女子ラグビーワールドカップ2025・イングランド大会に参加している日本代表(サクラフィフティーン)は2日、メディアセッションを実施。HO谷口琴美、CTB小林花奈子、谷口令子アシスタントS&Cコーチの3人がメディアに対応した。
HO谷口琴美(横河武蔵野アルテミ・スターズ)
――ニュージーランド戦を終えて、現在のチームと自身の状況を。
「このチームはベスト8を目標にやってきたので、そこへ行けないのは率直に言って悔しい。ただ、NZ戦は、1戦目のアイルランド戦から立て直してやるぞという意志を見せることができたという意味では良い試合ができたと思う。最終戦は絶対に勝って日本に帰るという気持ちです。スペインはアイルランドに食い下がって勢いに乗っているけれど、上回って勝って帰りたい」

――NZには3年前、前回ワールドカップ前のウォームアップ試合では12-95で大敗しました。そこからの成長を感じることはできましたか。
「3年前の試合では、私自身は何もできずに終わって『疲れもしなかった』というのが正直な感想なんです。でも今回はコンタクト周りではダブルタックルが強化されていて、NZがやりたいオフロードをできないくらい守れたと感じています。その勢いを止めたことで、私たちのやりたいディフェンスはできたと思う。FWとしては、スクラムのマイボールは全部出せたし、ラインアウトモールも通用したという手応えはありました」
――ワールドカップを戦っているという実感は。
「ここまで2試合して2敗してしまったのですが、まずものすごい人数の方がスタジアムに入ってくださって、日本だけではないですが、良いプレーがあるとすごく盛り上がってくれる。試合の後、スタンドへあいさつに行ったときもみんな立ち上がって拍手してくれる。女子のラグビーでこんなに盛り上がるなんて良い国だねとみんなで話しています」

――NZ戦は勝つつもりで臨んで、手応えのある試合ができたけれどスコア的には大敗でした。戦った実感としてNZの強さはどのように感じましたか。
「自信はありました。この3年間で積み上げたものに自信は持っていたし、やってきたことをぶつけてやろうという気持ちでした。実際に前回よりもラックやFW戦で相手を止められたという実感はありました。ただ、相手を止めて密集に寄ってしまった間に外にできたスペースを攻められたり、ラック周りのスペースを攻められたり、空いているところへ速やかにボールを運べるのがNZの強さなんだなと思いました。
ただ、日本は1対1で止めるのは難しいので、やはり2人がかりで止めて、2人ともすぐに立ち上がって次のディフェンスに備えられるようハードワークをするしかない。DFでは2人で肩4つを使ってタックルする、そのハードワークを続けて、FWとBKのコネクションを持ち続けて、組織DFで戦うしかないと個人的には思います」
CTB小林花奈子(横河武蔵野アルテミ・スターズ)

小林花奈子
「ターゲットにしていたベスト8に行けなかったのは残念ですが、ニュージーランド戦では、アイルランド戦の後、合言葉にしていた『先に殴れ』を実現できたのは良かった。最後のスペイン戦ではジャパンらしいラグビーを見せたいです」
――試合会場となったサンデーパークは、エクセター・チーフスでプレーしていた小林選手にとっては地元でしたね。
「本当に、ラグビーをやってきてこんなに嬉しい経験は、もうないだろうなあと感じています。私自身、ターゲットにしてきたワールドカップで初めて試合に出られた、それもサンデーパークでプレーできたこと。お客さんがみんな、私のことを知っていて『あのグリーンのキャップを見て!!チーフスにいたカナコだよね』という声も聞こえたり、ホームのような感覚でプレーできました。感動しました。お世話になった日本人家族の方もきてくれてたし、当日挨拶できなかった方からも『頑張ってたね、良い試合をしたね』とDMをたくさんいただいた。懐かしい方とたくさん会えて幸せでした」

――NZについて、特に速さについてはどんな印象でしたか?
「速さはちょうど想像していたくらいでした。私はNZと試合をするのは初めてで『NZのラグビーはヨーロッパとは全然違う。想像できないくらい速いよ』と聞かされていたのですが、想像していた通りの速さでした。実際、BKのディフェンスでも外を抜かれてしまった。そこは修正しないといけない。
NZは個々に強い選手が揃っていて、その全員が足が速くてスキルも高い。全員をキーマンとしてケアしなきゃいけないのはヨーロッパとの違いだと思いました。この相手に勝つためにはしっかりと前を見て、スペースにボールを運ばれないようにコミュニケーションのディテールを確認して、1対1のシチュエーションを作らないように修正していきたいです」
谷口令子 アシスタントS&Cコーチ
――2戦を戦い終えて、S&Cチームで把握している、日本の進歩を示すデータは何かありますか。
「ワールドカップの試合ではデータよりも内容、自分たちがやってきたことを試合の中で出せているか、内容重視で見ています。アイルランド戦、NZ戦については選手からもレビューをもらいましたが、アイルランド戦は相手が体が強くて、選手はかなり疲弊していた。でもNZ戦はアイルランド戦ほど体の疲労はなかった。NZはスキルが高くて、BKのスピードでやられたという面もありますが、去年からWXVの試合を重ねてきて、選手は体がかなり強くなっていることも感じています。NZ大会では1試合やるたびに選手たちは疲弊していたけれど、今回はリカバリーができている。最後の試合ではもっと良いラグビーをして終えられると思う」

――試合と試合のインターバルの過ごし方には何か工夫があるのでしょうか?
「今回は試合のたびに長距離の移動があったので、移動による疲労を蓄積させないようにスケジュールの時間を工夫しました。練習の強度やボリュームを減らしたりするのではなく、たとえば長距離移動した翌朝は、各自がゆったりできるよう集合時間を遅らせて睡眠時間を多く取らせるなど、時間の配分を調整しています。あとは栄養・水分補給をしっかり促すことですね。特に大きな変化はつけていないと思います」