいい選手になりたいっていうことに現状満足しているような選手じゃなく、もっとハングリーな選手を欲しています。
――それは誰か?
(名前を)言うのはちょっと不公平なので、それは控えます。
――JAPAN XVのサモアの遠征を振り返ると
本当に4、5人の選手は、次の12ヶ月で、日本代表でプレイできるポテンシャルのある選手がいるということがわかったことが一つ。2つ目は大久保ヘッドコーチのコーチングっていうのがすごく良かった。 自分たちのプレイしたいジャパンのスタイルとすごく似たスタイルを大久保はコーチングしてくれた。速くてアグレッシブで、すごく勇気を持ってプレイしていました。 (しかも優勝したので) 本当に素晴らしかったですね。
――次の合宿までの課題を出した?
彼らには宿題を与えました。どれくらい宿題をやってくるかというところだと思います。 宿題をしなかったらまあ問題で、その時は自分の住まいがなくなるかもしれない。
――今後も継続的に大学を回る
はい、もうそれもこのプロジェクトの一部です。
――今回U20日本代表候補でも、JAPANXVのオーバーエージでいない選手は高校、大学のプレイを見て良かったから呼んだ
そうですね。大学での評価です。(唯一の大学一年生。福田君に関しては高校代表を見て)そうです。
――以前指導していたときと大学指導者の変化は?
あまり大きな変化はない。やっぱり一番感じるのは大学の監督もリーグワンも本当に日本代表の成功をすごくサポートしてくれているというのを改めて感じます。
――最近高校レベルでフィジカルをやるチームが増えてきたんですけど、そのあたりは感じることはありますか?
ラグビーゲームが全体的にフィジカルゲームになっていると思います。だからもう世界的なラグビーのトレンドを今みんなが追随しているっていう状態だと思います。
――今日一日で選手が変化、成長したと感じた部分があれば教えてください。
ワンセッションなのであんまりないですが、この2ヶ月の中だけでも選手の体の変化っていうのはすごく顕著に表れてます。今日とかもすごいびっくりさせられます。今日はさらに成長するための一日でした。
――FWを指導していたのは
ニール・ハットリーです。イングランド代表とオーストラリア代表の時に一緒に仕事をしています。一緒にコーチングスタッフの一人として入ります。素晴らしいスクラムコーチで、特に若い選手の強みをしっかり引き出すのが上手です。イングランドや南アフリカでも彼の経験値がすごく大事になります。
――このプログラムでは毎回、日本代表のコーチ陣が指導する?
必ずしもそうではない。バランスですね。例えば今日は麻田が指導した。自分たちとしてはU20代表チームの強いコネクションをキープしたいし、選手にもそのコネクションが見えるようにしたいです。
――話は変わって昨日、田中史朗選手が引退を表明しました
本当に日本ラグビーを変えてくれました。2015年のチームを思い返すと、2015年の頃のメディアの視点から見ても、リーチだったり、廣瀬がすごく注目されて、チームにとって大事って思われていましたね。確かに彼らは大事でした。でもフミが一番チームを変えるためにドライブしてくれた選手だと思っています。
ハイランダーズでプレーした経験もありました。自分が日本人であるっていうことに彼は強い誇りを持ち、チームの考え方を誰よりも一番変えてくれた選手だと思います。すごい今でも覚えているんですけど、新宿で一緒にランチしに行って、ただワールドカップでプレイするだけじゃないんだっていう話をしていた。
これは日本の未来のラグビーのための大会なんだって。彼は本当にそれを体現して、感情を周りに伝播させた。 だからみんな周りの人たちは彼のことをすごい良く言う。たまにケンカもしました(苦笑)。 いいファイトでしたね。
――髙木選手に田中史朗みたいになれって言ったそうですが
メンタリティが主です。フミはいいタックラーです。 素晴らしいディフェンダーとして、みんなを前に出すという態度を身につけていた。 超速ラグビーの話をすると、自分たちの一番大事なところは、(攻守に渡って前に出て)相手に常にたたみかける、それをチーム全体のスピードで相手に畳みかける。フミが素晴らしかったのは本当にそのエリアです。
――日本代表はもうすぐ発表される?
菅平(のトレーニングキャンプ)は4チーム(たぶん5チーム)だけ、多分。ちょっと大学生(が入る)。
――田中選手がジャパンのヘッドコーチになりたいって言っていましたけど。
どうぞ(笑)。彼自身のやり方を見つけないといけないかなと思います。 ラグビー理解は本当に素晴らしいので、素晴らしいコーチになれない理由も、 次の代表監督になれない理由もないと思います。
――エディさんに学びたいって言っていました
キャンプに来ればいい。ただバーだけはちょっと鍵かけておきます(笑)。
――永友洋司チームディレクターの役割は
彼はチームディレクターに自分の役割とは別のところで、代表チームの周りには、リーグワンチームがあって、彼にはそのリーグワンとのコミュニケーションをやってもらいます。自分たちはどんなことをしているかを伝える。彼はすごくはっきりとした役割があります。
――廣瀬俊朗さんの役割は
洋司のサポートです。どちらかというと彼はもっとチーム内のことをやってもらう。今週金曜日、改めて彼の役割をはっきりさせるんですけど、どちらかというとリーダー陣の方と一緒にコネクトした仕事をしてもらう。それと若い選手とつなげてもらって仕事をしてもらいたいと思っています。少しメンターみたいな形になりそうですね。